秋は過ぎて、もう冬がひたひたと近づいています。

落葉あびて 山くだりゆく 猫に逢ふ (加藤楸邨)

茶の花の包みきれざる 黄を零す (山田佳乃)

木がらしや 目刺しにのこる 海の色 (芥川龍之介)

楸邨の句は、わかりやすく、だからといって浅くはない。
まさに秋の1ページを切り取ったような写実がそこにある。

山田佳乃(よしの)は俳人山田弘子(ホトトギス同人)の娘さんだ。
茶の花は椿の仲間なのだが、花弁が小さく、全体に可愛らしい花なのに、黄色い雄蕊(おしべ)が一人前に力強く飛び出して、今にも零(こぼ)れそうだ。
花弁が「包みきれざる」と表現したところが新しい。

芥川は俳人としても活躍していたので、たくさんの句が遺されているが、この「目刺し」の句はその中でも代表作と言われている。
もう冬が間近なんだよね。
冬の鈍色(にびいろ)の海が思われます。