植物学の課題でジシバリ(イワニガナ)とオニタビラコの違いを述べよという問題を出されたことがあった。
※高校の科学部で博物学を勉強したことがあった。

私は図鑑少女だったから、これらがいずれもキク科の野草で、黄色いタンポポに似た花を春から夏に咲かせるということは知っていたが「違い」と問われると答えに窮した。
ジシバリは漢字で書くと「地縛り」であり、地面を覆うようにはびこって花を咲かせることに由来する。
※ジシバリの正式な和名はイワニガナである。

私は、フィールドに出てその違いを調べてみたことがあった。
野帳と筆記具、胴乱(どうらん)、野冊(やさつ)を持って高安の裏山を探した。
大池(農業用ため池)の土手まで足を延ばした。
フィールドノート(野帳)

オニタビラコは簡単に見つけられた。
土手の法面(のりめん)の日当たりに良い場所にそれは群生しており、確かに黄色い花ではあるが、タンポポを小さくしたような花で、タンポポのようにステム(花茎)が伸びて花を一つつける「ガーベラ」のようではなく、一本の茎に数個の花が咲く「房状花」であった。

日当たりの良い空き地でやっと見つけたジシバリは、これはもっとタンポポに近い花であった。
タンポポが舌状花の集合が密で、種になったときに球状になるが、ジシバリは舌状花が一重に皿状に広がるだけである。
一見して、ジシバリが「一重」、タンポポが「八重」に見える。
キク科の花はすべて舌状花の集合であるのが特徴である。

すると舌状花の咲き方を見る限り、ジシバリとオニタビラコは似ている。
花が大きいか小さいかだけの違いで、あとはステムの先に一つの集合花が咲くか、房状に分枝して集合花が咲くかの違いである。

次に葉だが、両方とも越冬期にはロゼットを形成するが、オニタビラコは開花期にもロゼットはそのままでロゼットの中央から花茎が伸びる。
※ロゼットは冬季に太陽光を最大限に浴びるために、互いに葉が重ならないように放射状に葉を広げること。よく人に踏まれたり、家畜に食い荒らされる植物に観察される形態でもある。

ジシバリはよく観察すると、これもロゼットの中から花茎が伸びるが、その花茎が分枝してその先に舌状花の集合花を一つつけている。
また、茎が四方に伸びて這うように葉をつけ、花茎もその先に作られて花をつけている。
ジシバリはイチゴのようにランナーを伸ばして増えるのだろうか?
株を抜いてみると、どうやら地下茎でつながっているように見える。

こんな記述もあった…
「変成岩…火成岩や深成岩、堆積岩とは違う」
と一行だけ書いてある。
たぶん、フィールドサーベイに行った時の、先生から教わったことなのだろう。
片麻岩や大理石などが「変成岩」に分類されると記憶しているが、とにかく「変成岩」は地殻作用によって「変性」してしまった岩石なのだ。
だいたいは熱や圧力によって結晶化が進み、密度も高い。
たとえば、石灰石はそのままではカルスト地形や鍾乳石に見られるように脆(もろ)いものである。
ところがマグマによる熱変性によって硬い大理石になるのである。
大理石は建築や彫刻にも用いられる美しい石だ。

片麻岩(へんまがん)は「変成岩」の一種で、分類の複雑な岩石であると、先生が話してくださったと思う。
つまり岩石成分ではなく、受けた変成作用によって分類するのだと。
片麻岩と言ってもいろいろあって、結晶片岩(へんがん)が高温にさらされた場合に片麻作用によって片麻岩になっていくそうだ。
薄くスライスして偏光顕微鏡で結晶構造を観察すると、雲母や長石、石英が片麻岩に含まれることがわかる。
偏光顕微鏡は特殊な光学顕微鏡で、鉱物学では必須のアイテムである。
私はオルソスコープ観察しかしたことがないが、開放ニコルで偏光子を用いて観察する方法である。
そして直交ニコルにして暗視野でも観察する。
直交ニコルは偏光子と検光子を併せて使う観察法である。

わたしの野帳(フィールドノート)には、そのころの思い出が詰まっている。