七夕のころ、日本ではまだ梅雨のただ中であり、牽牛と織女の出会いを天の川に見ることは叶わない。
今年もそうだった。
昨日の七日の夜は、雨こそ降らなかったものの、どんよりと厚い雲に覆われていて、まったく星など望めなかった。

今日は、斎藤公明に借りた本を返しに慈光寺に向かった。
「きみちゃぁん!」
本堂の濡れ縁でいつものように呼ばわったが、返事がなかった。
「いるって、言うてたがなぁ」ぼくは、独り言を言いながら、墓地へ続く小径を回って、庫裏(くり)のほうに向かった。
庫裏と公明の住まいはつながっていて、間に風呂場があった。
風呂場のそばを通るときに、ひそひそとその中から人の声が聞こえてきた。
良子と公明の声であることはすぐにわかった。
ぼくはそっと壁伝いに風呂場の焚口(今はガス釜が取り付けてある)のほうに頭をつけて聞き取った。
「ねえちゃん…」「きみあき、すごいね」
二人は風呂場で何をやっているのだろうか?
ぼくには、それが、普通の姉弟の会話とは思えなかった。
何やら秘められた、おぞましいことが行われているような直感があった。
「そこに寝てごらん」「ああ」「見える?」「うん」などと言っている。
ああ、何をふたりはやっているのだろう?
ぼくは、無性に見たかった。
もうちょっと伸びれば、少し開いた窓から覗けるのである。
ガス釜を囲うようにコンクリートブロックがセメントで固定されていた。
ぼくはそこに上って高さを稼ぐことにした。
見ると…
二人は素っ裸で、姉の良子がこちらに背を向けて、公明の上にまたがっているのだった。
ぼくはのどがカラカラになって、血走った眼をして覗いていただろう。
一瞬にしてぼくのペニスは硬化してしまい、窮屈なズボンの中で張り切っていた。
大きな乳が良子の背中のわきからもこぼれている。
「ああん、きみあきぃ、いいわぁ」
「ねえちゃん、中に出してしまう」
「まだ、だめ、だめよ」
姉が弟を包むようにしてかぶさっている。
すると、尻が持ち上がって、公明の勃起が姉に突き刺さっているのが丸見えになった。
あんなに、なってる…姉と弟がセックスしている…あの公明が、先に経験している…
ぼくは、頭が混乱して、めまいがしてきた。
血圧が異常に高くなっていたのかもしれない。
「ねえちゃん、のいてっ!」
公明が下から姉を押しのけるようにし、公明の真っ赤に勃起しているものが姉から抜けて、その後、びゅっと白い塊が彼の尿道から飛び出したのである。
そして…ぼくもパンツの中で漏らしてしまった。
膝の力が抜けて、「ああっ」と声を上げてぼくは露地に尻もちをついてしまったから、見つかってしまった。
「浩二!」
公明の声が風呂の窓から聞こえ、窓から彼の顏が覗いた。
「見てたんか!」怒気を含んだ公明の声がぼくに降り注いだ。
奥から良子さんが、
「公明、浩二君を連れておいで」と命じている。
ぼくはどうしたらいいんだろう?
このまま逃げるにしても、覗いていたことは消えない。
そうこうしているうちに、パンツ一丁の公明が雪駄(せった)をつっかけて、ぼくのところに回ってきた。
「来い」
いつになく、厳しい口調で、公明がぼくの腕をつかんだ。
公明がこんな顔をしたのを、ぼくは初めて見た。
ぼくは、引っ張られるようにして、公明の後ろについていった。
風呂場の前で、バスタオルをまとった良子が作った笑顔でぼくを見る。
「浩二君、のぞき見してたでしょ?何を見た?」
「あ、その、ふたりが」
「ふたりが?」
「せ、セックスしてるとこ…」
「ふぅん、知ってるんだ…どうしよっかなぁ。よそで言われると困るしねぇ、公明」
「ああ。そうだ、浩ちゃんも姉ちゃんとすればいい」
ぼくは、絶句して公明を見上げた。
「共犯者にしてしまえば、浩ちゃんもしゃべったりしないだろ?」
「そうね、それがいい。あたしも浩二君の、見てみたいわ」
「脱げよ」
ぼくは、思いがけない展開にとまどったが、逃げられない雰囲気だった。

「公明は、いつからあんなこと」
「去年からかな、姉ちゃんが誘ってきたんだ」
ぼくは服を脱ぎながら、
「あんなこと、姉弟(きょうだい)でいけないんじゃないか?」
「外に出せば、問題ないさ」
「そうかなぁ…あ、ぼく、さっきのぞいた時に、中に出しちゃって、ほら」
ぼくは、汚れた下着を見せた。
「うわ、ほんとだ。姉ちゃん、浩二、出ちゃったって」
「あらま。いいわ、洗っといで、若いんだからすぐ回復するわよ」
浴槽には湯がすでに張られ、湯気が立っていた。
ぼくは、手桶で下半身を洗い、体も濡らした。
「風呂に浸かっていいぞ」「ああ、ありがと」
姉と弟がそのあとに入ってくる。
その時、ぼくは良子さんの、見たかった裸体を存分に見ることができた。
また、公明の剥けあがった赤黒い太いペニスを見て、自分と比べた。
自分がまだ「皮冠り」であることを恥じた。
「こうちゃん、見せてよ」と良子さんが言う。
ぼくはしぶしぶ湯船から立ち上がった。
「あら、かわいいわね。でも立派よ。皮、剥ける?」「うん」
そう言って、ぼくは皮を指で後退させ、亀頭をあらわにした。
「きれいねぇ。こうちゃんのおちんぽ。ほら」
良子さんが手を伸ばしてにぎってくる。
「硬いわぁ」ぼくは、再び勃起していた。
公明のそれも、天を突くように立ち上がっている。
長さは、ぼくとあまり変わらないようだが、亀頭が大きかった。
「こうちゃんもそこに寝てごらん」
「はい」
「おれ、ひとのを見るのは初めてだ。興奮するね」
普段そんなことを言わない公明なのに、いまは、すごくいやらしい目つきで自分の勃起をさすっている。
「入れるよ、こうちゃん」
良子さんは大きな体を揺らせて、ぼくをまたぎ、腰を落としてきた。
その毛深い割れ目にぼくの先端が触れる。
良子さんが唇のようなその部分で亀頭を撫でる。
くちゅ…
自分で手を添えて、良子さんがぼくを押し込んだ。
熱く、ぬめる中にぼくは取り込まれたのである。
初めての経験…
「硬いわぁ、こうちゃんの」
そう言って、お尻を押し付けるようにする。
「どうだい?初めてのセックスは?」公明が風呂桶の縁に腰かけて尋ねる。
「き、きもちいい」
「だろ?姉ちゃんの、すっごく気持ちいいだろ?」
良子さんの息が荒くなり、ぐいぐいと腰をこすってくる。目の前に巨大なおっぱいが揺れている。
その磁器のような肌に青い血管が薄く透けて見える。
乳首はあまり大きくなく、乳輪が大きかった。
「しゃぶっていいのよ」
良子さんが、おっぱいをしゃぶれと促すのだった。
ぼくは遠慮なくかぶりついた。
はむ…
とても口には入りきらないが、乳輪の部分を赤子のようにむさぼった。
その間も、良子さんは腰を浮かせてぼくをしごく。
太っているから、体重をぼくにかけないように、うんこ座りの要領で腰を上下したのだった。
公明はというと、そばで、一心に、手を振って分身をしごいている。
「良子さん、ぼく、そろそろやばいです」
「出そう?じゃあ、お口でしてあげる」
そう言うと、良子さんは離れて、ぼくを立たせた。
「フェラで飲んでもらえ」と公明。
フェラとは何かぼくには不明だった。
良子さんは、ぼくのぬらぬらと光って愛液まみれのペニスを口に含んで、目くるめく刺激を与えてきたのである。
じゅぼ、じゅぼ、じゅぼ…
この初めての感覚はぼくを完全に腰砕けにしてしまった。
亀頭が吸われ、舌で絞られ、ほほ肉の裏側で絞られる。
「あの、あの、だめですぅ」
言っても無駄だった。ぼくは、二度目の射精を良子さんの口の中に放ったのである。
ぼくは良子さんの肩に両手を置いて、ペニスはまだ彼女の口内に残したまま、脱力していった。
む…良子さんの口から小さくなりかけのぼくの分身が吐き出され、彼女は掌に精液を吐いて見せてくれた。
すると、横で公明が吼えるような声を上げて自分も精液を飛ばしてきた。
それは良子さんの胸元に飛んで流れを作っている。
「二人とも、立派よ。あたし、感動しちゃった」
「これで、共犯だからな」
口外するなという公明の念押しだったが、それは杞憂だった。
その後も、ぼくらが良子さんと秘めたる遊びに夢中になったのは言うまでもなかった。

良子さんには、結婚を決めた人がいたらしいのだが、意味も分からず袖にされたそうだ。
体だけが目的だった彼氏は、良子さんに飽きて、出奔してしまったのだそうだ。
たしかに、良子さんは地味で、太っていて、流行りのアイドルとかとは無縁の女性だった。
でも、男にやさしいし、尽くすタイプで、ぼくは良子さんをお嫁にもらいたいぐらいだった。
もしそうなったら、公明は許してくれるだろうか?

良子さんはかつてあった南天の星座「アルゴ座」のような気がした。
『フラムスティード天球図譜』にはちゃんと載っている。
アルゴ座はアルゴ号という神話上の巨大な船で、星座の中では大きすぎるのでフランスの天文学者ラカイユがアルゴ号の「とも」「ほ」「りゅうこつ」の三つの部分に名前を付けて、一つのアルゴ座としていた。それを1922年に国際天文学連合が「アルゴ座」を「とも座」「ほ座」「りゅうこつ座」に解体して現在に至っているのだった。いずれも日本からは一部しか見えない南半球の星座であるのだが、ぼくが「りゅうこつ座」で良子さんが「ほ座」になって、二人で「アルゴ座」をつくって騎乗位でたのしむのだった。

(おしまい)