新型コロナの影響で、お家時間が増えて、親子の時間も増えたそうで、そうすると「知育玩具」なるものを子供に与え、幼児の英才教育にハマる親御さんが増えているらしい。
知育玩具の売上も昨年の倍増だという。
だいたいは、つくる系のパズルみたいなもののようだ。中には、食べられるお菓子でつくる箱庭やハンバーガーショップのおままごと(ほんとうにお肉のハンバーガーを作る)が人気らしい。

私には子がないので、そういう知育玩具を手に取ることもないが、私の子供の頃をふり返ると、親はそういうことに無関心だったのか、時代が時代だったので知育玩具なんていうシャレたものがなかったというのが正直なところだったかもしれない。
それでも通っていた幼稚園では「組み木」なる玩具を個人でも持たされていたし、教室にはその数倍の大きな「組み木」があった。
大学の化学系で使う「分子模型」みたいなもので、木の立方体の各面の中央に穴が穿ってあって、そこにしっくりとハマり合う直径のプラスチック製のパイプを差し込んで、いろいろな造形をするわけだ。
私は大学に入って、分子模型で「シクロペンタノパーヒドロフェナントレン」骨格を不器用に組みながら、あの頃を思い出して苦笑していたな。
大きい物なら、DNA模型だって作れると書いてあるのだが、私は根気がなく「もうええわい」と投げ出すお嬢さんだった。
数学では幾何学のお成績の良くなかった女学生だったんで、正多面体というものが美しいと思いながらも、あまり掘り下げて考えたことがなかった。
すると化学の世界でも正多面体は追いかけてくるのだった。
まずは正四面体である。メタンの分子模型がそうで、あの分子は正四面体の各頂点をつなげばいい。大事なのは中心角が109.5°であることだった(天文学者マラルディの角度という)。

そう言えば、私が幼少期に自分で知育玩具として遊んでいたものがあった。
父の「マージャン牌セット」である。
あれで「仲間外れゲーム」だの「どこまで積めるかゲーム」だのやってたなぁ。
母親は最初は「子供がそんなんで遊んだらあかん」と言いながらも、お片付けの練習にもなるので(箱にちゃんと納めないといけない)、許してもらっていた。
かなり熱中してやっていたようだ。
マージャン牌はおもしろい。「万」が「萬」であるとか「伍」が「五」と同じだとか覚えちゃったよ。
「いー、ある(りゃん)、さん、すー、うー、りゅー、ちー、ぱー、ちゅー、しー」
これを五歳で言えたのは「英才」と言えるだろうか?
なぜか大学時代に役に立った。先輩に雀荘に連れて行かれてね。

大阪の子だけかもしれないが、お好み焼きやたこ焼きを作ることが、遊びの一環だった。
親が働きに出ている家が多かった門真市では、かぎっ子が多かった。
何人かで男の子の家に呼ばれて遊んでいると、
「おい、オカンもおれへんから、お好み(焼き)を作らへんけ?」とその家の子が言うわけ。
「やろうで」
「なおぼん、ソース作ってえや」「おれ、卵と粉とキャベツ持ってくるわ」
などとワイワイやりはじめるわけ。慣れたもんよ。
勝手に人んちの冷蔵庫を開けて、ソースとケチャップ(お好みソースなんて気の利いたものはない)を出してくる。
ボウルだの、菜箸だの、包丁もいっさいがっさい出してきて、狭い台所は戦場だ。
鉄板をガスコンロに乱暴に置いて、マッチでガスをつける。
豚肉があれば、使うけど、あっても勝手に使ったらここのおばちゃんに怒られるでしょう。
だからただのキャベツ焼きになってしまうことが多かった。
「天かすあるやんけ」「ほんまけ?」「入れようで」「青のりってないの?」「味付け海苔をもんで掛けとけ」「かっつぉ節は?」「缶の中」
これこそ「知育教育」だと思う。
みんなの知恵がひとつの目標に向かって収束していくすばらしさ。
十歳くらいの子供らが、ちゃんとやるのよ。
親がやっているのを見て覚えているんだね。
この「知育教育」の大事なところ、つまり、今の「知育教育」と決定的に違うところは「親の目を盗む」というところなんだ。
だから後片付けが大事なんだよ。
何もなかったかのように、元通りにしなくてはいけないからよ。

こういうのもあった。
門真は松下電工(現パナソニック)のおひざ元で、奥さん方の中には、内職ではんだ付けをしている人が多かった。
あたしの母もやっていた。
だからお母さんたちは、はんだ付けがとても上手なんだね。
あたしも見よう見まねではんだごての使い方を盗み見ていた。
はんだ付けはできないけれど、捨ててあったラジオやテレビの基盤を引っぺがしてきて、その部品、コンデンサや抵抗器などをはんだごてで外しにかかる。
そうやって部品を集めて、戦利品を眺めるのが好きな子だった。
同居の叔父がアマチュア無線をやっていたことも関係していただろう。
私は、そうやって自分で「知育」していたのかもしれない。
親はただ何も言わずに、見守っていてくれただけだった。
「また、あほなことを。火傷しなや」と言いながら。

私のおすすめ知育玩具はこれです。大人もハマると思います。
紙飛行機二宮
紙飛行機キット
二宮康明博士の紙飛行機です。競技会もあるので、大人も夢中になるでしょう。
私も最近、アマゾンで見つけて楽しんでいます。

そうして出来上がった大人が私だ。
どうやら失敗作らしい。
六十を前にして、このざまだ。
世の親御さんたち、がんばって知育をしても、お子さん次第ですわ。