若狭湾は京都府と福井県に属する海岸線であり、リアス式海岸に分類されます。
リアス式海岸は太平洋側では三陸海岸や志摩半島などが有名ですが、日本海側ではなぜか若狭湾ぐらいしかないんです。

リアス式海岸は、別名「沈降地形」とか「溺れ谷」などとも呼ばれます。「沈降地形」とはその成り立ちから地学者が名付けたものであり、「溺れ谷」とは、もともと谷筋だった地形に海水が侵入してきて文字通り「谷が溺れた」ようになったから、地元漁師などが言い伝えてきた言葉です。

リアス式海岸になるためには、突然の「海進」がなければ、あのような複雑に入りくんだ海岸にならないと思います。
つい最近まで川が谷を削り、扇状地や沖積平野を形作っていたところに、海進が起こって海面が上昇したからできた地形だと思われるからです。
海進で代表的なものが「縄文海進」です。
日本の先史時代、縄文時代の半ばに起こったとされる地球温暖化による陸氷の融解が起こした海水面の上昇だと言われ、ほぼこんにちの日本列島の海岸線を形成した時代であります。

また福井嶺南地方は地震も頻発している地域で、地殻変動による隆起や陥没も考えられます。こういった地形の若狭湾に原子力発電所が多数建設されていることは、憂慮すべきだと思います。
※さらに北朝鮮に「急所」を曝していることにもなっています。日本政府の危機意識のなさのあらわれかしらん?

リアス式海岸の基礎知識を踏まえたうえで、舞鶴湾と三方五湖を考察してみましょう。
京都府の舞鶴湾は、大きく西舞鶴と東舞鶴に逆Y字に別れた入り江になっています。
外海からかなり奥深い天然の良港となっており、古くから港町として、近くは軍港として栄えました。
いまも東舞鶴港には海上自衛隊の基地があります。

舞鶴湾は入り口が狭いので、外から内部がわかりにくいことから軍港として最適とされ、太平洋戦争までは帝国海軍の舞鶴鎮守府として役割を担っていました。
こんにちのように衛星で偵察することができなかった時代には、舞鶴湾は格好の隠れ家的な軍港になっていたのです。

東舞鶴湾には与保呂川と祖母谷川、志楽川の二級水系が注ぎ、西舞鶴湾には伊佐津川、高野川、福井川の二級水系が注ぎます。
つまり舞鶴湾の東西の「溺れ谷」はこういった川が作った沖積平野が海進でできたものと考えられます。
尾根が残って、東側の博奕(ばくち)岬と西側の金ケ岬として舞鶴湾の口を守っているのです。

舞鶴湾は水深が20メートル程度であり、その深さも一定のようです。

次に、三方五湖を見てみましょう。
福井県の有数の景勝地であり、この五つの湖はそれぞれ性質が異なるのです。
日向(ひるが)湖が海水で、久々子(くぐし)湖、菅(すが)湖、水月(すいげつ)湖が汽水、三方(みかた)湖が淡水だとされています。
現在では人工的な工事によるものも含めて五つの湖はつながってしまっています。
地図を見ると、菅、水月、三方の三湖はつながっているように見えます。
日向湖は日向の在所で切れて海とつながっていて、そこには橋が架かっています。
久々子湖も早瀬の漁村で運河が切られ海とつながっています。
最奥地の三方湖が「淡水」とされるのは、海から遠いからだと考えられます。
三方湖に注ぐ鰣(はす)川が主たる川でこの淡水によって塩分濃度が三方五湖の中で一番薄いのだろうと考えられるのです。

三方五湖の成り立ちを伝える生き物がいます。
「鰣(はす)」という魚です。
「鰣川」の名前の由来にもなっている「ハス」ですが、この魚は中国大陸から朝鮮半島に生息する「コウライハス」と同種ではないかと考えられています。
その「ハス」が三方五湖に陸封されていままで生きているのです。
一つの推定として、縄文海進の反対の「海水準低下」、つまり海水面の下降があったことを理由とします。
氷期に地球が冷え、極付近で大量の陸氷ができ、海水面を下げたのでしょう。
そうすると、日本列島は大陸と陸続きであったと考えられます。
だから、大陸の生物である「コウライハス」が日本にも分布しており、そのうち、地球が温暖化し、間氷期を迎えると海進が起こり、日本列島と大陸の間に海が割り込んで、現在の形になると、「コウライハス」は置いてけぼりを食って、ずっと日本のこの地方に封じられてきたのだと考えられませんかね?
もっと面白いことに、「ハス」は滋賀県の琵琶湖にも生息しているんです。
琵琶湖が世界有数の古い湖であることは地学者の間でも常識になっていますから、ますます日本列島が中国大陸と陸続きであった時代を彷彿させますよね。
琵琶湖と三方五湖は近いです。
水系がつながっていたころがあったのでしょう。
久々子湖などはそのころ入江であり、砂浜や砂丘もあったようです。
砂丘のなごりは飯切山から東に続く久々子浜の砂浜が証拠です。
砂嘴(さし)がつながって、久々子湾は久々子湖になってしまったのです。

三方五湖も舞鶴湾も沈降地形が織りなす、風光明媚な地形であり、自然遺産なんですね。

※参考文献:「地図のみかたー地形図を中心にー」横山卓雄(保育社カラーブックス431)