お好み焼きには主に「大阪・関西風」と「広島風」そして「関東・もんじゃ風」があると私は認識している。
※韓国の「チヂミ」や、京都の「一銭洋食」を仲間に入れてもいい。

私がいちばん経験している「大阪・関西風お好み焼き」でも、お店によってやり方がずいぶん違うことに気づかされる。
いったい何が正しく、何が誤っているのか、どれもそこそこおいしいのでさっぱりわからなくなってしまう。
店のこだわりが甚だしいのも「お好み焼き」の特徴といえるかもしれない。
「お好み」に焼けばいいのだから、当たり前なのだった。

こういった「よくわからない」ものをなんとか客観的に、経験則でも理論化する方法が「実験計画法」だ。
関西風お好み焼きの「因子」を挙げてみる。
・粉もんである以上、小麦粉と山芋と水(だし)の量→指標は溶いたときの粘度(粘性)
・添加物因子→山芋、天かす
・キャベツ因子→刻み方、添加量
・刻みネギ因子→添加量
・プレミックス因子→卵、かき混ぜ方
・役物(肉、魚介、焼きそばなど)因子→焼き方
・焼き方因子→鉄板温度、油、返し、押さえの有無
・トッピング因子→ソース、マヨ、青のり、鰹節

これらの因子を少しずつ変えて実験計画を立てて、最適化を目指すのだが…

よく議論の的になる「押さえの要否」である。
たいていのプロは「押さえてはいけない」というが、一部のプロに「押さえる」派がいることも事実である。
焼いている途中でコテで押さえるとふっくら感が台無しになるというのが「押さえてはいけない」派の意見であった。
「押さえる」派は「昔からそうしている」というのが主な答えだった。
客から言わせてもらうと、「どっちもおいしいし、はっきり言って違いがわからない」である。
よく焼きを観察すると「押さえる」派でも焼き始めの早い段階では押さえていない。触らず放置している。
押さえるのは、いよいよ仕上がりというときにコテで一瞬、ぎゅっと押すだけだ。
このときには、お好み焼きの内部構造はしっかりと仕上がっており、少々の押さえで「団子」になることはない。
生焼けの段階でコテで押すと、刻みキャベツでできている空間が潰され、粉層が集まってしまい「団子」になってふんわり感を損なうらしい。
押してもいいが、押す時期が問題なのだということらしい。
また、押さないで済むならそれに越したことは無いということもわかる。
プロはちゃんとわかってやっているのである。

粉液の添加物として、大阪の人は昔から山芋(長芋)をすり下ろしたねばねばをほんの少し入れてきた。
ほんの少しでよく、粉液の粘性が劇的に変化するので、入れすぎるとボテボテになって大変なことになる。
で、何が仕上がりに影響するのかというと、ずばり「ふっくら」と仕上がるのである。
山芋を入れないと、粘性が緩く、刻みキャベツと混ぜて鉄板に敷いたときに、しばらくすると鉄板側にみな落ちて、粉層ができてしまうから、均質感がそこなわれるのだ。
山芋で粘性を持たせ、焼きあがるまでに層分離を起こさせずにふっくらとした内部構造を作らせるのである。

キャベツと卵はお好み焼きにおいて、大切な構造を作り上げる因子だ。
キャベツは細かく刻んでやればそれだけ、充填剤としてすき間を適度に作ってくれるのだが、細かすぎると、早く焦げるので臭いがつくからよくない。
あるていどザクザクと粗く刻むのがよいようだ。
日本家屋の土壁を見た人はわかると思うが、刻んだ藁を壁土にまぜて塗り込んでいる。
あの藁にあたるものがキャベツである。
このキャベツのお陰で、粉は少なくて済み、軽くふっくらとした構造を提供してくれ、お好み焼きの強度が増してコテで返すときに崩れにくくしてくれる。
卵は一枚に付き一個で、プレミックスの時に割り入れる。
卵は「つなぎ」であり、必須である。

じゃあ、刻みネギ、天かすは必須ではないのか?
ネギに関しては、本当に好みの問題だと思う。風味が増すので入れた方がいいと私は思うが、無ければ食えないかというとそれほど重要とも思えない。
天かすに関しては、習慣だからとしか言えない。全くなくても私は構わない。
それよりトッピングの青のりの方が必須であると私は思う。
見た目もあるが、青のりの磯の香りは強烈で、主張が強いから、お好み焼きの期待を裏切らない。
お好み焼きも「鼻」で食う部分があるのだから、鰹節にもこだわりたい。

鰹節で気づいたが、粉を溶くのに水ではなく冷ましただし汁(かつおと昆布)を使ってほしい。
大阪風お好み焼きのここはこだわりたいところだ。
粉の部分の味がまったく違う。
濃いソースの味に隠れてわかりにくいだろうが、ゆっくり味わうとわかるはずだ。

粉液の粘度は、お玉から落とすときにぼてっと重く落ちるくらいがいい。
糸を引いて落下するのでは緩すぎる。
広島焼のクレープ状の生地やたこ焼きの生地ならそれでもいいが。
山芋を入れているのでそんなに緩くはならないはずである。
キャベツに対して、粉液の量は少なめでいい。キャベツが卵と粉液で濡れる程度でいいくらいである。
実験してみたが、量が多いと、重力でキャベツと粉層の分離が目立ち焼き上がりがふっくらしない。
あるプロがキャベツの刻み方を細かいものとザクッとしたものの二種類にして混ぜていたが,ああいった工夫もよいかもしれない。
いずれにせよ、お好み焼きの内部構造の骨組みがキャベツなのだから、それを生かすプレミックスにすべきだ。

役物(やくもの)の焼き方は、プレミックスに混ぜて焼く魚介類と、別に焼く豚肉に分けられる。
魚介類(主にイカとエビ)は過熱しすぎがいけないから、プレミックス(たね)に混ぜ込んで蒸し焼きにするとよい。
一方で豚肉(豚バラ)は先に鉄板で焼いて、別に焼いているお好み焼きの、まだ焼いていない片面に乗せる方法がとられる。
豚肉はよく火を通さねばいけないので、そうするのだ。
プレミックスに豚肉を混ぜて一緒に焼くのは、火の通りが不十分になりやすいのでお勧めしない。

役物には、餅だの、モッツァレラチーズだの、最近は様々あるが、それぞれの特性を生かした焼き方をしないと、とんでもないことになるので注意が必要だ。そんな邪道を私はやらない。

焼き技、つまり返しの見極め。
お好み焼きには表裏がある。
役物の面が裏で、最初に鉄板に触れた面が表になる。
言うまでもなく、表にトッピングを乗せるのだ。
焼けた豚肉を乗せ、表を返して裏面を焼く、そしてまた返して表にして、すこし押さえてトッピングを施してコテで切りわける。
返す見極めは縁の乾き具合と「コテ探り」でコテが鉄板とお好み焼きの間にすっと通ればその面は焼きあがっている。
お好み焼きの中心部にコテの角(かど)を差し込んで、生焼けがコテについてこないかを確認してみること。
よく焼けていれば鉄板の上をお好み焼きが滑るはずだ。
二枚のコテを180度に対面させてお好み焼きの下に十分に差し込んで手前に向けて一気に返す。
大阪生まれなら子供でもやれる技だ。

トッピングの順番は、ソース、マヨ、青のり、鰹節の順である。
マヨネーズが嫌いな人は飛ばしていい。
ソースは「お好み焼き用」を使うこと。ウスターソースしかないときは、これをケチャップで割っておくと「お好み焼きソース」の代用になる。

最後に、お好み焼きをうまく焼くための因子として気づいたことがある。
鉄板の温度である。
そして「鉄板」は「テフロン加工ホットプレート」に勝ると感じた。
厚い鉄板の上で焼いたものは、お好み焼きにかかわらずおいしいのだ。
私はそのために町の鉄工所で作ってもらった。焼きそばでもなんでもこれ一枚でガシガシ焼けるのだ。
金属たわしやコテでこすり倒してもまったく問題がない。
まさに「鉄器」だ。
ヒッタイトだ。