・好きな作家は?
そりゃあ、もう開高健ですよ。誰が何と言おうと。

・開高健のどこがいいんですか?
文体ですね。「ブンタイ」。ほらあの人、コピーライターの草分け的な人でしょ?寿屋(現サントリー)の広告を当時全部作ってたわけだから、言葉が生きている。それは、彼の古今東西、鳥獣虫魚の書物を渉猟した結果だね。うん。

・開高健の本で一つ勧めるなら?
難しいことを言ってくれるね。とても一冊に絞り込めないけど、『日本三文オペラ』かね。

・じゃあ、もう一冊ぐらいお勧めしてください
そんなら迷わず『オーパ!』だね。ブラジルはアマゾンの釣り紀行だ。

・ところで、ウィスキーはお好きなんですか?
開高健の影響でね、駆け出しのころ、角瓶やダルマでやり始めてね、今もずっと好きだね。

・古典文学は、お読みになりますか?
古典ねぇ、『方丈記』とか『徒然草』かい?読んだけど。面白かったよ。今も昔も人間の思考なんてのは変らねぇなって思ったよ。長いのは、私の読解力がついていかないから読まないね。そんでも一番長いのは『大鏡』かな、読んだよ。若い頃。

・漢籍がお好きだとか
これもね、開高絡(がら)みなんだな。あの人は、谷沢栄一(たにざわえいいち)の蔵書を借りて勉強したらしいから、そのあたりの素養が分厚いんだね。漢詩は好きですよ。詩吟とかね。

・近代の文壇はどうでしょう?
私はね、高校時代まで、図鑑とか年鑑とか新聞以外は読まなかったの。だから、文学少年少女が読むような漱石だとか鷗外だとか芥川なんてのは、大人になってから読んだのね。ほとんどが母の蔵書ですよ。母がいわゆる文学少女のまま大人になったような人でね、その蔵書は今もありますが、とうてい読み切れるもんじゃない。

・西洋の作品はいかがですか?
シェークスピアも母の文庫がありますが、『ハムレット』で挫折し、『リア王』が辛うじて読めたかな。『ロミオとジュリエット』は映画で見ました。オリビア・ハッセーの。しかし、デカダン文学の『さかしま』は座右に置いてます。ユイスマンスは好きだね。長いけど『レ・ミゼラブル』は岩波のを読破しました。フランス文学が私の性に合っているのかもね。

・ロシア文学も面白いでしょう?
うーんとね、登場人物の名前がね、受け付けないね。長いんだよ。親しさによっていろいろ呼び方も変えてくるし『かもめ』は読んだよ。『オブローモフ』はひどかったね。読んだけど。『アンナ・カレーニナ』にでも挑戦しますか。

・ドイツ文学は?
『トニオ・クレーゲル』と、トーマス・マンのドキュメンタリー『闘う文豪とナチス・ドイツ』ってのを読んだかね。ゲーテとか読みたいけど、ハードルが高いよね。

・詩歌は読まれないですか?
近代詩はどうもね。それでも谷川俊太郎なんかはいいと思うね。大岡信は難解だけど、内面が良く出ているよね。悩み深い人だったんだろうね。俳句や短歌は私も作るので好きですよ。江戸期の俳諧と明治以降のホトトギス派の俳壇、それぞれにいいね。俳人の生きざまも面白い。よく食っていけたね。あとね『万葉集』や『古今和歌集』なんかの歌集もいくつか持ってんだけど、暇つぶしにぺらぺらめくるといい歌に出会えるよ。

・最近、読んだ本で興味深かったものは?
堀田善衛の『インドで考えたこと』と、椎名誠の『インドでわしも考えた』を改めて併読しました。そして、ネルーの『インドの発見(上・下)』を古本で見つけてインドを楽しんでいる。インドは神秘の国だね。行けたらいいんだけど、まあ無理だね。インドが今も貧しく、ネルーの時代からまったくといっていいほど変わっていないのは、頑なななにかがあるんだという感じはしたね。太古から、彼らは「寛容」だったのだろう。しかし、インド人は「寛容」どころか「偏狭」なのも事実なんだね。だから変わらない。もう何言ってるかわかんないけれども、インドは恐るべき国なのだよ。

・今後、本とどう付き合っていきたいですか?
とにかくね、この本の山というか谷をね、読み尽くしてから往生したいよね。内藤陳が生前「読まずに死ねるか」と豪語していたけど、そういう心境だね。あ、そこ凭(もた)れないでよ。本が崩れるからね。数千冊はあるだろうね。

・今日はどうもありがとうございました。
ああ、また来てよ。もっといろいろ話したいこともあるからね。竹里館はそう言うところだから。