宇沢弘文(うざわひろふみ,1928~2014)は世界的な経済学者であり、ノーベル経済学賞候補ともささやかれた偉人であるらしいが、私は、恥ずかしながら存じ上げなかった。
毎日新聞に、宇沢博士の長女(医師)と池上彰氏の対談が載っていたので、そこに評伝が合わせて掲載されていて「おお。これは」と私が食いついたのである。

宇沢氏をご存知の方からは「何をいまさら」というお叱りをうけることを覚悟で新聞記事から経歴を拾ってみる。
「世界的な経済学者で、米シカゴ大教授や東大教授を歴任。一時はノーベル経済学賞に最も近い日本人学者とされた。東大理学部数学科を卒業後に経済学に転じ、数理経済学で業績を上げたが、市場原理優先の理論を批判する立場に転換。豊かな社会に必要な社会インフラや医療、教育、環境は社会共通の資本として守るべきだという「社会的共通資本」の考えを提唱。公害や地球温暖化の問題に警鐘を鳴らした。2014年に肺炎のため86歳で死去した」

私が常々、申し上げている「社会資本主義」はすでに宇沢博士によって提唱されていたのである。
私の浅い知恵でも、宇沢博士の言わんとしていることはとてもよく理解できるのだった。

資本家目線ではなく、庶民の暮らしが基本と言う視点で、社会をながめると、とうてい個人ではできない、やってもらわねば恩恵にあずかれないことがたくさんあるわけだ。
自己責任論で「共助」を押し付ける政府は、政府が国民のために汗をかくことを怠っている証左である。
税金は、庶民から吸い上げるのだという古い考えに基づく国家主義からは、何年たっても、国民の暮らしぶりはよくならない。
国民も自助努力を惜しまないけれども、国家もそれを援助する考えがないと誰も喜んで税金を払わないだろう。
今の日本政府は国民からの信頼が薄い。

国民の信頼を取り戻すには、社会資本(宇沢氏の言う社会共通資本)を、だれもが平等に、廉価に使えることが必要だ。

インフラはもちろん、公教育や医療、公安、国防、行政サービス、司法サービス、立法府のスリム化と透明化、都市計画、防災計画など、すでになされているサービスをもう一度、利用者の視点で見直し、それらの運営に国費が明朗になっていることを示す機会を絶えず国民に示してほしい。

また国民の範囲は流動的で、明確なものではなく、日本国の主権の及ぶ範囲で生活する外国人にもあまねくサービスが享受されることを願う。
人種や出自、宗教の違いなどで差別されることがあってはならないことは「日本国憲法」に明示されている通りだからだ。
人権とは日本国民とそうでない人の間に垣根を作らないことでもあるからだ。

こういった有形・無形の「社会資本」を日本国民が納得の上で守り、整備して、必要な時にはだれもが利用できるようにしなければならない。
「社会資本」の管理のために政府は、もっと働くべきである。そのための税金はお支払いしているはずだからだ。

宇沢弘文の著書(もっとあるが、ベスト5を挙げておく)
『自動車の社会的費用』(岩波新書)
『社会的共通資本』(岩波新書)
『好きになる数学入門(全六巻)』(岩波書店)
『ケインズ「一般理論」を読む』(岩波現代文庫)
『人間の経済』(新潮新書)→絶筆というか講演録である。