私が小学六年生のときに、電話級アマチュア無線技士(当時)の国家試験を受けて、見事に落ちたことは、このブログで何回か書きましたね。

そのときに、最初につまずいたのは「静電荷」でした。
受動素子(増幅や整流をしない素子)の中でも、コンデンサ(今はキャパシタとも)の合成や、箔検電器(はくけんでんき)による電荷の移動、コンデンサの充放電の問題が苦手でした。
抵抗器の合成は、わりと早く習得したのに、コンデンサで少女の頭は混乱をきたしたのです。
箔検電器
静電しゃへい
箔検電器の問題は、センター試験でもたまに出題されるそうで、まあ点数をくれる簡単なもので、これを落としちゃいけません…と今なら言えますけれど。

その下の問題図は第一級アマチュア無線技士国家試験からの出題で、これ球体の断面なんですね。
a球とそれを覆(おお)う中空(ちゅうくう)のb球の断面だと考えてください。
両球は中心を同一にしていますから、aとbが作る空間の距離は図のように均等でなければいけません。そしてb球はアースされていて、アースの前にはスイッチSがあり、最初は開かれています。
この二つの球体が導体であるか、不導体であるかは問題文には明記されていませんが、静電しゃへいの問いかけだとすると、少なくともb球は導体であると考えたほうが合理的です。

まず、a球の表面が図のように「正」に帯電している時に解答者は、b球の内面(マイナスまたは負)と外面の電荷(プラスまたは正)の偏りを答えなければなりません。またこのようになる現象を、b球が導体であるべきだから「静電誘導」であると答えなければいけません。

次に、Sを閉じて接地させ、b球の電荷の偏りを解消させ、見かけの電荷はゼロになり、こういう効果を「静電しゃへい」であると答えさせます。
電子回路の静電気対策として広く使われている効果です。

ここで問題なのが、接地(アース)により「電荷がゼロ」になるということを「電気(この場合、ホールまたは正電荷)がアースに逃げた」と解釈しがちであることなんです。
もちろん、この問題の場合はその解釈でいいのです。
導体における静電気は「静電誘導」という原理で起こっているわけですからアースに落とすと過剰な電荷は地球に逃げます。
上の図の場合だと、アース線を通じて地球から「電子、つまりマイナス電気」が供給されて、b球表面の電子欠乏(ホール)状態が解消することになります。
電流とは、ホール(電子の抜けた穴)の移動であり、その向きはプラスからマイナスへ向かい、逆に電子はマイナスからプラスに動くのです。
実は、電子がマイナスからプラスへの移動することが、ホールを埋めながら、電子がたどって行くことになるから、ホールがプラスからマイナスに動くように見えるのです。

ところが、不導体(化学繊維など)で発生した静電気は「分極」といって、不導体の分子の中で正・負の電気の偏りを生じているだけで、その発生体(誘電体という)の全体の正・負の電気の量は変っていません。これを直ぐに逃がすには、アース線を接するか、火花放電しかなく、あとは自然に電子の偏りが解消されるのを待つのです(緩和現象)。
雷(かみなり)や冬季に着衣を脱ぐとパチパチ鳴るのは火花放電であり、数千~数千万ボルトの電気が蓄電されて一瞬に火花放電することで起こります。電流が電圧に対して極めて小さく、時間が一瞬なためにこの莫大なエネルギーは音と光と熱に消費されて、仕事率(ワット時)はまったく利用できないくらいに少ない。
ただし、火災を起こす着火には十分なので、引火しやすい物に火花放電は禁物です。

あらゆる物質を構成する原子核は、陽子と電子の数が対(つい)になって電気的中性を保っています。ところが、たとえば、酸素原子を含んだ有機分子(化学繊維など)は酸素原子の上に不対電子(ふついでんし)を持っていて、摩擦力などで、この電子が電子軌道(有機共有結合では混成して重なり合っている)の中で移動して偏ったりするために静電気が起こるのだと言われています。さらに、有機分子の中には共有結合のような飽和および不飽和結合であったり、共鳴している不飽和結合や窒素や硫黄原子など、電子の偏りを生じる電子軌道(混成軌道)があります。しかし電子軌道の束縛を受けているので自由電子のようには動き回れませんし、ホールも生じません。
化学結合の電子は、金属結合の自由電子ほど自由ではないが、原子軌道の中で移動することが可能(励起状態)なんですが、普段は基底状態(もっともエネルギーの低い安定な状態)で落ち着いています。外からの摩擦力や静電気力でこの電子は励起され、分子内で電荷の偏りを生じ、いわゆる静電気を起こし、これを「分極」と呼んでいるわけです。

私が大学生になってから知ったのですが、単一元素では硫黄(不導体)が静電気をよく発生するようです。硫黄は元素周期表では酸素の仲間になっていますので不対電子を持つ固体なのです。

結論として、静電気が、アースやスパーク(火花)によって逃げない状態では、導体でも不導体でもマイナスとプラスの総量は釣り合っていて、まったく電気的に中性なのだと言えます。
私が、この結論を得るまで少なくとも十年は費やしてしまいました。もっとも、私がこのことばかりを考えていたわけではないですからね。

箔検電器の図をもう一度、眺めてみてください。
外から帯電した棒状の物(不導体)を近づけていますが、決して箔検電器の電極には触れていませんね。触れたら、たちまち電子が移動し、電気的に中和され、静電気現象は解消されてしまいます。
この場合で、プラスの電気が棒から箔に移ることはないでしょう?
不導体では分極が、金属(導体)の中では静電誘導が起こっていることを示しています。
なお箔検電器は簡単に作ることができますので、興味のある方は下のページをご覧ください。
箔検電器をつくりました

さらに当時の私は、クーロンの法則から始まる点電荷の問題に出くわすと、「敵前逃亡」状態に陥ったのでした。

高校生の、お兄さんお姉さんなら、ベクトルとかスカラーなんてのは「朝飯前」なんでしょうけど、12歳になったばかりの私には、無限の原野に立たされた気分でした。

点電荷クーロン
これもアマチュア無線技士国家試験の問題なんですけど、大学入試でも普通に出題されますね。
AとかBは「点電荷」と呼ばれるもので、体積を考えない球体だと思ってください。「μC」は電気量の単位クーロン(Coulomb)の10⁻⁶を表していて、それくらい小さくしないと点電荷を1メートルの距離で離して置くことは無理だそうです。1クーロンって大きな斥力(引力)なんだそうですよ。
「電場」のところで説明しますが、1クーロンで1ニュートンの力が生じますので、1ニュートンと言ったら、質量1㎏の物体に1メートル/秒²の加速度を与える力です。(F=mα、力=質量×加速度、ニュートンの式)
地球上では平均9.8メートル/秒²の重力加速度が物体にかかっています。たとえ地面に落ちて止まっている物体にもかかっています。
ここで「平均」と書いたのは、地球上では重力加速度が、地点の緯度が違うと、自転による遠心力との合力によって変わるからです。もちろん万有引力ですから、月や太陽からの引力も影響しているでしょう。

話を戻します。
質量1㎏の物体なら、1÷9.8≒0.102(㎏重またはkgf)が、1ニュートンだということになります。これは地球上で、質量1㎏の物体を、落下させないように支える力がだいたい102g重(=1ニュートン)だと言い換えられます。

上の図の「二つの点電荷」の問題を解くには「クーロンの法則」という、頭の痛くなる考え方(公式)を理解するか、時間のない人は、もう暗記するしかないのです。
今の私は、急ぐ理由もないので、ちゃんと理解してこの問題を解きたいと思います。

図中の数値をいったん離れて、Aが+Q(クーロン)、Bが+q(クーロン)の電気量をそれぞれ持っている点電荷としてクーロンの法則の公式の説明をします。
AとBがr(メートル)離れていましたとしましょう。
AとBが互いにどれだけの力Fを受けるだろうか?
AもBも「正」の電荷をもっているので、互いに反発する力(斥力)が働いていることがわかります。
ベクトル(有向線分)で表せば、互いに平行で向きが逆の矢印で表されます。そして点Pではその矢印の長さが等しくなっているということでした。
この反発する力を「クーロンの法則」で計算しようというのです。
もしAが正でBが負ならば両方の点電荷は引き合う(引力)はずですが、そう言う場合も計算できます。

この図から導かれるクーロンの法則の公式はこのようになります。
クーロンの法則
Fは力(ニュートン)です。kは比例定数、Qqはそれぞれの点電荷の電気量(クーロン)、rは点電荷の間の距離(メートル)です。
この等式は距離の二乗に反比例しているので「逆二乗の法則」とも言われ、まったく同型の物理式に「万有引力の法則」の式があります。
これらの「逆二乗の法則」では、力を及ぼしている二つの物体が引き合って、最後はたがいにくっついてしまうことを意味しています。また斥力が働く場合は、二つの物体は永遠に出会うことはないでしょうということも示しています。
リンゴが引き合って地球と接してしまう(木から落ちた)ことは、つまり「逆二乗の法則」から導けるのです。

では、さっきのアマ無線の試験問題を解説しますが、この問題では、点Pが点電荷の間に設定されていますね。
この点Pで電界が零(ゼロ)になったというのです。その場合のAP間の距離がいくらになるか、この問題は問うています。

「電界」とは電気工学でよく使われる術語で、物理学では「電場」と呼び、まったく同じものと考えて差し支えありません。
「単位正電荷、つまり+1Coulomb当たりの点電荷が受ける静電気力(Newton/Coulomb)でEで表す」
これが電界(電場)の定義です。
たとえば+q Coulombの電場の静電気力Fは、
F=qE (Newton)
となります。
+qが1クーロンならF=Eなんですよ。つまりは。

電場はね、私の解釈ですけどね、こう考えるんです。
もし点電荷Aが、たったひとつ空間に置かれて、それが+qクーロンだった場合、それだけで空間からある種の力を受けるんです(静電気力F)。
それが電場なんですよ。もしその電荷が0クーロンの単なる「点」だったら、電場は生じず、まったくただの空間なんです。
点電荷が電荷をもつこと(だから点電荷と言うんだけど)で、同時に電場という力(F)が生じ、それは気圧のように周囲から点電荷の電荷に応じた力が押さえつけるんです。この力は点電荷に向かって周囲から均等に加えられるので、点電荷は動きません。しかしこの空間である電場に別の点電荷が存在したら、その影響で点電荷は互いに引き合ったり、退け合ったり電場が変化して運動するわけです。


Fはベクトル量ですので、この式から電界Eもベクトル量になります。
ベクトル量とは有向線分で表される「向きのある量」であります。
対して、向きのない、大きさのみを表現する量をスカラー量と言うのでした。

上図で点電荷の周りの空間には、距離の二乗に反比例した強さで力(電場)が均等に広がっているのです。

点Pでは点電荷AおよびBが引き合う力が同じで向きが異なるはずです。
大事なのは、力が「ゼロ」で「何も起こっていない」のではなく、力の向きが真逆で釣り合っているから「ゼロ」なのだという気づきです(ベクトルの考え)。
APの距離をx(m)と置きます。
するとBP間の距離は(1-x)メートルですね。
点Pにおいて、点電荷Aの斥力をF、点電荷Bの斥力をfとすれば、F=f(釣り合っている)です。
また点Pの点電荷も考えねばクーロンの法則を使えませんので、その点電荷をQとしましょう。

点電荷A,Bにおける電気量をそれぞれQ₁,Q₂として、AとP、BとPを別々にクーロンの法則から力の式をを立てます。それは「ゼロ」が釣り合っている、つまり力が存在しているからです。
F=kQQ₁/x²
f=kQQ₂/(1-x)²
F=f ゆえ、
Q₁/x²=Q₂/(1-x)²
Q₁(1-x)²=Q₂x²…①

辺辺に2分の1乗、つまりルートをとってxの項の二乗を無くしましょう。1>xが自明だから、
(1-x)√Q₁=x√Q₂
∴x=√Q₁/(√Q₁+√Q₂) …②
Q₁=+4, √Q₂=+36でしたから、②に代入して、
x=√4/(√4+√36)=2/(2+6)=0.25(m)

となりました。

2点の点電荷が不明で、等電界の点までの距離がわかっている場合の問題も問われます。
「点電荷Aの電気量が+QμC)で、Aから等電界点Pまでの距離が1メートル、電気量不明の点電荷Bと等電界点Pまでの距離が2メートルの場合、点電荷Bの電気量をQを用いて表せ」というような問題です。二点の点電荷の内分点に等電界点がある場合、二つの点電荷の符号は同負号になり斥力が働くことがわかります。引力が互いの点電荷に働く場合には等電界点は存在しません。

これは、①の式を使えばいいのです。ただしr=1+2=3です。
Q₁=Q
点電荷Bの電荷をQ₂とすれば、①式から
Q₂=+1²Q/2²=+Q/4(μC)
プラスの符号と単位をつけ忘れずに!