すばらしい秋晴れである。
「それじゃ、美津江さん、行ってきますわ」
「お義母(かあ)さん、行ってらっしゃい」
いつもの朝の玄関先の風景である。
赤間茂子は、黄色のスニーカーを履いて、藤色のショルダーバッグを袈裟懸けにし、背筋を伸ばすと家族に敬礼して踵を返す。
連れ合いに先立たれ十七年。
息子夫婦と孫との生活にも馴染んで久しい。
茂子は、五十になってからこっち体力の衰えを感じ、隣町のジムに週二回通っている。しかし、昨年からの新型コロナウィルスの蔓延で先月まで閉鎖されていて、緊急事態宣言が解かれてワクチン接種証明があればジムで汗を流すことが許されたのであった。

久しぶりに茂子は、駅前のコーヒーショップで男と待ち合わせるのである。もちろん家族には秘密にしている。
相手は、ジムで知り合った茂子より二つほど年上の高橋雄介である。高橋は税理士であり、事務所を開いており、今は息子に所長の座を譲って楽隠居としゃれこんでいた。

スタバに入ると、茂子は、窓際席で雄介が淡いグレーのジャージに身を包んで、スマホを見ながら坐っているのを認めた。
茂子はカフェオレを注文して、受け取ると雄介のテーブルに近づく。
「やあ、おはよう」ロマンスグレーの髪を軽く七三に分けた雄介が白い歯を見せて挨拶する。
「待った?」「いや」
徐(おもむろ)に椅子を引いて茂子が雄介の対面に腰かけた。
しばらく話の穂先を探す二人。
お互い、連れ合いを亡くしており、遠慮はなかった。
茂子も若い頃は、ボーイハントで鳴らしたもので、男性とお付き合いすることにちっともわだかまりを持っていなかった。
早逝した夫とも、そういういきさつで夫婦になった次第。

「ねえ、ゆうちゃん」
お互い、あだ名で呼ぶ仲になっていた。
「うん?」
「このままジムもいいけどさぁ」茂子がカフェオレに唇をつけながら言う。
「しけこむ?好きだね、しげちゃんも」
にやりと、目じりに小じわを作って雄介が茂子を見つめる。
「アレも運動よ。すっごく消耗するもん」
若い子のようにはにかむ茂子。

茂子が飲み終えたのを潮に、雄介も立ち上がる。
そこに、孫の大也(ひろや)が入ってきて、「あ」と声を上げる。
大也がまじまじと雄介を見、そして祖母の顔に視線を移した。
「あ、ひろくん、こちら、ジムでご一緒している高橋さん」と言い、慌てて「孫です」と雄介に紹介する茂子。
「へぇ、こんな立派なお孫さんがいるんだ。高橋ですよろしく」「はぁ、ども」大也だってぎこちない。
「じゃ、おばあちゃん、ジムに行くわ」
「ああ、行ってらっしゃい」
大也は自分の飲み物を携えて、二人を見送った。

茂子は、ハラハラドキドキしながら雄介について行き、彼の真っ白なレクサスの助手席に滑り込む。
別に、見られて恥ずかしいことはないはずなのだ。
息子夫婦にだって、茂子にそろそろ茶飲み友達ぐらい作ったらとときどき冗談めかして言われるぐらいである。
ただ…孫の大也には特別な感情が、茂子にはあった。

あれは、何度目かの緊急事態宣言下でのこと。
大也も高校がリモートで授業を行い、そのまま夏休みに突入してしまって、ほぼ毎日家で過ごしていた。
友人の少ない彼は、両親が働きに出ていることをいいことに家でゲームをしたり、プライムビデオを視聴したりのダラダラした毎日を送っていたのである。
茂子が、そんな孫を見て「すこし運動したら?おばあちゃんとストレッチやろうか?」とごく自然に誘ったことがきっかけで、若い雄を目覚めさせてしまったのである。
スウェットに身を包んだ茂子の体は、歳を感じさせない、若々しい熟女の体だった。
ジムで鍛えていたのだから当然だった。
茂子はまったく大也の視線など気に掛けずに、体をしなやかにフローリングの上で伸ばしたのである。
大也のほうが、たるんだ体を恥じ入るほどだった。
「まあ、なんなのそのお腹」「あ、いや、少し食いすぎたかな」
「ほらほら、こっち来ていっしょにやろう」
「あ、ああ。でもばあちゃん、すっげぇいい体してんじゃん」
「そ、そうお?ま、あんたよりはね」
股を割り、惜しげもなく見せる茂子は、自慢げでさえあった。
茂子は硬い孫の体を伸ばし、痛がるのをおもしろがりながら、汗をながした。
大也は茂子が近くで手を添えて、強い汗の香りを漂わせるのに、次第に、股間を充実させてしまう。
「ば、ばあちゃん…」
大也は茂子のおくれ毛に唇を寄せ、舐めた。
「あ…」茂子の体が凍り付く。
「お、おれ…がまんできん」
「なにを…ひろ…くん」
茂子はフローリングに押し倒され、組み敷かれた。
体格は大也のほうが優っているから、茂子にはどうしようもない。
とはいえ、全力を出せば逃れられたはずである。
茂子も若い大也に「抱かれたい」と思ってしまったのだった。
それはすでに、高橋雄介に「開発」されていたからかもしれない。

レクサスの助手席で黙り込んでいる茂子に、雄介が「どうした?」と声をかける。
「ううん。なんでもないの」
「もうすぐ、いつものホテルだぜ」
「うん」
まさか、孫と近親相姦をしていることなど話せやしない。茂子は考えまいとした。

「キャニオン」という割と質素なたたずまいのホテルが、茂子たちの逢引き場所だった。
そこは、彼らの住まいからほど近い山沿いのインターチェンジを降りたところにあるホテル街である。
十数軒が山間(やまあい)に忽然と現れるのだった。

部屋に入ると、雄介が激しく茂子を抱き、唇を奪ってきた。
ジャージの上から乳房が揉まれる。
大也なら、こわごわ触るところが、手練れの雄介は、太い指で大きくつかんでくる。痛いほどだった。

大也は茂子で童貞を捨てた。
茂子はそれで満足だった。
可愛い孫の「初物」をいただけたのだからと、まったく後悔の念は湧かなかった。
雄介に抱かれ、一枚一枚、衣を剥ぎ取られながら、茂子は大也の初めての時を思い出していた。

あのとき、大也の指は震えていた。
ボクサーパンツは尖り、はちきれそうになっていた。
スウェットはまくり上げられ、スポーツブラも同じようにめくられると、形の良い乳房がこぼれ出る。
大きくはないが、しっかり主張しているバストだった。
「やわらけぇ」
大也は確かにそう言った。
そしてむしゃぶりついてきたのである。まるで赤子のように。
茂子は濡れた。
下着を替えないといけないぐらいに。
いつの間にか、祖母と孫は裸でフローリングの上で抱き合っていた。
硬い勃起が茂子の、白髪交じりの陰毛の間に差し込まれ、谷間をつついている。
茂子が勃起を挟むようにしむけたのである。
挿入しなくても、この滑りは茂子をよがらせた。
「はあん…ひろくん。いい」
「ばあちゃん。ばあちゃん。おれこんなことして、いいのかな」
「いいのよ。気にしないで。ひろくんこそ、おばあちゃんでいいの?最初の人が」
「いいに決まってるじゃん。おれ、ばあちゃんが好きだ」
「ああ、ひろくん!」
茂子は腹筋を割り、力いっぱい孫に抱き着いた。
そのとき、するりと大也の反りかえったペニスが茂子の中に納まったのである。
「は、入っちゃったよ」
「ううん…すごい、ひろくんの…とっても硬い」
雄介のものよりも、硬く、深いところまで届いている感じがあった。
茂子は、大也の腰を両脚で挟み、もっと奥にとせがんだ。
「ば、ばあちゃん、おれ、もう」
言うが早いか、大也は茂子の奥深くに放ってしまった。
びくびくと全身を打ち震わせながら。
茂子は満足だった。

雄介の勃起が握らされた。
「どうしたんだよ。黙ってばかりで」
少しイラついたように雄介が言う。
「ごめんなさい」
「ほかの男のことでも考えているのかい?」
茂子は図星を当てられ、血が引くような思いをした。
「いないわよ。そんな人」
「わかんないね。しげちゃんほどのいい女」
「ほんとだったら」
茂子は、雄介に悟られないように奉仕しようと、彼を口に含んだ。
洗ってないそれは、むせるような匂いを放ち、鼻に抜ける。

大也のモノよりも亀頭が大きい雄介のモノは、かなり口を開けないと頬張れない。
亀頭に対して竿は大也より細いように思えた。
大也のそれは「寸胴(ずんどう)」で、普段は包茎気味だったが、勃起すると完全に大人の姿となった。
茂子は男性自身には、いろいろあるのだなと、今更ながら感心しつつ雄介の高まりを含み、しゃぶり続けた。
「ああ、そんなにしたら出ちまうよ」
雄介のほうから降参してくれたので、茂子はやれやれと口を離す。
唾が、口角からあふれてシーツを濡らしてしまった。

生理の上がった茂子は、中に出されることで無上の愛を感じるのだった。
だから、口に出されたくないのである。
「最後は私の体の中で逝ってほしい。精液を胎内にぶちまけてほしい」
心底、そう思う五十八歳だった。

高橋雄介は、年の功というか、経験豊富なのだろう、さまざまな体位で茂子を翻弄するのだった。
亡くなった夫、智也はセックスに対しては淡白な方だった。おそらくあまり「知らなかった」のだと茂子は、今になって思う。
雄介は違った。彼はアダルトビデオを好んで視聴するらしく、欧米の作品で仕入れた「方法」を茂子にほどこすのである。
茂子も嫌いではないので、気持ちいいこと、体を動かす運動だと割り切れば、雄介の「技(わざ)」もすべて受け入れようという気になった。
バスルームで二人は立ちながら洗い合い、茂子を壁に向かわせて背中から貫くのも雄介が好む方法だった。
やや長い雄介の持ち物だからこそできる技なのだろう。
茂子の片足を上げさせ、斜め下から突き上げられると、茂子の口から大きな声が漏れる。
「あうっ!ぎゃわっ!」
断末魔の叫びのような大声がバスルームに響きわたった。
ぶしゅっと膣の中から押し出される空気が、音を立てる。何度も。
大也にはできない芸当である。

くたくたにされながら、茂子は湯船に入り、雄介と向かい合わせになって口を吸い合う。
あぷ、あむ…
「かわいいよ。しげちゃん」
「うん、もう…」
茂子は茂子で、先ほど自分をえぐった肉棒を指で輪を作ってしごいてやる。
大きな亀頭を絞るように力を籠める。
「むふふ…」
「おっき…」
ちゃぷちゃぷとお湯が波打つ。
「乗りなよ」
湯船の中でつながれと言うのだ。
茂子は腰を浮かして、雄介にかぶさる。
当て推量で、ペニスの先を谷間で探る。
「うふん」
ずぶりと、亀頭が茂子をくぐる。
そのまま、ずーっと侵入していくのだった。
はあっ…息を大きく吐く茂子だった。
もう硬くなってしまった子宮が持ち上がるような挿入感である。
「狭いね、しげちゃんのあそこ」
「ゆうちゃんのがおっきいのよ」
なんてことを言い合いながら、つながる二人。

ゴンドラのように水に揺れながら、老境の二人が体を交えている風景は微笑ましいものである。

その日、家に帰った茂子は、大也と目を合わすことができなかった。
大也は気づいていた。
高橋と名乗った男と、祖母は「関係」があるのだと。
「ばあちゃん」
「なに?」身構えてしまう茂子だった。
「高橋さんと、やってきたの?」
単刀直入に祖母に尋ねたのは、大也が、それだけ嫉妬に燃えていたからだ。
今日の半日、大也は祖母が男と寝ていることばかり想像して、ティッシュを消費していたのである。
「なにを言うの。品のない。あの人とは、何もありません」
「うそだ。じゃあ、ぼくが調べてやる」
そう言うと、大也は茂子はリビングのソファに押し倒した。
「いやよ。やめてっ!」
「ばあちゃん!くそっ」
若い大也に勝てるはずもなく、茂子は組み敷かれ、ショーツを下ろされてしまう。
ホテルのシャワーで良く洗ったはずだが、雄介に二度も胎内に射精されていたので、完全には除かれていない。
「ほら、精液の匂いがするじゃないか」
茂子は両手で顔を覆っていやいやをしている。
「悪いばあちゃんだ。うそつき!」
そう言うと、大也はズボンとパンツを脱ぎ棄て、すでに立ち上がっている勃起を祖母に向ける。
茂子は、無残に大也に犯されていた。
茂子の目はうつろに、天井の照明を眺めており、大也の激しい突き込みにただ、体をゆだねているだけだった。
「早く終わってほしい」そう、茂子は心で念じていた。
それでも、大也が放つときには、小さなエクスタシーを感じてしまった茂子だった。
そのまま、茂子は風呂場に消え、全ての「印」を体から流そうと、執拗にシャワーを浴びた。
そして泣いた。

(おしまい)