如月(二月)最後の日となりました。
「きさらぎ」とは「着更着」であって、寒いから、着た上に、さらにもう一枚羽織るというふうな、「春は近いのにまだまだ寒いなあ」という季節なのですね。
ヤブツバキ
うちの庭の「ヤブツバキ」です。
宇治上神社の境内にあるヤブツバキの種を拾って植えたらこんなに咲きましたよ。
椿(つばき)の語源は、この艶やかな照りのある葉に由来すると聞いています。
「ツヤ木」から「ツバキ」となったと。
こういう照りのある葉は「照葉樹」と総称され、亜熱帯から温帯に分布し、「照葉樹林帯」を形成しています。
照葉樹林帯に沿って、稲作が分布していたり、もち米を食べる習慣があったり、納豆を食したり豆腐を作ったり、味噌醤油などの大豆文化も随伴していることに、中尾佐助や佐々木高明が気づいて「照葉樹林文化論」を唱えました。
あたしは、たまたま「国立民族学博物館(通称みんぱく)」の一般会員になっていたことがあって、よく阪大の近くの、大阪万博記念公園にある博物館に通っていました。
当時、梅棹忠夫館長の後を継いだ、佐々木高明先生がみんぱく館長だったと記憶しています。
照葉樹林帯と稲作文化の伝搬は、地理的な重なりがあった、植物の分布がそうだったという偶然の産物だと、あたしは生意気にも思うんですけどね。
伊豆大島のツバキは有名で、このツバキの種を圧搾して得る油はびんつけ油としてお相撲さんの大イチョウを結うのに使われます。
安い将棋の駒の材として、ツバキの木が使われることもKちゃんのお父さんから聞きました。
「押し駒」と言って、文字を印刷した駒にツバキを使ったものが多いそうです。

宇治はお茶処です。
「チャノキ」、つまりお茶の木もツバキによく似た白い花を咲かせます。
どうりで、同じ仲間だそうです。
「山茶花」と書いて「サザンカ」と読ませるのも「サザンカ」が「チャノキ」と同族だからでしょう。
サザンカは花がツバキに似ますが、花びらを落として枯れていきます。
しかし、ツバキは花がポロリと首から落ちます。
よくツバキの樹の下に花がボタボタと落ちているのを見かけるでしょう?
「首が落ちる」ように見えるとして、この花が不吉なものを想像させるので病人の見舞いには禁忌です。

ツバキのツヤのある葉は「クチクラ層」が発達したものです。
クチクラは「ロウ」です。
ワックスですね。
脂肪酸の高級アルコールエステルです。
脂肪酸側の炭素鎖もエステルを形成するアルコール側の炭素数も大きいのがロウです。
和ロウソクの原料はハゼという高木の実から取れるロウ(木蝋:モクロウ)ですが、西洋のものは、「キャンデリラワックス」というものでタカトウダイグサから取られるものだそうです。
モクロウはジャパンワックスと言われるくらい、日本の特産でした。
しかし、現在の安いロウソクは石油系のパラフィンワックスが使われ、その構造は単なる炭化水素です。

車のワックスは昔、カルナバ(カルナウバ)ワックスが使われました。
今もいいものはカルナバを使っていると思います。
ツバキの葉のように、よい光沢が出るんです。
カルナバというヤシの木の葉のクチクラから取ります。

口紅には「ミツロウ」といって、ミツバチの巣を形成するロウが使われます。
かつて、ミツロウはクレヨンや色鉛筆にも使われていたんですけど、高いから、今は化粧品だけかもしれません。
今のクレヨンなどはやっぱり安いパラフィンワックスを使っているでしょうね。
もし色付きロウソクを作りたかったら、クーピーペンシルとかクレヨンを削って元の白いロウソクに混ぜて加熱融解して一様に固めればできます。
同じものですから。
芯になるタコ糸を入れ忘れないようにね。

では、ごきげんよう。