みなさんは、小さいころ、こんなことを思ったことはありませんか?

ある日遠足から帰ったら、あたしの部屋の状況がいつもと違う。
母の態度が少しよそよそしい。
母がお掃除をしただけだったかもしれない。
そんなささいなことがあたしの心にトゲのように刺さっているなんてこと。

あたし以外は、親も先生も友達も、なにか巨大な組織からよこされた人間で、そのことを知らないのは自分だけで、みんなあたしを騙すために、お芝居をしているんだと。

「何のために?」
そう問われると、答えに窮するけれど、とにかく、ある「陰謀」のために、お芝居をしているんだ。

もしかしたら、あたしがまだ赤ん坊のときに、お父さんもお母さんも、叔父さんももう死んでいて、たぶん飛行機事故かなんかで一遍に死んじゃって、あたしだけ取り残されたんだよ。
それをあたしに知られないように、今の両親に育てられてんだきっと。
祖父も祖母も、親戚もみんな、あたしを騙してんだ。

そう考えるとつじつまが合うようなことがあった。
あたし、お母さんに似てないよね。
お父さんにも似てないや。
叔父さんなんか、まったく似てやしない。
いや、この人が、あたしたちと同居していること自体が、なにか変。
あたしを監視するために、派遣されている男なんだよ。
「叔父」だと偽ってるにちがいない。

あたし思い切ってお母さんに訊いてやったら。
「なに言うてんの、この子」
でもその顔は変にひきつっていたよ。
やっぱり・・・

いつだったか、従弟のこうちゃんにも訊いた。
「あほな。そんなんあるわけないやろ」
変な顔して笑ってる。
やっぱり、何か隠してるんや。
あたしは不穏な空気を感じたわ。

バレたら消されるんや。
そやから、みんな隠してるんや。

あたしは、本の読みすぎで頭がおかしくなっていたのかもしれない。
でもあたしの周りでは、変な事件がよく起こった。

「土台人」と呼ばれる人たちが付かず離れず、うろうろしているようだった。

そして、今もだれかに追われているような気がしてならない。

従弟は行方不明で、両親と叔父はなぜか早世してしまった。
叔父の死は変電設備での感電死という変な死に方だった。
表向きは、父は肝硬変で、母は胃がんで亡くなったことになっているけれど、あたしは彼ら三人があまりにもばたばたと急に亡くなったので、いささか腑に落ちない。

あたしは一人になると、いいようのない不安が襲う。
あなたはこんなことありませんか?

実は、これとよく似たエピソードを「那由他」(佐々木淳子の漫画)を大学時代に読んで「ドキッ」とした経験があります。