あらし吹く 三室の山のもみぢ葉は 龍田の川の錦なりけり (能因法師)

これは百人一首の69番の和歌ですが、中学の国語の時間に、ある女の子が「いんのうほうし」と誤って言うたもんだから、男子が大笑いしてその子が泣いちゃったということがありました。
女の先生もきょとんとして、どうして教室が笑いの渦に巻き込まれたのか要領を得ない表情。
「いんのうじゃなくって、のういん法師ね」と、真面目な顔で訂正する先生を見て、また爆笑。
女子のほとんどはなんでおかしいのかわかっていなかったらしいけれど、あたしはすぐにわかったんで笑いをこらえるのに必死だったわ。

大学の有志コンパに招かれて、そこでの話なんだけど。
工科大学だから女子が少ないので、よく男の子から学内合コンに誘われたのよ。

どういういきさつでそういう話題になったのか未だに思い出せないんだけれど、女の子がある男の子に「あんたは軽薄短小なんだよ」って、酔って座った目で言うのね、するとその男の子が、「見たんかい、お前」と食って掛かったんだ。
女の子の方はきょとんとして、「何を?」

あたしは、また笑いをこらえるのに必死だったわ。
男の子は自分の持ち物のことをバカにされたと思ったんだね。
女の子は、そういう意味じゃないってのに…

ただ男の子が「ほうけい」とか「たんしょう」という単語に敏感に反応するらしいことが判明しました。

ちょっと戻って高校時代。
前に書いたかもしれないけれど、まだ覚えてる。
野球部のエースでクラス一、勉強のできる、女子の中でもあこがれの男の子がいた。
眉が太くって、星飛雄馬みたいな感じ。
彼の名誉のために「星君」にしておくね。
あたしだって、ちょっといいなと思っていたんだから。

英語のグラマーの時間に、かれが先生にさされて英文を読みます。
「・・・イセクリーム・・・」
半分、寝ぼけていたあたしにもそう聞こえた。
先生は聞き逃さなかったね。
「星、もういちど、そこ読んでみぃ」
「あ、はい」
星君は再び同じ文章を読んだわ。ほなら、やっぱし「イセクリーム」と言ったよ。
そこには「ice cream」という単語があった。
あたしは、笑いをこらえるのに必死のパッチだった。
先生は「情けないわ。星のような優等生がイセクリームやて…」と、嘆いたのです。
あたしは今もアイスの季節になると「星君」を思い出すよ。
かっこよかった星君は、あの「イセクリーム事件」から、あたしの中では多くの男子生徒の一人に過ぎなくなったわ。

これも前に書いたかもしれないが、小学校五・六年時代のかっちゃんという男の子の話。
かっちゃんにはいろんなエピソードがあって枚挙にいとまがない。
性教育の時間に、スライドを見た後、かっちゃんは担任の中村操(みさお)先生に、
「せんせ、なんで犬とか猫は交尾(こうび)っていうのに、にんげんは性交なん?」
女の中村先生は、しばらく考えて…
「にんげんにはしっぽがないから、交尾とは言わんの」と、切り返したのだ。
あたしは、思わず膝を打ったよ。
かっちゃんは「ふうん」と納得してしまった。
かっちゃんはプールの授業のとき、決まってフリチンで女子の中を走り回る癖があった。
きゃあきゃあ言うと、よけいによろこんで、おちんちんを振り回すもんだから、おっきくなってきちゃって、ぱちんぱちんと左右に当たるわけ。
そしたら中村先生が、怒って、「こらぁ、かっちゃん!はよ、海パン履けぇ」と首根っこつかんで引き倒すの。
でもね、そんなかっちゃんも六年生になると、それをやらなくなりました。
なんでって?
噂では「生えてきた」らしいのよ。
バカね、男って。

さ、そんな思い出話でも酒の肴にして、寝ましょうかい。