加藤一二三 九段が十四でプロデビューしたとき、当時の升田幸三実力制名人をして「この子、凡ならず(非凡だ)」と言わしめました。
そして今日、藤井聡太四段に対し、加藤九段はその引退会見で、「無欠の棋士を得た」と述べて、喜んで勇退していった。
たしかにバトンは渡されました。

今年の1月25日に大阪で行われた棋王戦の予選の対局を見てみましょう。
「神童系」の藤井聡太四段と、「筋肉系」の豊川孝弘七段の対戦です。
藤井四段が先手番、豊川七段が後手番です。

早々に角換わりの様子となり、しかしながら、藤井四段は早々と十九手目で3七桂が飛び出させます。
二十五手目で藤井四段の4五桂と、二十七手目の6六角打ちと積極的な攻めに、豊川七段は防戦に忙しい。
気が付けば、豊川七段は「裸玉」となってしまいました。
藤井四段の容赦ない大駒切りで、豊川七段の玉は金一枚で守らねばならないことになります。
藤井君、十四歳にして「脱がせ上手」に「縛り上手」ときたもんだ。
好きよ、そういうの。

藤井君の「と金」作りでますます、豊川七段は追い立てられます。
豊川七段も飛車を回して、藤井陣営に迫ろうとしますが、4七に打たれた香車がじゃまだ。
ほんと、藤井君の桂・香の使い方が上手い。

結局、豊川七段は攻めの糸口がつかめないまま、自玉がどんどん藤井四段の龍と「と金」で追い詰められます。
わずか85手目の藤井四段の7二に銀を打ったところで投了となりました。

詰将棋の名手でもある藤井四段ですから、終盤はもはや彼のペースで詰み上がりとなったのですね。
いやはや、強い。

相手に「囲わせない」藤井四段の素早い将棋は、たとえ上段者でも敵ではないということを見せつけました。