私はこれまで多くのものを捨ててきた。
友との縁も切ってしまった。

身軽になった分、哀惜(あいせき)の念に堪えない。
つまりは、未練がましい心が残っているのだ。
もっと自由を謳歌していいのに。

ここに来るまでは、もっと自由になりたい、自由が欲しいと希(こいねが)ったではないか?
なのに…

生きることに疲れていたのだ。たぶん。
私のしたことは、どれもいい加減だった。
それは、私が未熟だったからにほかならない。
なにかしら天啓(てんけい)のようなものを期していたのかもしれない。
そうして未来を指し示してもらいたかったのだ。
今は違う。
今は違うはずなのだ。
あの頃は、世の中の矛盾や理不尽に怒りを感じて生きていた。
自分のことよりも他人のことに首を突っ込んでいたものだ。
干渉もしたし、こびへつらいもした。
女としての武器も使った。
抱かれることで、得られるものもあったのだ。確かに。

私が覚えている限り、「私」は三人の女性を貶(おとし)めた。
何の落ち度もない彼女らを、蹴落とした。
身勝手だが、私は今、償いたいと思っている。
彼女たちはもう、そんなことは忘れてしまっているかもしれない。
けれど、私は懺悔(ざんげ)の気持ちを捨てていないどころか、一層、詫びたいと思っている。



人は迷うと、良くない自分が顔を出すものだ。
迷うことから逃れたい一心で、悪事に手を伸ばすものだ。
赤ん坊が欲しいものに手を伸ばすように。
物に自他の区別がない時期はそれでも良かった。
許しを請うのではない。
許してもらおうなどとは思っていない。
哀惜の念からそう思うのだ。
こころから惜しいと思っているのだ。
あなた方を失って…