イタコン酸(itaconic acid)は二塩基酸だけれど、重合性がある。
イタコン酸
化学を専攻された方、IUPACで命名して見てください。

「2-メチリデンブタン二酸」
ですね。
主鎖が「ブタン」なのはわかりますね。
炭素原子の数が4つです。
「=CH2」のメチリデン基をどっちから数えるかです。
数が若くなる方から数えます。
だから上の図では、右から数えた方がメチリデンの炭素の位置が若い。

「横山さん、これってコハク酸の誘導体ですか?」
おっと、いきなり質問が飛んできましたね。
「そうです。コハク酸のIUPAC名はブタン二酸でしたね。あなたは、どちらの大学ですか?」
「大阪市大です」
「どうもありがとう」
イタコン酸はこのようにビニル化合物ですから、重合可能なわけです。
私の研究でも、アクリルもしくはメタクリル系のモノマーとの共重合をしております。
まあ、こんな例の特許出願が山ほど出ていますので、目新しいモノマーではありません。
静岡の磐田化学あたりが発酵法でイタコン酸の量産をしていますので工業的に入手できます。

共重合すれば簡単に高分子の中にカルボン酸を導入でき、そこをアルカリで中和してやれば、水溶性を付与させることができます。
反対にイタコン酸のホモポリマーはできにくいとされています。
ビニル基(メチリデン基)が末端ではないので立体障害があるのでしょう。

メタクリル酸やアクリル酸の共重合でカルボン酸を導入する場合と、イタコン酸を共重合する場合とどう違うのか?という疑問があると思いますが、イタコン酸の分子の非対称性による軟化、さらに二塩基酸であることから、少しの添加で酸価を上げられるという特徴を持ちますね。

すると繊維に用いれば染色されやすくなったり、柔らかな風合いを付与させることができます。
イタコン酸はさっきも言ったようにホモポリマーができにくいのでガラス転移点が測定されていませんので、できあがった共重合体のガラス転移点がよくわからない。
おそらく軟らかい方に傾くでしょう。
また乳化重合であれば保護コロイドの効果を助け、安定なエマルジョンを得ることもできるでしょう。
共重合させるときの配合量は全モノマー中、重量で20%以内でしょうかね。
あまり多く入れると残って、フィルムが濁ります。
さてイタコン酸の名はアコニット酸のアナグラム(語句点綴)で生まれたんですよ。
見てください。
「aconitic acid」これがアコニット酸の綴りです。
こちらは「itaconic acid」の綴り。
わかりました?文字列を入れ替えてイタコン酸の英名ができました。
えらい、ふざけた命名ですよね。

じゃあ、アコニット酸とはなんぞや?
クエン酸を硫酸で脱水したらできるのがトランス-アコニット酸です。
生体のクエン酸回路で登場するアコニット酸はシス型だそうです。
トランスアコニット酸シスアコニット酸
アコニット酸の幾何異性体(左がトランス型、右がシス型)
IUPAC名は「(E)-1-プロペン-1,2,3-トリカルボン酸」がトランス型、シス型は「(Z)-」で始まるだけであとは同じ。
カルボキシル基の炭素を数えずに、主骨格を取り出すと、1-プロペンが主鎖だとわかりますか?
そのプロペンの二重結合回りでシス、トランスに分かれるわけ。

クエン酸はオキシ酸の仲間で、三つのカルボキシル基と一つの水酸基を分子の中に持ちます。
クエン酸をアルカリで中和するとき、解離定数も三つあります。
酸塩基酸だから当然ですね。
クエン酸
これがクエン酸です。
梅干し、ミカンとかに普通に入ってる酸です。
お菓子や飲料の酸味料に使ったり、電気ポットの湯垢取りに使われます。
生体内ではクエン酸回路として重要な物質です。
酸素呼吸する生物のエネルギー代謝の物質を追っていくと、クエン酸を起点に、酵素反応によっていろんな有機酸が回って、またクエン酸にもどってくる。
クレブスはこの回路の解明でノーベル賞をもらうのでした。