『少年ケニア』っていう漫画じゃないけど、絵物語っていうのかな、そういう少年読み物があったらしいのよ。
もちろん私たちの世代よりずっと前の話。
私はこの作品を角川アニメで知った口だから。渡辺典子が主題歌を歌っててね。
山川惣治(やまかわそうじ)という人の原作だそうです。

そう言えば、渡辺典子ってどうしちゃったんだろうね。
薬師丸ひろ子と原田知世と角川三人娘なんていってがんばってたのにね。

日本人とアフリカという大胆な発想が、当時、なかったもんね。
『ジャングルブック』や『ターザン』の影響がなかったとは言えないだろうね。
「南方(南洋)もの」という冒険譚が流行ったのよ。たぶん。
戦争のこともあったかもしれないし、ハワイやブラジルへの移民政策もあったかもしれない。
『海底軍艦』や『ゴジラ対モスラ』、ウルトラマンシリーズの初代で「多々良島」という怪獣を産出する南の島など挙げたらきりがない。
『ガボテン島』とか、今ならちょっと放映できないような『ジャングル黒べえ』や、手塚アニメの代表作『海のトリトン』なんかも「南洋もの」だよね。

『ふしぎな島のフローネ』や『南の虹のルーシー』も女の子には人気だったけど、その頃は、私は大学生だったんで、そんなのを観る年齢ではなかった。

『ジャングル大帝』と『狼少年ケン』を忘れてはいませんかと言われそうだ。
『ジャングル大帝』は基本、人間が出てこない。出てきても大自然を脅かす者として現れるのであって、主人公はみな動物たちだ。
『狼少年ケン』は私が生まれたころに放映されていたらしく、まったく覚えておりません。
確かに『少年ケニア』に近いかもしれないし、「ケン」は聞くところによるとアジアのジャングルが舞台だそうですね。
『ターザン』のアジア版ってとこですかね。
私の小学校時代の読み物で「狼に育てられた少女」みたいなドキュメンタリーがあったように思います。
インドの話で、かなり古い話らしく、『狼少年ケン』はそれを元に作られたのではないですかね?
その少女は姉妹だったと思うんだけど、救助されて人間として育てられるのですが…どうも作り話臭い。
彼女らは単なる親に遺棄された子供で、狼に育てられたわけではなく、ちゃんと教育されていなかった孤児に過ぎなかったと結論づけられているようです。
言葉を話せないのは教えられていないからで、暗闇で目が光るなんてことは、ヒトの眼球では考えられないそうです。
またオオカミは群れで移動する動物であることは周知で、ヒトの乳呑み児を二人も連れて雌のオオカミが群れと一緒に移動すること自体、不可能とされています。
オオカミなら、そんなことをしないで二人を「食って」しまうに違いないと。
私もそう思います。

『狼少年ケン』は漫画アニメですから、そういう野暮なことは言いっこなしで、楽しめばいいと思います。
すると『少年ケニア』のほうが有り得るお話になりそうです。
かなり荒唐無稽な出来事に巻き込まれる主人公らしいですが、「狼少女」よりは有ってもおかしくない。
ある商社のケニア駐在員の父と息子の話だそうです。太平洋戦争が絡んでいます。
ケニアは当時、英領でしたから、日本が米英と戦争状態になってしまい、それがきっかけで日本人の少年「ワタル」がケニアで父と生き別れになり、マサイの酋長に助けられ…冒険の旅が始まるのでした。

「冒険もの」って夏休みの読書には最適ですよね。
『十五少年漂流記』(ベルヌ)や『海底二万マイル』(ベルヌ)、『地底探検』(ベルヌ)、『八十日間世界一周』(ベルヌ)、『タイム・マシン』(ウェルズ)、『コンティキ号漂流記』(ヘイエルダール)、『さまよえる湖』(ヘディン)、『太平洋ひとりぼっち』(堀江謙一)などを私も読みました。

夏休みは、連れて行ってもらっても琵琶湖か若狭湾、大阪の二色ノ浜か淡輪(たんのわ)ぐらいでしたからね。冒険したかったですよ。