近所のアル・プラザ東宇治にだんなを連れて行ってきました。
フードコートにあるサーティワンでアイスを食べてきました。
車椅子でも気を遣わずに入れるんで、よく来ます。
あたしは、キャラメルリボン、だんなはオレンジソルベ(シャーベット)を。

アイスクリームを食べると思い出すことがあります。

あたしが高二のとき、野球部のエースで、黒目がちのつぶらな瞳をした、お勉強も学年トップの男子がいました。
名前は鈴木一朗君とでもしておきましょう。
(めずらしい苗字だったので、仮名とさせていただきます)

あたし、ひそかに憧れてましたよ。(初恋じゃないですけど)
クラス、いやいや、学年の女子はみんなそうだったと思います。

それは、英語のグラマーの授業の時に起こりました。

国久(くにひさ)先生といって、「国やん」とあだ名されて、生徒から嫌がられている先生が担当でした。
国やんは、生徒をけなしこそすれ、決して誉めることをしません。
まるで、「坊っちゃん」の赤シャツです。

国やんの授業は、教科書の英文を出席簿順に、一人一人に当てて読ませて訳させるという形式でした。
だから、次が自分に当たることがわかるんで、予習が欠かせません。

鈴木君だって、そうしてたはずです。

鈴木君の番になって、先生が
「次、鈴木」
「はい」
元気な、声変わりしたての返事が教室に響きます。
鈴木君はおもむろに起立し、スラスラと英文を読み出しましたが・・・
「イセクリーム」
そう聞こえました。
「お伊勢さんって、出てきたっけ?」あたし、一瞬、耳を疑いました。

国やんは、聞き逃しませんでしたよ。
「イセクリーム~?」
いやらしく、語尾をのばして、先生のメガネが光ります。
「は?」
きょとんとする鈴木君。
クラスのあちこちから忍び笑いの声が漏れています。
「鈴木、何クリームやて?もいっぺん言うてみ」
先生は追及の手を緩めません。
「で、ですから、イセクリーム・・・」
今度ははっきり聞こえましたよ。

「情けないわ」

出た~。国やんの十八番「情けないわ」。
あたしも何度言われたか。でも鈴木君が言われたことはかつてなかったと思います。
「鈴木、今年の修学旅行は残念やけど、伊勢ちゃうねん、長崎や。これはアイスクリームと読むんじゃ。覚えとけ。なんで鈴木とあろうもんがイセクリームなんや、あ~情けないなぁ」

どっと教室は爆笑に沸きました。
あたしは、でも鈴木君の顔をまともに見ることができませんでしたよ。
終始、うつむいて、でもついには声を殺して笑ってましたけど(野口さんみたいに)。

次の日から、鈴木君のことが気にならなくなりました。
なぜなんだろ?

アイスクリームを食べると、思い出す、甘い思い出でした。

そういえば、今日は、お伊勢さんの式年遷宮ですってね。