子供たちが、用水路で網を持って遊んでいます。
まだ暑いですからね。水遊びが気持ちいいです。

あたしも、子供の頃は男の子に混じって近所のため池とか小川にでかけましたよ。

でもあの緑色の水面はどこか不気味でした。
得体のしれない生物が潜んでいるような。実際「雷魚(ライギョ)」っていうんですか、あたしたちは「タイワンドジョウ」と呼んでましたけど、ワニみたいな怖い姿をしたのがいるんです。

ため池などに必ずあったのが、「入るなきけん」と書いてあって、カッパが子供を引きずり込む絵が描かれた立て札。

あたし、サンタクロースの存在より、カッパの実在の方を信じてましたもん。

火野葦平の「河童ものがたり」が好きでした。
このような、本を読んでいたことも影響しているかもしれません。
古い本です、父のものですから。

「尻子玉」を抜かれるんだそうです。カッパに捕まると。
大人たちも、意気地のない人に「尻子玉抜かれ野郎」と罵っていましたっけ。
あたしは、尻子玉とはキンタマ(すんません品がなくって)のことだと思ってましたが、女も取られるそうで、取られたら、魂がぬけて「腑抜け」になってしまうのだそうです。

ため池で泳いでいると、対岸付近で、波間に浮き沈みする黒い点がいくつか見えるときがあります。
どうも、こっちを見ているようです。
「かっぱや。かっぱがあたしらを見てる」
「はよ、上がろ」
あたしらはてんでに、岸を目指して泳ぎ、事なきを得たのでした。

大きくなってから、それは「カイツブリ」という水鳥だということを知ったのでした。