最初は、小さな行き違いだった。
「周(めぐる)さん、尚子(なおこ)の勉強をみてもらってありがたいんだけど、あの子があんたに誤解をしないとも限らないし・・・」
「え?義姉(ねえ)さん、それはいったいどういう意味です?」
「言わせる気?あの子があんたに恋心を抱くんじゃないかってこと」
「あはは、義姉さん、それは考えすぎだ。ぼくだって、常識がありますよ。姪に手を出すなんて、しゃれになりませんから」
「ほんとぉ?あんた、その歳で独身なのも心配なのよ」
「大きなお世話だ」
少し、俺は怒気を含んで言い放った。
義姉は、一人娘の尚子に、俺がちょっかいを出しているのじゃないかと気を回しているらしい。

兄は仕事柄、出張の多い男で、俺が彼ら夫婦と同居している特殊性もある。
だが、義姉に恋情を抱いても、姪の尚子にそれはない。断じてない。
あの子は確かに、魅力的な子ではある。
話していて退屈しない、不思議な女の子であることは認める。
俺によく似て理数系に強いし、そういった方面に進むであろうことも予想できた。
だから、同好の友人というか後輩として接しているつもりだった。
尚子とて、そうだろう。
それに、尚子が俺の実姉の長男、浩二と恋仲なのも知っている。
前に相談を持ちかけられて、いとこ同志だから問題はないと尚子に教えてやったものだ。

それより、俺は尚子の母親である、この義姉の倫子(みちこ)と関係を持ちたかった。
倫子の体は、大柄で熟れきった匂いを放っていた。
俺を小馬鹿にするその表情がまたたまらないのだ。
実は、彼女と秘密の関係を共有する想像をして悶々としていたのである。

兄は、仕事人間で義姉のことを肉体的に可愛がってやるということは皆無のようだった。
尚子が一人っ子なのも、兄の淡白さを物語っているのではないかと勘ぐってしまう。

尚子が高校一年生になった夏休みにフィールドサーベイだとかで五日ほど泊りがけの学校旅行に出かけたことがあった。
俺はそのチャンスを逃すまいと計画を練った。
兄の出張も二日だけ重なるのだ。
「八月の二日と三日に決行だ」と心に決めた。
俺も、七月から八月の間で夏休みが三日だけ自由に採れるので、そこに休みを持っていく。

義姉は四十二歳のしざかりである。
実は、俺は義姉が、オナニーしているのも知っているのだ。
「あの体は男が欲しくてたまらないんだな」
俺は、義姉の生理周期だって知っている。
トイレは家に一つしかないから、どうしても分かってしまうのだ。
当然、尚子のも知っているが。

生理後の二日なら、義姉はしたくってたまらないはずだ。
前のオナニーの現場を覗いたのも生理後だったから。

八月二日になった。
「周さん、お休み取ったんだって?」
「ええ、自由に三日取れるんで、今日と明日」
「中途半端ね。お盆は会社いくの?」
「そうですね、十五日だけ休みますよ」
朝食を二人で取りながらそんな会話をした。
義姉は、胸元の大きく開いたハイビスカスの柄のワンピースを着ていた。
ブラを着けていないのが丸わかりだ。
乳首がその薄い布地を突っ張らせている。
単に無頓着なだけなのだろうけれど。
俺が兄夫婦と同居しているのは、大学生時代以来だからもう二十年近くになる。
下宿のつもりが、地元に就職してしまい、居座ってしまった形だ。

義姉がなりを構わないのも当然といえば当然なのだ。
彼女の裸もちらっとだが見たことはある。
なかなか豊かな体なのである。
四十を超えて、いささかたるんでは来たというが、出るところは出ているという感じであった。
彼女は学生時代、ハンドボール部だったとかで、身長が百七十センチメートルもあると自慢だった。
俺は、そんな義理の姉を眩しく眺めていたものだった。
兄は反対にちんちくりんで、どこが彼女のお気に召したのか、さっぱりわからなかった。

「義姉さん、ブラつけてないでしょ」
俺は、一気に攻めようとジャブを送った。
「えっ」一瞬、驚いた表情を見せたものの
「どこ見てんのよ。あたしなんか見てないではやく彼女を見つけなさいよ」
と軽くあしらわれてしまった。
朝食の後片付けをするふりをして、義姉はさっさと立ち上がってしまう。
そこで引き下がっては計画は頓挫してしまう。
流しに向かっている彼女の横にたち、肩に手を回した。
「ちょ、ちょっと。何すんの」
「義姉さん、俺、前から好きだったんだ」
「ばかなこと」
「だから、今日、休みを取ったんだぜ」
「そんな・・・」
皿を洗う手が止まっている。
汗が首筋を流れている。
俺はその汗の玉を舐めた。
「ひっ」
義姉は身を固くしたのが分かった。
「義姉さん・・・」
「周さん、だめだったら」
「兄さんなんか、してくれないだろ?一人で義姉さんがしてるのも知ってんだぜ」
そういって、ブラをしていない胸に手を延ばした。
「そんなこと・・・」
「いいだろ?尚子もいないんだし」
そういって、乳首をきゅっとつまんだ。
「あっ。いや」
でも義姉は俺に身を任せるように寄りかかってきた。もう落ちたも同然だった。
「あたし、でも・・・」
まだ彼女は躊躇している。
俺は、思い切って口を奪った。
「は・・む」
ほのかに味噌汁の味がした。
義姉の頭を後ろに倒すようにして唇を吸う。首筋から甘い汗の香りが立ち上った。
額はべったりと汗が滲んでいる。
化粧っけのない女の顔がそこにあった。
四十過ぎとはいえ、子供を一人しか産んでいないからか、若々しい感じがした。
「周さん、くるしい・・」
「ごめん、義姉さん。お布団に行く?それともシャワーにする?」
義姉はイヤイヤをして、俺の腕から逃れようとした。
「ほんと、誰にもぜったいに言わないでよ」
「もちろんさ。知られたら俺もここには居られないからね」
「ほんとよ。一回だけだからね」
そんなこと言って、もっとお願いっておねだりするに決まっているのに。
「じゃ、シャワーする」
同意の笑顔を俺に向けて、義姉は風呂場に俺を誘った。
俺はこれから行うであろう、不倫行為に胸が高鳴った。
こんなに簡単に義姉が落ちるとは、思ってもみなかったからだ。
物の本には、女の口説くには排卵期前にせよとあるが、まったくそのとおりだった。

(続くかも・・・)