蝉しぐれが朝から降り注ぐように屋敷の中に響く。
遠く、近く…それはシンフォニーのようだった。
矢嶋皓介は中学生活で初めての夏休みを迎えていた。

「ぼっちゃん…お従妹(いとこ)さまの典子(のりこ)様がお出でになられました」
家政婦の志賀富士子が色白の女の子を従えて、皓介の勉強部屋にやってきた。
「こうちゃん、来たよ」
濡れたような唇で典子が皓介に告げる。
皓介はその美しさに、にわかに返事ができないでいた。
「あ、ああ」
「お勉強?」
「ほ、本を読んでたんだ」
富士子が、
「お二人とも、もう少ししたらお昼にしましょう。典子様はおそうめんでいいかしら?」
「はい。いただきます」
典子が、利発そうに返事をした。

矢嶋典子は、皓介の一つ下の従妹で、彼の叔父の一人娘だった。
学年は下だが、実際は半年ぐらいしか年齢差はないので、二人は長期の休暇になると、この屋敷で双子の兄妹のように過ごすのだった。
去年の夏には、まだ子供っぽかった典子がとても大人びて見えたので、皓介はドギマギしてしまった。
その愛らしいえくぼ、鈴を転がすようなおきゃんな声…
何も変わっていないのに、やっぱりどこか違って見えた。
それは、典子のわずかな胸のふくらみに見て取れた。
「何、読んでたの?」
「じ、十五少年」
机の上には、森田思軒(しけん)の訳でヴェルヌの『十五少年』が伏せてあった。
「夏休みの読書感想の?」「そ、そうさ」「おもしろい?」「まぁね」「子供っぽいのを読むのね」

なんだか、皓介は典子にバカにされたように感じた。
「そ、そんなことないよ」
皓介が、不満そうにしたので、典子があわてて取り繕った。
「ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったの」
典子が、はっきりものを言う娘なのは、前からわかっていたことで、皓介は別に気にもしていなかった。
いつも、会った最初はお互いにぎこちないものだ。


昼のそうめんを食べて、縁側で冷えた西瓜にかぶりつく二人。
アブラゼミが騒がしく合唱している。
典子の西瓜の汁で濡れた頬が、なまめかしかった。
皓介は、じっと見入ってしまう。
富士子がそれを微笑んでみている。
家政婦の富士子は、皓介が典子に惹かれていることを察知していた。
女給上がりのこの女は、男女の仲については「玄人はだし」だった。
皓介の視線が典子の膨らみかけた胸に集中し、また彼女の濡れた唇を、穴のあくほど見つめていることも。
そして、おそらく股間に血液が送り込まれて、立ち上がりつつあるのだろうということまで、富士子は見抜いていたのだ。
「やっぱり、男の子ねぇ」
声には出さないが、富士子は感心していた。
年頃になると、男はちゃんと女に惹かれていくもので、それは本能ともいうべき性質だった。

富士子は、この幼い二人を添い遂げさせてやるのも興味深いことだと、好奇心をかきたてていた。
富士子と皓介が深い仲にあることは、すでに書いた。
淫乱な富士子が、手慰みに少年を誘惑し、思い通りに手名付けたのである。
少年は簡単に熟女の罠にかかり、虜にされてしまっているのだった。

「そうよ、見せつけてやればいいのよ」
富士子は、今晩にでも皓介を誘い、いつもの情事をわざと典子に知れるように行為に及ぼうと考えた。

典子は、皓介の隣の和室を当てがわれた。
いつも典子が泊まりに来ると、この部屋を使うことになっていた。
六畳一間で西向きだけれど、濡れ縁の外は植栽がはびこって、西日が和らげられている。
木々の間から山間(やまあい)に沈む夕日を眺めるのも、一興という部屋だった。
皓介の亡き母が使っていた部屋であったが、皓介も典子も赤ん坊のころの話で、彼らの記憶にはほとんど残っていなかった。
ただ、その証拠のように、古びた鏡台が奥に置いてあるのだった。
物といえばそれだけで、殺風景な部屋である。
しかし、ふすまを隔てて皓介の部屋が繋がっているので、寂しくはないはずだった。

典子の両親は、牛込で医院を開いていた。
典子の父親、つまり皓介の叔父が院長の内科医で、母親がドイツ人の看護婦だった。
だからその大人びた美貌は母親譲りというわけだった。

その夜、富士子は鰻を二人にふるまった。
出入りの川魚商「川喜」に鰻を背開きにして持ってこさせ、富士子が七輪で焼いた。
富士子は肉や、精のつく料理を好み、皓介も影響されて野菜をあまり食べない生活だった。
もとより皓介の父、矢嶋壮一郎が美食家だったから、彼の愛人だった富士子がそういう嗜好になったとしても不思議ではない。
典子は、焼かれる鰻を見て気味悪がったが、一口食べると「おいしい」とご機嫌だった。

「典子さん、お風呂に入っちゃいなさい」
夕飯が終わったのを見計らって、富士子が促した。
「こうちゃんの後でいい。こうちゃん先にどうぞ」
「いいのかい?」
「うん」

屋敷の風呂は美しいタイルがはめ込まれ、関西で五右衛門風呂と呼ばれる鉄の浴槽を埋め込んだ独特の曲線を形作っている。
皓介が裸になって、風呂場に入ると、すぐに湯気を追い出すために浴槽の上の引き戸を開けた。
外は薄暗いが、まだ残照がある。
蛙がわいわいと合唱していた。
ぼんやりとした電球の下で、皓介はかけ湯をし、湯船に身を沈めた。
少しさら湯があふれこぼれた。

湯船の中で、ハーフの従妹の顔を思い浮かべ、皓介は分身の包皮を剥き勃起を促す。
「のりちゃんは、もうできるんだろうか?」
富士子に教えられたような、男女の交わりをあの美しい少女もするんだろうか?と皓介はあらぬ想像を巡らせる。
「胸、大きくなったよな…」
皓介は独り言を言う。
まだ見ぬ従妹の裸体を想像し、隆々とおのれを立たせる。
腰を上げ、水面からその「柱」をのぞかせた。
「だいぶ、毛が生えてきちゃった」
その根元には、産毛ではない剛毛が数本、叢生していたのである。
富士子と睦むほどに、自分の体の変化を感じずにはいられない皓介だった。

ヒノキの椅子に掛けて、花王石鹸を体に塗りたくりながら、時折、勃起を確かめるように指で輪を作ってしごく。
弓のようにしなった分身は、銃口を自分に向けるように元気に硬くなっている。
ふと脱衣場で物音がした。
すりガラス越しに富士子の姿が見えた。どうやら服を脱いで入って来ようとしているらしい。
こんなところを典子に見つかったら…また子ども扱いされそうだ。
「ばぁやとお風呂、入ってんだ」とか思われたくなかった。

「お背中、流そうか?ぼっちゃん」
「え?やだよ。のりちゃんに見られるじゃないか」
皓介は、拒絶した。
「いいじゃない。見られても」
富士子は強引に、浴室に入って来て、乳房もあらわにかけ湯をしだした。
「あらあら、そんなにおっきくして…お嬢さんのこと考えてしてたの?」
「…」皓介は図星だったので何も言えずうつむいた。
富士子は皓介の後ろに回り、その勃起に手を添えてゆっくりとしごく。
「やめてよ」
「いいじゃない」
「戸を閉めてよ」
富士子は風呂場の戸を開けたまま行為に及んでいるのである。
「見せてあげようよ」「え?」
皓介は耳を疑った。こんなところを典子に見られては身の破滅だと思った。
裏腹に、分身は富士子の手の中でさらに硬さを増し、石鹸の滑りに快感をゆだねている。
充血しきって、赤黒く膨れ上がった男根…このままでは射精してしまう。
そう皓介は思った。

典子は、異変を感じていた。
「こうちゃんの背中を流すって、あの人」
富士子がごく自然にそう言って、従兄の入っている風呂に行ってしまったのである。
普段からそういうことをしているのだろうか?典子はいぶかしんだ。
また医者の娘として、親子でもない男女が一緒に風呂に入るという好奇心にかられた。
そっと、風呂場に典子が向かう。
風呂の戸は、なんと開かれていて、二人ともこちらを向いて、女は素っ裸で皓介の背中を流している。
典子は体が固まった。
よく見ると背中を流しているのではなく、富士子は皓介の股間の見慣れぬ器官を手でしごいていた。
それが男性器だとは典子は気づかなかったのだ。
皓介は気持ちよさそうに、目をつむって富士子にゆだねていた。
富士子も皓介をいつくしむように、首筋に唇を這わせている。
典子がのぞいていることなど、二人は全く気付いていないようだった。
が、富士子は典子が柱の陰でのぞき見していることに気付いていた。

「あうっ」
少年が声を上げて体を震わせ、雄の器官から白い液体を噴出させた。
そのとき、富士子が目を開き、典子を見据えた。
典子は窮鼠のように動けなくなっていた。
富士子の勝ち誇ったような笑みが、典子を震撼させた。