秋の夕暮れはすぐに暗うなる。
玄関をそっと開けて、夕飯の支度をしている、お母ちゃんの後ろを、こそこそ歩くと、
「雄太、あんたどこに行ってたんや」 
と、きつい口調で訊かれた。
「西浦さんとこ」 
「このごろ、よう政子さんとこ行くなぁ」 
「うん」 
お母ちゃんには、知られとうないんや。
おばちゃんとのこと…

西浦政子さんは、羽束師(はずかし)から流れてきた、お下げ髪の五十代半ばのおばちゃんや。
淀川の堤防にもたれるように建っている三戸一(さんこいち)の棟割(むねわり)長屋の端(はじ)っこに住んではる。
猫の額ほどの庭に花をたくさん育てていて、いつの季節でも、なんかが咲いてた。

ぼくが一人で壁を相手にキャッチボールをしていたとき、おばちゃんが声をかけてきたんが始まりやった。
「あんた中学生か?」
「うん。二年」
「二年にしたら、ちっさいな」
「ほっといて」
ぼくは、気に障ったので、無視して壁にボールをぶつけては、跳ね返るゴロをキャッチしてた。
「野球部…やないな」
ぼくが「丸坊主」とちゃうから、そんなことを言うのだろう。
当たってる。
野球は好きやけど、部活みたいなしんどいのは嫌やったから「趣味」でボールと戯れているだけやった。
これでもリトルリーグには入っていたんやから。
「貸してみ」
意外にもおばちゃんがボールを貸せと言う。
ぼくはおばちゃんにトスした。
「構えてや」
「投げれるんかいな」
ぼくはなかば、馬鹿にしていた。
「まあ見ててみ」
十メートルほど離れた路地の突き当たりからおばちゃんは振りかぶった。
バスッ
まっすぐな重い球がグラブに収まり、反動でぼくは尻もちをついてしまった。
「すごぉ…」
ぼくは、驚きを隠せなかった。
少年用の軟球やったけど、その衝撃は今も手に残っている。

西浦と表札のかかった家に住んでいて、子供も、旦那さんも「いいひん」と言うてはった。
野球は兄弟が多かったんで、自然に覚えたとかも。
それで、急にぼくとおばちゃんは仲が良うなった。
お母ちゃんも西浦さんのことは八百屋で会って話したりするとかで、
「変ってはるけど、ええ人や」
と、まんざらでもない様子だった。
お母ちゃんよりはずっと、おばちゃんの方が年上なんやけど、おんなじくらいに若う見える。

ぼくが幼稚園ぐらいのときに、空き家やったこの長屋の端に西浦さんは引っ越してきたのやった。
そのときのことはよく覚えてないけど、お母ちゃんに聞いたところでは「着の身着のまま」でやって来たらしい。
何があったんやろ?
それからずっと、ぼくが中学になってしまうまで、西浦さんとは、ろくに話したりしたことがなかった。
だから、あのキャッチボール事件がすべての始まりやったと思う。

学校から帰ると、おばちゃんのところでおやつをよばれたり、テレビを一緒に観たりして、過ごすことが多くなった。
なんか、おばちゃんと話していると楽しいんや。
同級生の女の子とは、よう話したりでけへんのに、おばちゃんとやったらなんぼでも話せるねん。
テレビでは再放送のドラマとかをよく観ていた。
おばちゃんはめっちゃテレビが好きらしい。
こないだ、男の人と女の人のラブシーンがあって、ぼくはドキドキして観ていた。
おばちゃんも口をポカンと開けて見入っている。
裸で、ベッドの中で口を吸い合ってるんや。
おっぱいも見えそうで、そこはちゃんと隠していた。
早よ、終わってほしかった。
「すごいな…」
先に口を開いたのはおばちゃんの方やった。
「う、うん」
「あんたもこんなん見たら、おちんこ立ってくんのとちゃう?」
いきなり、どぎついことをおばちゃんの口から聞いた。
「何、言うねんな」
「はずかしがらんでもええがな。あんたも、もう大人の仲間入りやろ?」
「…」
「おちんこ、毛ぇ生えてんちゃうの?」
にたぁと笑ったおばちゃんの目が怖い。
「キスしよか?」
あろうことか、おばちゃんは本気ともつかない誘いをするのだ。
「そんなぁ…」
あいまいな返事をしていると、
「こんな、おばあちゃんとはいややな。やっぱし」
そう言ってうつむいた。
「ううん、おばちゃんとしたい!」
なんでそんなことを言うたのか、今もってわからないが、なんかおばちゃんが可哀そうに思えたのだ。
「ほんと?」
きらっとおばちゃんの目が光って、うれしそうな表情になった。
なんか、可愛いと思えた。
「どうしたらいい?」
「こっちおいで」
ぼくは言われたように、おばちゃんの隣に移った。
ぼくの顔がねじられ、おばちゃんの顔が迫ってくる。
おばちゃんのくちびるが、ぼくのくちびるに押し付けられ、にゅるっと舌が入ってきた。
おばちゃんは、さっき、あられを食べていたのでその風味がぼくの口にも広がる。
あの俳優さんのように口と口が重なって、びとびとになってきた。
それに…おばちゃんの手がぼくのチンポをズボンの上からさすってくる。
そんなことされたら、おっきなるやん…
案の定、チンポはカッチカチに立ってしまった。
このままやとヤバい、アレが出てまう…
ぼくはもう精通を経験していた。
「センズリ」もたまにしてる。
そういうものは悪友からなんぼでも知識が入ってくる年頃なんや。
だから「性交」とか「セックス」とかいうのもやってみたいと思っていた。

このまま、おばちゃんやったらさせてくれるかも…
そう思いながら、おばちゃんに口を吸われながら、身を任せていた。
「あんた、もう出るんやろ?え?」
アレのことをおばちゃんは訊いているのだ。
「あ、ああ」
「自分でしてんの?」
「たまに」
「ませてんなぁ。この頃の子ぉは」
ニタニタしながら、いたずらっ子のようにおばちゃんがぼくを見る。
「こんなに硬うしてから。あたしもたまらんわ。脱いでみ」
「なにすんの?」
「なにて、ええことしたるがな」
ぼくはうれしくなって、さっさとズボンとパンツを脱いだ。
立ったチンポを見られるのは恥ずかしかったけれど、それよりも期待が勝(まさ)った。
「うわっ、大きいやん」
目を丸くするおばちゃん。
「あたしも脱ぐわな」
ぼくの目の前でブラウスのボタンをはずしだした。
おばちゃんがうつむくと、おっぱいが重そうに垂れてブラジャーがそれを懸命に支えているという感じだった。
部屋着のゆったりした、細かい花柄の入ったズボンも脱いでベージュのパンツ姿になった。
「ちょっと待ってや」
そういうと、風呂場に入ってしまった。
この古い長屋でもガス風呂がしつらえてあるのだ。
どうやら建て増ししてあるらしい。

ちゃぷちゃぷと水の音がして、しばらくするとバスタオルをまとったおばちゃんが戻って来た。
何をしてきたんだろう?
下着をまったく脱いでしまったようであることはわかった。
「なんやのん?上も脱いでしまいぃな」
「あ、そうやね」
ぼくはシャツを脱いで、貧弱な裸体をさらした。
「細いなぁ、食べてる?」
たしかに、がりがりだった。
お父ちゃんにも「針金みたいなやっちゃな」と馬鹿にされていたくらいだった。
弟の武史(たけし)はぽっちゃりしているので、余計に比べられる。
その針金細工のような体から、チンポだけにょっきりとしっかり伸びあがっていた。
「先、剥けへんの?」
半分、皮がかぶっていることを指摘された。
「剥けるよ、ほら」
ぼくはちゃんと指で皮を下げて露出させた。
「ほう、立派やねぇ。もう大人やね、毛ぇも生えてから」
おばちゃんが握ってくる。
やばかった。
どきどきしてくる。
いつの間にかテレビは消されて、遠くで子供らの喧騒が聞こえているいつもの夕方だった。

ぼくがするように、おばちゃんが手のひらを丸めてしごくからたまらない。
他人(ひと)の手でチンポを触られることがこんなにときめいて、心地よいものだとは…
ぼくは、だんだん前かがみになって射精しそうになるのを耐えていた。
おばちゃんの白髪交じりの頭に顔をつけて、その香りが鼻腔をくすぐると、もうだめだった。
「あひっ」
びゃーっとおばちゃんの顔に向かって精液が飛び出してしまった。
おばちゃんは上手に頭をよけて、直撃を防いだけれど、二度、三度と射出が止まらないので、あご付近に飛び散らせてしまった。
「うわぁ、すっごいやん、こんなに…」
片目をつむりながら、ひきつった笑顔でおばちゃんが声を上げる。
「ご、ごめんなさい」
「ええのよ、気にせんといて。拭いたらしまいやさかい」
体に巻いたバスタオルで始末した。
ぼくのチンポはだらしなく垂れ下がり、小さくなってしまった。
「もうあかんかな」
おばちゃんが、ぼくに訊く。
「いっつも、すぐには回復せえへんねん。もうちょっと待って」
「ええけど、その間、おばちゃんも触ってくれへん?もう、あんたの見て、たまらんねん」
そう、鼻にかかったような声でぼくにささやくのだ。
おばちゃんはバスタオルを取り去りシーツのように畳の上に拡げ、そこにあおむけになった。
初めて見るおばちゃんの裸体は、いつか盗み見たヌード写真のようだった。
大きなおっぱいが目に飛び込む。
毛におおわれた、牡蠣(かき)のむき身のような部分が西陽(にしび)を浴びて妖しく光っていた。
窓の外は土手の草深い法面(のりめん)が視界を遮るが、土手の上から覗かれたら、この恥ずべき行為は丸見えだった。
「おばちゃん、土手から見えるわ」
「レースのカーテンを引いてあるから見えへんて」
そういうものらしい…

ぼくは指をそのアケビのような部分に這わせた。
干物のような匂いが立ち上ってくる。
「洗(あろ)てんけど、匂うか?」
「ちょっとな」
「いややったらええよ」
「ううん、かまへん」
「ふふふ」
さっき風呂場で洗ったらしい。謎が解けた。
とろろ汁のようなぬめりで、指先がかぶれるんじゃないかと思うような気がした。
「ああん、いい、上手え…」
つぶやくようによがり声をあげるおばちゃん。
ぼくのテクニックで、大人の女が喜んでいる…
ぼくはまたチンポに力がみなぎってくるのを覚えた。
ぐいぐいと立ち上がってくる。
ここに突き立てろとばかりに、暗い穴がぽっかりと開いていた。
どうみても、ここが性交の場所だ。
糸を引く液体は、どうやらその穴から流れ出してくるようだった。
「おばちゃん、ぼく立ってきた…」
「ほうか、入れてみるか?」
「ええの?」
「わかるか?入れるとこ」
「今、指、突っ込んでるとこやろ?」
「ああ」しゃがれた声でおばちゃんが答えた。
ぼくは膝立ちで、おばちゃんに向かい、その部分に先っぽを押し付けた。
ずぶずぶとぼくのチンポはおばちゃんに呑み込まれ、全部が収まってしまい、ぼくはおばちゃんに抱きついた。
「ああーっ、来てるわぁ、久しぶりやぁ」
目をつむっておばちゃんが幸せそうな表情を浮かべている。
ぼくは目の前の大きなおっぱいにむしゃぶりついた。
自然とそれを口にしたのは、幼児体験からだろうか?

「いやぁん、いい、あんた、上手やわ、ほんまに…」
きゅうきゅうとおばちゃんの胎内がぼくを搾る。
腰をへこへこ動かして、出し入れすると最高に気持ちよかった。
こうやって誰よりも早く、ぼくは童貞を捨てたのだった。

二度目の射精は、じきに訪れた。
おばちゃんにしがみついて、震えながらぼくは果てた。
おばちゃんが優しく髪をなで続けてくれ、ぼくが離れるまでじっとしてくれていた。

それからというもの、ほぼ毎日、学校から帰ると、おばちゃんの家に通った。
おばちゃんは、いつも快く、ぼくを迎えてくれ、いろんなつながり方を教えてくれた。
ある日、どうしても気になったので訊いてみた。
「あの、いっつも中で出してるけど、妊娠とか大丈夫なん?」
そうすると、けらけらとおばちゃんは笑って、
「あのな、あたし、もうアレがないねん。わかる?生理がないの」
「どうして?病気?」
「あほな、もう、おばあちゃんやからや。ふふふ」
「孫がいるってこと?」
「何言うてんねんな。あはは。そやなくって、年寄りになったってことや」
そうだった。
おばちゃんは結婚もしていず、子供もいないのに、お孫さんがいるわけがないのだった。
女の人は、歳をとると子供を産めない体になるそうだ。
だから生理もなくなって、セックスしても妊娠の心配はないのだと。
「楽やでぇ。ほんであんたにしてもらえるし、あたしは幸せや」
そう、ほのぼのとおばちゃんは笑うのだった。

おばちゃんとは高校を卒業するまでセックスさせてもらった。
最後のころは「もう、しんどいわ」と情事の後に言うことが多くなった。
あまり、おばちゃんとは「本番」をしなくなり、手コキやフェラでぼくを満足させてくれるようになった。
ぼくが地元の住設会社に就職したころだったか、病気がちになり、ついに遠縁の人を頼って引っ越してしまった。

そんなぼくも白髪が目立ち、結婚もできず、老いた母の介護をする毎日になった。
政子おばちゃんは、いまごろどうしているのだろうか?