夫婦も二十年も経てば、肉の関係なんてあらしません。
今日お話しする小山内忠雄・良子夫妻も結婚して二十六年になります。
喧嘩もするが、まあ仲の良い夫婦です。
息子が一人いますが、昨年、結婚して神戸のほうに新居を構えて出て行ってしまい、夫婦が新婚からずっと住んでいる古家に二人きりという生活が続いています。
忠雄は趣味の少ない男で、それでも釣りだけはずっと続けていました。
休みになると、竿を取り出して磨く毎日。
良子もあきれて相手にしません。
忠雄の読む本ときたら釣りの穴場や仕掛けのものばかりです。
彼の行くところ、行くところにそういた単行本やら雑誌が散らかって、良子は片付けながら「お父ちゃん、もう、勘弁してぇな」と愚痴をこぼします。

二人きりの生活になったあるとき、忠雄は新婚当初の甘い生活を思い出していました。
「なあ、母ちゃん」
お茶をいれながら、良子が、
「なんえ?」
「最近、してへんな」
「なにをよ」
「あれやがな。そのいちゃいちゃ…」
「なにをあほなことを」
良子が下を向いてほほを赤らめます。
五十過ぎの良子は二十五年前に息子の晃(あきら)を生んだだけで、若いころと変わらない体型を保っていました。
忠雄がそばによって、良子の唇を奪おうとします。
「ちょっと、あんた…」
「ええやんけ。ごぶさたや。できるやろ?まだ」
「まだ、昼の日中(ひなか)ですやん。誰か来たらどうすんの」
「だれもくるかい。こんな日曜に」
というていたら、息子夫婦が、まんの悪いことに訪ねてきまして、その日はお預け…
忠雄は息子が帰るまでぶっきらぼうでした。

「お父ちゃん、どっか悪いんとちゃうか?機嫌悪そうや」と晃が玄関口で母親にぼそっと言います。
「ええの、ええの。いつものことやから」
と良子は息子夫婦の帰り際に言い訳しました。

それから数日後、忠雄が有休を勝手にとって、会社を休んだんです。
「母ちゃん、今日こそするで」
台所に立つ良子の後ろから抱きつく忠雄でした。
「いやや、お父ちゃん。ご近所に丸聞こえですから」
「聞こえるかい。隣のおばはんは耳悪いねん」
「そやかて…往来でだれが聞いてるかわからしまへん」
「ほなら、ホテルいこ。モーテル」
今ではラブホテルというのが通りがいいでしょうか。
忠雄の若い時は、モーテルと一般に呼ばれていました。
忠雄の軽トラに良子は乗せられて郊外のさびれたモーテルにしけこみました。
忠雄も若いころは、二人してよくモーテルを利用したものです。

「いややわ。お父ちゃん、こんなとこ誰かに見られたら」
「気にすんなて。誰も見てへん」
駐車場から、フロントに向かい、部屋を選びます。
幸いだれにも会いませんでした。
エレベータで五階まであがり、端っこのランプが点滅している部屋がそのようです。
ドアを開け、スリッパに履き替えて…自動支払機が大きな声でなんか言うてます。
「いや、びっくりしたわぁ。なんやのん」
「あ、今はこれで支払いをすますねん」
「へええ」
良子の若いころのホテルは、カウンター越しに手が入る隙間があってそこで支払ったのを思い出しました。
「便利なんやね」
「おい、母ちゃん風呂入れてんか」
「はいはい」
バスルームに消える良子。
「いやぁ、広いおふろ。これだけでも値打ちやねぇ」
嫌がっていた良子も、もう、温泉宿にでも来たみたいにはしゃいでいます。
「そやけど、あんたそのカバンなんやの?」
忠雄が車からずっと下げているスポーツバッグを指して良子が訊きます。
「これけ?おたのしみや」
「いやらし。変なもん入ってんのとちゃう?」
「入ってるでぇ。へへへ」
そういいながら、忠雄はズボンを脱ぎ始めています。
「おまえも脱げ」
「いややわぁ」
「ここまで来て、いややわもないやろ。はよ脱ぎ」
「わかりました」
すっぱだかの中年、いや壮年夫婦がベッドに座ります。
「ええけ?」
そう言って忠雄が良子の赤い口紅の唇を吸います。
あむ…
忠雄の手が、張り出した良子の乳房をまさぐります。
「ああん、あんたぁ」
「よしこぉ」
しわを刻んだ首筋を忠雄の舌がはいずりまわり、良子がびくっと反応します。
乳輪の小さい良子の乳房。
忠雄の短髪のゴマ塩頭が押し付けられます。
赤子のように、忠雄が乳房を吸います。
「ああ、お父ちゃん、お父ちゃん」
「よしこ、よしこっ!」
干物のようなにおいが良子の陰部から立ちのぼり、釣り好きの忠雄はますます興奮してそこに顔を持っていくのでした。
「おふっ。こら、たまらんわ」
「お父ちゃん、やめて、汚いから」
「ええんや。これがええんや」
べちょべちょべちょ…
股を割られて、良子はその部分を、大きく開かれて分厚い忠雄の舌で舐め拡げられていたのです。
「ああっ、いやっ、いっちゃう」
「もういくんけ?早いな」
「あかんて、お父ちゃん」
びくびくびく…
良子の両腿の内側がけいれんし、良子は白目を剥いてのけぞりました。
「こら、大変や」
「…」
「おい、おまえ、だいじょうぶけ?おい」
「あ~あ、飛んじゃったわ」
「すごいな」
「もう…お父ちゃんたら…」
うるんだ目で、良子がはにかみます。
「風呂がでけたようや。入ろ」
「はい」

忠雄はカラスの行水程度に体にかけ湯して、湯船にドボンと入ってしまいますが、良子はしとやかにシャワーで大事な部分を念入りに洗ってからつま先より湯船に入ります。
「あ~気持ちええわぁ」
「ふたりでゆったりと湯船に浸かるやなんて何年ぶりやろ」
「そうねぇ、芦原(あわら)温泉にいったとき以来やないかしら」
「おまえは、覚えてるんけ」
「そら、覚えてますがな。あれが新婚旅行でしたから」
桜色に肌を染めた良子が妖艶に見え、忠雄はまた抱きしめました。
「よしこ、おれは、おまえと一緒になってよかった」
「何を言うてますのん。あん…あたしかて、おんなじです」
「よしこ」
「ただおさん」
そう、新婚時代は「よしこ、ただお」と名前で呼んでいたはずでした。いつの間にやら「お父ちゃん、母ちゃん」になってしまい、セックスもしなくなった。
忠雄はもう我慢できないというように勃起したペニスを良子に握らせます。
「ああ、硬いわぁ。まだまだいけますね。ただおさん」
「あったりまえやんけ。お前のためなら。お前が、まだまだ若々しいから、おれもこんな硬くなるんや」
「うれしいこと言うてくれはる」
「乗れや」
「え?」
湯船の中で上になって結合しようというのです。
良子は夫をまたぐようにして、その硬い、雄々しい猛りを自分に導きました。
長いこと、そこに物を入れたことのない、処女のような場所です。
ただ今日は、濡れていました。
良子にもまだ女性の喜びを感じる機能が残されていたのです。
「あっ」
「痛いけ?」
「少し」
それでもぐっと、忠雄を胎内に滑り込ませ、良子は背筋を伸ばして奥まで行きつかせます。
「はぁ」
「入ったな」
「ええ」
確かめるように忠雄は腰を突き上げます。
「うっ」
良子が歯を食いしばって突きに耐えます。
何十年ぶりの挿入に、良子の硬くなった胎内がきしむのです。
忠雄の硬さが芯のように良子を支えます。
だんだんにうるおい、良子の声も甘やかに変化します。
「あん、あん、あん」
「ええか、ええのんか」
「いい、すっごく」
湯船は激しく波立ち、二人は絡み合います。
忠雄の性器を良子の膣は絞るように力を加えます。
「おお、締まるわい」
「やん、ただおさんっ」
乳房は交互に吸われ、赤くなっています。

 忠雄は風呂場では出さずに、ベッドに良子をいざないました。
バスタオルを身にまとった夫婦は、冷たい飲み物でのどを潤し、上気した表情で見つめあいます。
それは新婚のあの新鮮さを取り戻したかのよう。
忠雄がおもむろに持ってきたバッグを開けます。
取り出したのは電動こけしでした。
目を丸くして良子が見入っています。
「こんなもん、どうしたん」
「通販で買うた」
「いやらしわぁ、もう」
「どや、おれのとどっこいやろ」
自分の勃起に当てて比べます。
「知らんわ」
「そこに寝てみ」
良子がしぶしぶ仰向けにベッドに寝ころびます。 
鈍いモーターの音が響いて、良子の股間にあてがわれます。
「いや。こそばい(くすぐったい)」
「ほらほーら」
電動コケシが良子の肉ひだをかきわけ、忠雄によって膣にねじ込まれます。
少し入れては、濡れ具合を確かめるように、忠雄が先端を見て、またおもむろに差し込むのでした。
「いやややや。ちゃっとぉ、あかん、あかんて。気持ち良すぎ」
「ええやろ。この振動」
「おかしなるぅ!」
「なったらええがな。ほら、もっと」
ぐいぐい、コケシが押し込まれ、中でうねります。
良子はブリッジするように腰を上げ、反り返り、向こう側に倒れました。
その時、忠雄の手から コケシは離れ、良子にささったまま、ひとりでに動いています。
良子があわてて、手を添えて外れないように、自分で支えています。
忠雄が我慢できず、良子にかぶさって、コケシを奪い取って引き抜きました。
「いやぁん」
「俺のほうがええやろ」
そういうが早いか、正常位で良子を組み敷いたのです。
「ああ、あんたのが一番やぁ」
「そやろ、ずっぽり入っとるで」
「ええわぁ、硬いわぁ。おっきいわぁ」
「よしこぉ」
「あんたぁ」
良子の膝に手をついて、忠雄は腰を入れます。 
泡を嚙んだ結合部は、ぬちぬちと淫靡な音を奏でます。
赤黒い陰唇に夫を挟み込み、搾り取ろうと膣が締まります。
「五十のござ破り」とはよく言ったもので、生理が途絶えた分、解き放たれたような燃え方をする良子でした。
後背位にラーゲ(体位)を変化させた二人は、汗みどろになって行為に没頭していました。
「おおっ!ええぞ、中に出したるでぇ」
「あんたぁ、来てえ」
 背後から、良子のしっかりとした乳房をわしづかみながら、忠雄が太マラを何度も良子に突き刺しました。
良子と結婚したことを、この上ない喜びと感じながら。
それは良子とて同じ気持ちでした。
 「あんたぁ!」
「よしこぉ」
大きな快感のうねりが二人を襲い、深い場所で忠雄がはじけました。
どっ…
重なり合ってベッドの上で動かなくなる夫婦。
まだつながったままです。
おもちゃが、ベッドから転げ落ちて、ずっと床でむなしい音を立て続けていたのでした。 

(おしまい)