モノづくり系の中心にあるのが機械工なのかもしれない。
FA(ファクトリーオートメーション)機器の組み立てを請け負っている中小零細企業は京都府下には多いと聞く。
あたしが不定期に勤めている会社もそうだ。
一週間に三日ほど行っては、旦那の通院だの、調子がすぐれないから施設を休むだのと言っては会社を休むので、なかなかまとまった仕事ができないけれど。
やっつけ仕事ばかりやっていると、どこか不具合が出てしまう。
永らく一緒にやってた中村君が別の仕事をやりたいと辞めていき、かわりに「おねえ」のしずちゃんが入社してきた。
社長の親戚筋の子で、もちろん男の子だけれど、ボーイッシュな女の子のような、最近は多いのかもしれないが、そういう子である。
年のころは二十代後半ってとこか?
彼(?)の父親が自動車整備工場の社長さんで、そこで手伝っていたくらいだから、工具の扱いはお手の物だった。
ただ昨今のハイブリッドカーや電気自動車の台頭で、昔ながらの自動車整備がやっていきにくくなって、廃業されたらしい。
そこでしずちゃんは、働き口を伯父のこの会社に求めてきたのだった。
今年の夏から、しずちゃんとあたしはコンビで小さな装置などを組み上げてきた。
「おねえ」であろうが「おなべ」であろうが「おかま」であろうが、機械工は実力世界であり、手が遅ければやっていけない。
図面が読めて、仮止め、組付け、平行出し、手直しなどなど一人の職人に任される仕事が多い。
あたしなどは、エア配管、ハーネス加工を中心に、小さな加工品を顕微鏡を使って自作する仕事を請け負っている。
ウレタンチューブを切って、ケーブルベアにその束をはめ込んで、マニホールドにつなげてなんぞを二人でやっているのだ。
もともと化学者なので接着剤やメッキ、材料の知識はあるけれど、機械要素の選定やら、調整になるとどうも甘い。
そこが、しずちゃんはしっかりしていて芯出しも丁寧で、軸受の取り付けなんかうまいもんだった。
また圧着端子の加工もすぐ覚えてくれた。
うちの会社では、しずちゃんはそつなく仕事をこなすだろうけれど、派遣された場合、その現場で荒くれたちと上手くやっていけるかどうか、心配だった。
社長はしばらくはしずちゃんにそういう現場に行かせないだろうけど、そのうちわがままも言ってられなくなるだろうし。
おトイレとか…
しずちゃんは女子トイレを使いたいらしいのだ。
「それはちょっと…」
あたしは構わないが、ほかの女子社員の手前もある。
「立ってできないの?」
「できるけど…」
と歯切れが悪い。
「大のほうでやんなよ。男子便所にもあるやろ?」
「おっちゃんらが使ってて、汚いもん」
「そんなら、掃除しいな」
「…」
もじもじしてやがる。
こういった子は難しい。
LGBTとかいう人種なのかもしれないが、デリケートな人なのだった。

あたしは古い人間で、女は男を立てなあかんとか、あんまりでしゃばって男に恥をかかせたらあかんとかそういう女なんだけれど、自身が女であることで、それを利用もしてきたずるい人間でもある。
セクハラと最近うるさく取り沙汰されている事例でも、あたしにされたって笑い飛ばすくらいの図太さも持ち合わせているおばはんである。
「やられたら、言い返す」くらいの気概がないと男社会ではうまく渡れないからだ。
「下ネタ上等」の男社会だから、気の持ちようでうまくやっていけるのである。
みんなそんなに悪人はいない。
職場は、口の悪いのはいても、仕事は一流だし、尊敬もしている。
そういう先輩があたしのお尻にタッチしたりするくらい、かまやしない。
うるおいっていうものだわ。
やれ「セクハラだ」「パワハラだ」と現場をギスギスさせるのは保守的な職場ではよろしくないのである。
空気を読めっての。
女の役割ってものは昔からあるのよ。
「お茶くみ」だって、男の社員が客にお茶をサービスするのと、女が従来通りするのとでは印象が違うでしょう?
こういったことは「文化」なのであり、一朝一夕で変えてしまえるものではないの。
相手がどう受け取るかということまで踏み込まないと、「得手勝手」な物言いになりかねない。
あたしは、だから男女共同参画社会には懐疑的です。
持ちつ、持たれつ、支え合いで世の中回ってるのよ。
女だから偉いわけでなく、男だからすぐれているわけではない。
その前に血の通った人間であるべきだ。
男女どっちかに肩入れすると、どっちかがあおりを食って、逆差別になるのよ。

だからとは言わないけれど、しずちゃんのような存在は大事なような気がする。
男でも女でもない存在。
でも社会には必要で、仕事ができる。
「みんなちがってみんないい」とは金子みすゞの言葉だった。