映画『ラストUボート』という洋画がYoutubeにアップされていたので鑑賞した。
日本人俳優小林薫らが出演していて、おそらくセリフは英語だと思われるが、本人が日本語吹き替えをしているようだ。

「潜水艦もの」として『眼下の敵』や『Uボート』に比肩する作品とは、正直思えないが、この話が半分は事実であることを、私は吉村昭の『深海の使者』を読んで知っていた。
いわゆる遣独交流作戦である。
山下奉文(ともゆき)陸軍大将らが太平洋戦争前だったか日本の若い士官や技術陣をドイツに連れて行って科学技術の進歩が戦争を有利に運ぶのだと肌で感じさせたのが始まりで、陸軍は三国軍事同盟の目的の一つにドイツの先進技術の導入をもくろんでいた。
ところで、陸軍は海軍のように潜水艦を使うことができなかったから、ドイツから空路を開拓して日本と技術交流を続けようとしたものの、第二次世界大戦に日本が巻き込まれると、枢軸国として連合国の領空を侵犯することができず、ことにドイツと敵対していたソ連とは不可侵条約を結んでいた日本として、中央アジアのソ連領を通過することはできなかったし、東條英機首相がもっとも日ソ間の争いを嫌った。
そのせいで、陸軍よりも海軍が積極的に遣独潜水艦派遣作戦を遂行したことは当然の成り行きであり、陸軍も海軍に期待していた、
日本は潜水艦建造技術について独自のものを持っていたが、ドイツのUボートのような軽快性を持っておらず、どちらかというと日本のそれは巨大な潜水艦であった。
イ-400号級の潜水艦は現在でも世界最大級だと言われている。
実は、潜水艦のような隠密行動をする艦船においては軽量なほうが都合がいいのである。
遠洋を無補給で航海するというのは、現在の原子力潜水艦ならいざ知らず、当時のディーゼル機関と電動機の併用機関では、無補給化するなら巨大化するしかなかったようだ。
潜水艦の居住性は船よりは狭く、限られた空間であるのに、乗組員が100人を超える大所帯では無理があった。
Uボートではせいぜい50人程度の人員が搭乗していたに過ぎなかった。

太平洋戦争末期、日本は逆転の一発を狙って、ドイツからジェット戦闘機やロケット機の設計図や資料などをUボートに同乗させてもらった武官が持ち帰る重要な任務があった。
この映画ではその積み荷の中に「ウラン燃料」が含まれていた(これはフィクションだと思う)。
しかし、この作戦でまったく核兵器の授受がなかったのか?というとあったかもしれないのだ。
ハイゼンベルクはナチスに核兵器の開発をさせられるが、「今の技術では無理だ」と言ってのらりくらりと開発を遅らせていたという。
彼は、やろうと思えばできたはずなのだが、その結果が人類に多大な悲劇を及ぼすことを推測し、ナチスを瞞着したのだろう。
とはいえ、ナチスはウラン濃縮の成功をしていたはずである。
だから、日本軍にその成果を託した可能性はないとはいえない。

事件はU-234号で起きた。
日本海軍の友永英夫技術中佐と庄司元三技術中佐の二人が機密書類やウラン燃料を積み込んで同乗していた。
このU-234号は日本を目指して、大西洋を南下し、喜望峰を回ってインド洋に出るつもりだった。
しかし、その航海中にナチスドイツは降参してしまった。
潜水艦の中は「白旗を上げて、国際法に則って投降する」という派と、日本人たちとの間で溝ができる。
日本はまだ降参していないから戦争中なのだが、ドイツ人にとってはもはや無駄な争いをして命を落とすより早く国に帰って家族に会いたいと思う気持ちが強い。
そして日本人にとって、ここで潜水艦から降ろされたら、もはや任務を遂行できず、軍人として全うできないから情けをくれと艦長に頼むのだった。
そこで一つの事件が起こる。
イギリスの駆逐艦「リーヴス」に追われて、投降を要求されるのだが、U-234が白旗を掲揚しているのにもかかわらず体当たりしてこようとするのだ。
Uボート艦内では交戦派が艦長を監禁して「リーヴス」に向けて二発の魚雷を発射し、撃沈してしまうのである。
これは国際法違反であり、銃殺刑に処されるほどの重罪だった。
艦長はすべての責任を負うべく決心をし、しかし、この広い海である。だれがやったのかわかりはしないと、ウソの位置情報を打電して偽装工作をした。
中には、裁判を恐れて中立国アルゼンチンに亡命しようという輩も出てくる始末だった。
一方で、日本兵二人は、Uボートの艦長に約束は守ってほしいと懇願し、日本に向かってくれと再三願ったが聞き入れられなかった。
彼らは監視下に置かれ、軟禁される。
二人の日本兵はもはやこれまでと、積み荷が連合国にわたるのを極度に恐れ、機密書類の鞄とウラン燃料を海洋投棄させてくれと申し出る。
艦長はやむを得ず許可した。
そのあと、二人の日本兵はルミナールという錠剤の睡眠薬を大量に服用して自殺した。
軍医たちはなんとか命を取り留めさせようとするが、「死なせてくれ」という武士の情けに負けて解毒することを断念する。
二人はドイツ兵に敬意をもって水葬にふされた…
U-234はアメリカ海軍の駆逐艦「サットン」に投降し、全員捕虜となった。

もっと詳しくは、吉村昭の前掲書を参照願いたい。

英国駆逐艦「リーヴス」への雷撃や「ウラン燃料」の密輸については証拠がなく、吉村氏も記述していない。

映画としては、なかなか面白かった。
そして戦争のむずかしさを感じた映画だった。
同盟国が先に降伏した時、同船していた日本兵の苦悩と絶望はいかほどだったろう?
密室でドイツ人も日本人も微妙な立場に置かれたことが本当にあったのである。

戦争はしてはならない。
改めてそう思った次第である。