トランプ大統領の強硬な保護主義によって世界に波紋が広がっている。
もともと彼が言っていたことを実行に移そうということであり、手始めに鉄鋼とアルミニウムの輸入に対し高い関税をかけるというのだ。
市場はすぐに反応して株価の暴落を招いてしまった。

アメリカ国内の鉄鋼、アルミ産業を保護し、そこに携わる労働者を確保し、雇用を安定化させようという公約の体現だ。
しかし諸外国は面白くない。
EUは対抗処置を講ずる様子である。
中国も「やるなら相応の処置を覚悟せよ」と自信満々だ。
日本の世耕経済産業大臣が「日本は同盟国なんで、きっとゴマメにしてくれる」なんて言うもんだからアメリカからは「例外はない」と釘をさされた。(バカめ)

私には、この世情の動きがかつての「ウィーン体制」を思い起こさせた。
高校の世界史なんかでは重要論点なので、覚えている方も多いかもしれない。
フランス革命が発端となっていたと記憶しているが、その後のナポレオン戦争でヨーロッパの秩序が千々に乱れた。
ナポレオン・ボナパルトのフランス軍とイギリス・オーストリア・プロシア・ロシアの連合軍が戦ったのが「ナポレオン戦争」である。
1815年ワーテルローの戦いでナポレオン軍は敗北し、ナポレオンは失脚しエルバ島に流罪となる。
しかし、ナポレオンは復活をかけて島を脱出するのだ。
1814年からウィーンのシェーンブルン宮殿で対仏対策とヨーロッパ和平を目的として、オーストリアを議長国とした会議がもたれた。
この会議は難航し「会議は踊る、されど進まず」と揶揄された。
しかし、ナポレオンのエルバ島脱出の報を聞いた各国首脳は即座に妥協し団結して「ウィーン議定書」を交わし、会議を終えた。
この「ウィーン議定書」が打ち出している秩序を「ウィーン体制」というのである。
いわば、今のEUのようなものだが時代が時代なので中身は不可侵と軍事同盟である。
もともと足並みのそろわない国同士の体制なので、その後のギリシア独立戦争、フランス七月革命などほころびが目立ってきて、当時は産業革命によっても市民の生活が激変していたおりもおり、マルクス主義も起こり始め、1848年についに「ウィーン体制」が崩壊してしまう。
この崩壊の原因は、今のトランプ大統領と同じで各国が自国の保護主義に走ったからである。
これを「1848年革命」とか「諸国民の春」などと呼ばれている。
ヨーロッパのあちこちで紛争が勃発し、イタリーでは民族解放の「統一運動」による武装蜂起、フランスでは「二月革命」の後、ルイ・ナポレオン(のちの三世)が大統領となり、オーストリアでも武装蜂起(ウィーン三月革命)があり、ラデツキー軍がイタリーの動乱を鎮圧、この時に送られた行進曲がヨハンシュトラウス一世の「ラデツキー行進曲」であった。
ウィーンの革命に連動してプロシアのベルリンでも三月に革命が起こった。
ハンガリーでもフランス二月革命の影響から革命が起こったし、ボヘミア王国ではプラハ包囲でチェコによる革命が鎮圧された。
このように革命の同時多発によってヨーロッパの秩序がばらばらにみだれてしまい、近くはナイチンゲールが活躍したクリミア戦争に発展し、次いで普墺戦争、普仏戦争、ロシア革命、さらには第一次世界大戦の遠因にまでになった。
「1848革命:ウィーン体制崩壊」は、世界史上極めて重要なターニングポイントである。

各国の主張が、自国本位になってしまい、同盟関係や約束事が簡単に反故にされるのは、今に始まったことではないようだ。
TPP離脱、パリ協定(気候変動)離脱というトランプ大統領の保護主義発動が今後、どういう世界秩序を生み出すのか、歴史が示してくれるだろうか?