人類の発展のためには、市場の「開放性」と「平等性」が重要だと、ビル・エモット氏は指摘する。
彼は気鋭のイギリス人ジャーナリストだ。

かつて、あんなにも、もてはやされていた「グローバリズム」が否定されている。
それも自由が信条のアメリカが率先して、反グローバリズムを叫んでいるではないか。

反グローバリズムは言い方を変えれば「閉鎖性」である。
この言葉は、いろいろに言われる。
たとえば「超保守」とか「排外主義」とか、「ポピュリズム(大衆迎合主義)」とか…

民主主義は、非常にもろい。
簡単に、ナチのような独裁政権に牛耳られるのだから。
それは忘れたころに、気が付けば周りがそうなっている。
まことに危ないことだ。

市場の開放性が良質な競争を産み、私たちの産業や生活を発展向上させたのは論を待たない。
しかしそれだけでは、富の偏在が生まれ、不平等が生じ、不満が高まって強権政治がはびこるスキを与える。
そういう底辺の不満を扇動して、さまざまなイデオロギーの「主義者」が台頭するのだ。

だからエモット氏は「平等性」を人類の発展の車の両輪の一つに挙げる。
「平等性」が担保されなければ、人々のやる気がそがれるというのだ。
「どうせやっても無駄だ」という諦観。
「平等性」が担保されない要因は、財政の悪化だと氏は指摘する。
社会保障の財源が確保されないからセーフティーネットを張れないのだ。
じゃあ、財政難が生じているのはなぜなのか?
これは国家の経済政策がまずいからだ。
どの国も、政策が後手だし、場当たり的だ。
目先の利益追求にやっきになり、将来の利益を先食いする。
環境問題解決への投資も、手当もアメリカなどは「今の幸せを奪う」と及び腰だ。
こうなると市場は活性化せず、イノベーションも生まれないとエモット氏は警鐘を鳴らす。
よく共産主義はイノベーションを生まず、健全な競争がないから滅びたと言われますが、大企業のロビー活動と政府で政治が行われても同じ結果を招くのです。
一握りの人間に有利な政策で国を動かしても、国民の不満が高まり、動乱などの不穏な予兆を招くのです。

今の社会はおおむね、自由だが、そのために、大企業と政治家が結託して、彼らの思うように市場が操作されている。
大国がそうなら、小国もこれに従わざるを得ない。
ただ、スウェーデンはそういう危機を乗り越えたと氏は言う。
政府が大企業との関係を断ち切り、大企業の横暴を阻止し、福祉国家に傾斜し、平等性を担保したからだと。

エモット氏が興味深い予測を立てている。
中国が2020年代に民主化に舵を切るというのだ。
にわかには信じがたいが、そうしないと中国が持たないという。
現在の中国ほど「平等性」に乏しく、「開放性」に遠い国はない。
それを中国の首脳はわかっているのだろうか?
わかっていて無策なのだろうか?
氏は、その答えがもうすぐ出ると言うのだ。

「平等」と「開放」しか人類の繁栄はない。

毎日新聞7月24日付朝刊「そこが聞きたい 反グローバリズムの閉鎖性」より。