新海誠の作品に『秒速5センチメートル』というわけのわからないアニメがある。
無駄に美しい、超現実的な絵づら…しかし、そこまでリアリズムを追求しておきながら、この中途半端感はどうであろうか?
たいていの人は、退屈して途中で見るのをやめてしまうのではなかろうか?
少なくとも私には、きわめて胸糞悪い感想しか得られなかった。

いったい、新海誠とは恋愛や男女関係についてどれだけ知っているのだろう?
まさか童貞?
奥さんもいて、娘さんもいるらしいけどセックスレスなんじゃないの?

本作は、どうみても、男の願望、それも恋愛などしたことのないチェリーボーイの妄想が美しい景色のなかで開花した、そういう作品に思える。

主人公の遠野貴樹はなぜかモテる存在だ、13歳の初恋を引きずり、転校して鹿児島の高校生活で、片思いされ、はたまた東京に戻って、女と無縁なのか、どうやらだれかをまた悲しませているようなはっきりしない人生を送っていて、そこで終わっている。

『小さな恋のメロディ』のようなすがすがしさがない。
いや、新海誠はそういうものを描きたかったのだろうが、どうやら、彼の想像力が乏しく、不発に終わった感がある。
それにしても、絵の描き込みはかなりの苦労があっただろう。
たくさんの人が携わって、この成果では、先行き思いやられる…と心配したが、この後『君の名は。』という名作を生みだしたのだった。

「秒速5センチメートル」はサクラの花びらがひらひら落下する平均速度らしく、また「コスモナウト」で出てくる「秒速5キロメートル」は宇宙空間に飛び出すロケットの速度だった。
これは何の伏線なんだろう?私にはわからない。

彼と、彼を取り巻く彼女らは彼に何を告げたかったのか?
冗長な手紙のやり取りは幼い恋の表れか?
携帯電話のない頃、ガラケーの時代、NASDAの時代、そんな時代背景を観る者は感じながら、延々と続く緩慢な話題についていけない。

つくづく情緒の人なんだなぁと思う。
私はリアリストで科学者だから、こういう情緒的な男性は敬遠するだろう。
はっきり言ってめんどくさい。
『君の名は。』も、あたしに言わせれば、なんでこんな作品がヒットしたのかと思ってしまう。
まだ『言の葉の庭』のほうがよかった。

宮崎アニメにはない、新海アニメは私には難解である。