この本は「子育てとキャリアが両立しにくい」という先入観を覆してくれる。
※洋書なので和訳ではまだ出版されていないようだ。
むしろ「子供を産み育てながら、キャリアも身につけろ」と元気づけてくれる本だ。

題名が「ちょっとなぁ」という印象なので、本屋で手にするのをためらわせる。
直訳すれば「子宮は仕様であり、バグではない」となろうか?
「仕様」とは「当然備わっている機能」という意味で「女性の特徴」と訳しても良い。
「バグ」とはコンピュータ用語のそれであり、つまり「不具合」である。
※「bug」は本来の「虫」から転じたスラングである。私は「プログラムの不具合を摘み取る作業」を「虫取り」に例えたからだと聞いている。

アメリカもどうやら女性が働きにくい社会らしい。
セクハラは日常だし、子育てで仕事がおろそかになると簡単に転属や解雇となるらしい。
ところがこの著者は、女は子育てすることで一時的に生産性が落ちて、会社のお荷物になるものの、二子、三子と子供が増え、成長し、彼らが手のかからない年齢に達したとき、母親は、以前より生産性、耐久力、コミュニケーション能力、マネジメント力において数倍も能力が増していることに気づけという。

そして女性だけでなく、上司も会社経営者もそのことに気づいて、女性をないがしろにしないことが会社の繁繁栄につながるというのだ。

こういったことをシリコンバレーでの女性の働き方をつぶさに調べ上げ、データで語ってくれるのが本書である。

これをそのまま鵜呑みにはできないが、納得できる部分は多々ある。
差別されてきた女性だからこそ、男にない「なにくそ精神」が育まれるとしていたり、子育てを仕事と見れば、たくさんのマネジメント要素があり、子育てを行うことが後の仕事にとって、無駄ではないことが証明されている。
そしてうれしいことに、男にも子育てに参加することで、おなじような生産性向上の傾向が見られたというから驚きだ。
われわれは、子供を産み育てるということの作業の中に、いろんな人を「大人にする作用」があるのは経験で知っているはずなのだ。
それが、聞き分けのない子に対するコミュニケーション能力であったり、家計(マネジメント)であったり、時間配分の能力(マルチタスク処理能)であったり、学校へ行かなくてもスキルを伸ばせる格好の舞台なのである。
これを人も社会も利用しない手はない。
わたしは、子育てとキャリアが両立しないものだと書いた。
しかし、それは「あきらめ」がそう書かせた。
本当は両立させたいし、もしそれができたのなら、私だって子供の一人や二人は作りたかった。
ここで社会のせいにしてはならない。
今、日本は、子育てと女性の地位向上において発展途上なのだ。
シリコンバレーのように性差別がない社会(まだ一部には存在しているそうだが)を目指して、私たちが変わらねばならないのだった。

育児休暇で生産性が落ちるのは正直、本当らしい。
当たり前と言えば、当たり前なのだ。
とくに乳幼児期は手がかかるのである。
そこを母親に「ワンオペ」を押し付けるのではなく、周囲、職場でフォローして生産性を落とさない努力をしていかなければならない。
子供の手が離れだしたところから、母を経験した女性がパワーアップするのである。
育児期の借りを返して余りあるほどの活躍を見せるだろうと、ええことずくめに書いてある。
アメリカ人と日本人の違いもあろうし、鵜呑みにできないが、子育てが母親を強くするというのは同意できる。
古来「母は強し」と言われるゆえんだ。
動物でも母親は強いのである。
いや、まったく。

そうすると、介護で離職というのもなくなればいいのだが。
私だって介護を担う前と今では、時間の使い方がうまくなったと思うし、優先順位のつけ方も容易くなった。
そういうスキルは忙しくなればなるほど、身につくものだ。
子育てと違うのは、子の成長を喜ぶという褒美がなく、ただひたすら、明日のない介護に明け暮れるということだ。
被介護者の死しか、抜け出る道がないのである。