スピッツの『ロビンソン』を聞くと、私は、あの甘酸っぱい、マンションを買って一人暮らしを始めた自由な時を思い出す。
ふと、何でこの曲が「ロビンソン」という題名なのだろうと思った。
歌詞にはまったく「ロビンソン」は出てこないのである。

歌謡曲に詳しい森田検索に訊いてみた。
「たしかね、あれはスピッツの草野正宗(まさむね)のイメージでつけたらしくって、意味はないとかなんかに書いてあったのを読んだことがあります」
「イメージ?」
「草野さんがね、タイ旅行をしたときに、あそこにはロビンソン百貨店(Robinsons&Co.)という現地では有名なお店があるんで、その名前を拝借したとか」
「はぁ?宣伝じゃん」
「いえいえ、歌詞には一言も出てこないし、その店をうかがわせるところもありませんよ」
「意味不明ね」
「草野さん自体、そういう歌詞を書く人なんですよ」
「メロディが先にあったのかな」
「そうなんじゃないですか?あとは思い付きで言葉をはめこんでいくという」
「でもいい曲だよね」
「ぼくも好きですよ。なんかこう、春にふさわしいじゃないですか」
「そ、そうよね。だからこの時期に思い出すんだわ」
「ふわふわっとどこかに行きたくなる。そんな感じでしょ?」
「ルララ宇宙の風に乗る~」
「片隅に捨てられてぇ 呼吸をやめない猫もぉ どこか似ている 抱き上げて 無理やりにほほを寄せるよぉ」
二人で歌い出した。

私は最初「ロビンソン・クルーソー」に関係しているのかと思っていた。
孤独感を感じたからだ。
フライデーとクルーソーの二人だけの空間…そんなイメージを私が勝手に想像していただけだった。

デフォーの『ロビンソン漂流記』は、ヴェルヌの『十五少年漂流記』に並ぶ冒険小説で、私が大好きな本だ。
セルカークの体験をもとにデフォーが読み物に仕上げたと聞いている。
小学生のころ、学研の『かがくとがくしゅう』の記事に載っていた。
デフォーの作品は1719年刊行ということで、ヴェルヌはそれを読んで、『十五少年』にも本歌取りしている。
二次作品『スイスのロビンソン』を読んでいる子が真似をするエピソードも『十五少年』には描かれている。
※『スイスのロビンソン』はアニメ『不思議の島のフローネ』で知っている日本人も多いと思います。

では「ロビンソン風速計」はご存じだろうか?
見ればたいていの人は「知ってる」と言うだろう。
半球のお椀を縦にしたものが上から見て回転軸の周りに120度の間隔で三つ、もしくは90度の間隔で四つ固定された風車で和名は「風杯型風速計」というらしい。
アイルランドのトマス・ロムニー・ロビンソンが考案したので彼の名を冠している(1846年)。

回転式発電機を軸につないでおけばそれが電気信号として風速に換算される。
ただこれでは風向がわからないので、同時に風向計を備えることが必要になる。
矢羽式風向計が併設されているはずだ。
もっとも最近では飛行機型でプロペラと胴体がついた「風向風速計」が用いられることが多いだろう。

スピッツの『ロビンソン』から話がずいぶんそれてしまった。