令子の部屋は、窓際にダブルベッドが置かれ、ミントグリーンのベッドカバーがかぶせてあった。
窓の外は、さっき吉通が下から見上げていた、塀を覆うように植栽が茂っている庭だった。
ツクツクボウシの声が盛んに聞こえた。
ベッドの反対側の壁にはドレッサーが置かれ、ここが女の部屋であることを演出している。
壁にはゴッホのものと思われる『跳ね橋』の複製画が掛けられている。
吉通にもその絵は見覚えがあった。

「あら、絵は好き?」
「ゴッホですか?」
「そうよ。「アルルの跳ね橋」っていう絵ね。主人が美術館に勤めている関係で複製画を幸運にも手に入れることができたの」
「へぇ、本物みたいに、油絵のタッチまで復元されている…」
「だから、簡単には買えないわ。これだって五十万円もしたんだもの」
裸の男女が絵の前で語り合っている景色だった。

「よしみち君、じゃ、しよっか」「はい」
令子は、ベッドカバーを引きめくり、ゴージャスな花柄の羽根布団を露わにし、その掛布団も向こう側にたたんで、シーツ面にした。
「どうぞ」
吉通は、スリッパを脱いで、半立ちのペニスを揺らしながら、ベッドに上がる。
「仰向けに寝てごらん」
「…」
吉通の目には、天井の豪奢なシャンデリア風のきらきらした電灯が映る。
その顔を、令子が覗き込んだ。
「もう、準備オッケーって感じね」
勃起をさわりながら、明るい声で言った。
「あたしね、主人とはもう、あまりしないの。ていうか、抱いてくれないのよ」
そうつぶやきながら、令子の細く長い指が、竿を握り、その太さを測るように弱い力を加えてくる。
すると、吉通の両脚が開き、腰が浮く。
「ああん、かったぁい。久しぶりだわ」
令子の握る力が強く感じられた。亀頭は剥かれて艶やかに景色を映している。
一度出しているとはいえ、童貞の吉通には刺激が強すぎた。
「あの子もね、安っぽいヌード写真を見ながらね、こうやってしごいているのよ」
そう言いながら、吉通がするように握っている掌を上下させるのだった。
「もう怖い顔をしてね、一心にしごいているのよ。あんなの見たら、あたしだってたまんないわ」
「あ、はあ…」
吉通の眉間にもしわが刻まれ、局部のさざ波のような快感に身をよじる。
「まだよ。まだだめよ、出しちゃ」
「で、でも」
「まさかね、息子にしてくれって頼めやしないから…そしたら、あなたがタイミングよく来てくれたのよ。だから、帰さない」
いたずらっ子のように言うと、令子は起き上がって、吉通にまたがったのだった。
「さ、いれるわよ。見ててよ。いい?」
「う、うん」
恥毛に飾られた肉の扉を左右に指先で分けて、令子は慣れた手つきで少年の高まりを自分の胎内に導いた。
「はうっ…おっきぃ」
軸より太目の亀頭が最初に令子を拡張する。
狭い肉の鞘が徐々に弛緩して、熟女の豊富な潤滑も手伝って、吉通の「初物」は根元まで収められた。
「ああ、いいわぁ、よしみち君のおちんぽ」あえてそんな言い方をする令子だった。
目をつむって、自ら腰を使う令子…
ベッドがささやき、蒲団が笑うようにゆれた。
そして何よりも、重そうな乳房が吉通の前で、誘うように垂れている。
「たらちねの母」と古典の時間に習った言葉を、吉通は思い出した。
思わず手が伸びる。
「そうよ、さわっていいのよ」
「やわらかい…」
「乳首も、お願いね」
しこった肉玉は、吉通の指先でますます大きくなった。
すると、令子の内部が吉通の勃起を絞るように動く。
「ああん、よしみちくぅん!」
抜けそうになるまで令子の腰が引かれ、また力強く落とされる。
だんだん、そのスピードが速くなる。
「あはん、あん、あん…」
令子の「入り口」に雁首をひっかけて、彼女は吉通の太さを味わっているのだ。
彼女には、奥よりも浅めの部分に敏感なところがあった。
騎乗位だと、自分の好きな位置で楽しめるから、彼女は好んでこの体位を取るのである。
胸を合わせるような騎乗位で、浅めの抜き差しを繰り返す。
ともすれば抜けてしまうが、それでも令子の膣にはまるで目があるかのように、素早く逃がした先端を探してくわえ込むのだった。
彼女の急角度の膣にこすられて、吉通の勃起は悲鳴を上げそうだった。
大きな双乳に左右のほほをなぶられ、そのぼってりと充血した乳首を頬張る吉通。
「ああん、行く、行く…こんな硬いおちんぽ、初めてっ!」
隠微な「ぬちぬち」という粘液質の音が次第に大きくなるのだった。
吉通の内腿は女の流す液体で、まるで小便を漏らしたように濡れて、エアコンに冷やされている。
「おばさん、ぼく、もう」
「そう、いくの?いいわよぉ。たっぷり中に出しなさい」
いいのだろうか?「妊娠」という単語が理性の飛んだ吉通の頭に浮かんだ。
「ふふふ、いい顔してる。もういくのね。いくんでしょ?」
うんうんと、頭を振りながら吉通は応えた。
そして、自らも腰を突き上げると、令子はのけぞるように体を倒して両手で支えている。
「なに?なに?これ、すごぉい!やだ、ああん」
吉通は良子の腰骨をつかんで、半身を起こし突き込む。
かなり深く挿入された状態で二人は結合していた。
「おばさん、おばさん!出すよ!出ちゃうよ!」
「いいのよ、ちょうだい!」
どっくん!
吉通のペニスが令子の胎内で跳躍し、弾丸のような精液を放った。
豊満な令子の乳房に顔をうずめて、吉道は震えながら射精を終えた。
じょじょじょぉ…
結合部から令子が失禁をしてしまった。
令子はぐったりと仰向けに倒れてしまった。
漏らした尿はかなりの量だった。
吉通が腰を引いて結合を解いたら、令子の胎内からゴボっと白い塊が泡を含んで噴き出したのである。
シーツは失禁で大きなシミを作っていた。

「あぁあ、おばさん」
「ごめんなさいね。あんまりすごかったから、お漏らししちゃった」
その恥じ入る姿が、少女のように愛らしく吉通には映った。
「りょうこ…」思わず、彼は年上の女(ひと)を名前で呼んだ。
「よしみちくん。ありがと」
このときに初めて二人は口づけを交わしたのである。
吉通は令子を抱き、男らしく上から唇を奪った。
ツクツクボウシの鳴き声が一段と大きく聞こえた。

その夏から、吉通は令子と密会するようになり、若い燕として親友の家をおとなうようになったのである。

(おしまい)