もう秋で、野球も「日本シリーズ」を残すだけとなりました。
「春の椿事(ちんじ)」とまで言われた阪神タイガースの快進撃はクライマックスシリーズで潰えたのです。
「「春の珍事」とちゃうけ?それ」とは、あたしの文章を読んだ蒲生譲二の言葉。
「え?そっちの珍事?どっちの椿事か、ややこしな。木ぃ偏に「春」、ツバキの方やと思うけど」
「ほうかぁ?昔な野球の映画があったんや。そっちは「春の珍事」で珍しいの字ぃやった」
「スポーツ新聞とかは、ツバキやけどねぇ。あたしの見たんは」

「珍事」と「椿事」はどちらも「めずらしい事」をあらわすけれど、ニュアンスが異なるらしい。
「ツバキ」のほうが、思いがけないくらい「珍しい」事を言うのだそうだ。

「春の椿事」である。
これは、「春」に関係あるのかもしれない。
ツバキも「木へんに春」だからだ。
春まだ浅き時節に咲く、深紅の椿(つばき)は珍しい事なのかもしれない。
ところで、「夏の椿事」や「秋の」「冬の」という使い方をしないことに気づいた。
そう、「春の椿事」しか用例がなく、そのほとんどが野球関連なのだ。

WAWABUBU INC.の内外小鉄(ないがいこてつ)論説委員にこのことを訊くと、蒲生会頭が言った映画『春の珍事(It happens every spring)』から日本語の「椿事」と合わさって生まれたんじゃないかとのこと。
もと、『荘子』に見える「大椿(だいちん)」というツバキの大木があって、その木に花が咲くことは非常に珍しいことだったのでその故事から「椿事」という言葉が「思いがけない珍しい事」の意味で使われるようになったのだと教えてくれた。

「珍事」は「闖事」と書くことがあるとも教えてくれた。
「門構えに馬が入ってきたら、びっくりするでしょう?そういうことです」
と、目を細めて内外さんは静かに言った。

映画『春の珍事』は野球映画で、ある野球好きの化学者が木製バットに塗ると球をよけてしまう薬品を偶然開発するのね。「この薬を敵チームのバットに塗っておけば、みんな三振じゃ」とメジャーリーグに売り込むんですって。バカな話。

阪神タイガースを例にとって申し訳ないけれど、このチームが開幕以来、勝ちまくってしまうと「春の椿事」と新聞に書かれてしまうのは、「夏まで続かん」という悪意があるらしい。
ほっといてほしいわ。