伎楽の登場人物に「崑崙」というのがある。
読みは「くろん」らしいが、「こんろん」とも読む。
崑崙は中国の奥地にある山脈のことだろうが、伎楽の「崑崙」はおそらく黒人だろうと思われる。
黒人を蔑んで「クロンボ」と言うが語源は「黒ん坊」ではなく「崑崙」ではなかろうか?

崑崙は色情狂で、呉女にしつこく言い寄り、あげく、力士に懲らしめられるというのが筋である。

学習院大学の瓜生(うりゅう)武彦先生が、私の胸をまさぐりながら「クロンボはね、崑崙(くろん)が語源なんだよ」と、お説を披露したのが耳に残っている。
先生は勃起不全で、まともにはセックスができなかった。
いつも愛撫だけで満足して終わられるのだった。

崑崙黒人説は、瓜生先生だけでなく、中国の研究者も唱えている。
肌の黒いインド人とかではなく、アフリカ系のネグロイドを指して「崑崙奴(くろんど)」だと言うのだ。

瓜生先生とは、私が東京に赴くたびに、逢瀬を重ねたが、一昨年の暮れに、狭心症の発作で帰らぬ人となってしまった。
奥様の手前、葬儀に参列することはできなかったが、高輪の泉岳寺の墓所に去年の新盆に、お参りさせていただいた。

伎楽面「崑崙」もしくは「崑崙奴」は重要文化財として、飛鳥時代のものが東京国立博物館に残っている。
なるほど「黒人」と言われればそう見える。
江田島平八(魁!!男塾の塾頭)に見えなくもない。

よく見ると焦げ茶色の顔料で肌を塗ってあるようだから、やはり黒人を模しているのだろう。


百済の味摩之(みまし)が日本に伝えた伎楽(呉楽)とは、仏教の説法をおもしろおかしく仮面無言劇に仕立てたもので、言葉がわからなくても観る者を沸かせた。


世の中がつまらなくなってくると、私は崑崙に会いたくなるのだ。