とんでもない本が出てました。
ザビエルの置き土産

「ありがとう」がポルトガル語の「オブリガード」がなまってできた言葉だというのです。
「有難し」が元だと思っていたあたしは、びっくりぽんです(古いわね)。
いや、おかしいぞ。
科学とは疑うことだと、あたしは何度も言うてます。
この本、やっぱり変だよ。
ポルトガル人が日本に来る以前から「有難し」ということばはあったし、NHK大河ドラマでも「ありがたき幸せ」と武将たちが言うてます。
あれはちゃんとした時代考証がなされた上でのセリフですよね。
もっとも「かたじけない」とか別の用例はあるのですが、「有難し」という言葉はちゃんと昔から使われている日本語であるのであって、「ザビエルの置き土産」であるはずがない。
ただ「有難し」が、字面通り「あるはずもないくらいこの上ない」という意味であって、感謝の意を表す言葉ではなかったかもしれない。
その意味では「かじけない」のほうが、今の「ありがとう」に近しいかもしれない。

視点をザビエルら、ポルトガル人に置いて考えてみましょうか?
科学者は公平に見なければなりません。
彼らが日本に来て日本語に触れるとき、彼らの母国語に似た発音があると同じ意味を連想するだろうことはありえます。
「オブリガード」と「ありがとう」は音が似てますよね。
そしてどうやら意味も感謝の意味らしいことが彼らにもわかりますので、シニフィアンとシニフィエが一致し強固な意味づけが彼らの中でなされたんじゃないでしょうか?
こういうことは異なる言語の間でよくあることなんでしょう。
語源という次元の話じゃなくって、連想でそうなっただけなんじゃないですか?
京都の先斗町(ぽんとちょう)なんかがそうです。
もちろんこっちは語源という意味でも関連しますけれども。

「菓子」を作る工房を「菓子舗(かしほ)」といいますが、これがポルトガル語の「cacifo(壷)」から来ているという著者の指摘はこじつけも甚だしいと思います。
もしね「cacifo」が「菓子店」とか「お菓子屋」という意味ならあたしも納得しますよ。
「壷」ですからね。どこが近いのよ?
音が似ているだけじゃないの。

「菓子」は中国語ですよね。
もとは「果子」であって、くだものを指しました。
日本では区別して、いわゆるフルーツを「水菓子(みずがし)」と言う場合があります。
とてもポルトガル語語源説には賛成できません。

「カステラ」とか「金平糖」なら皆さんもポルトガル語だと習いましたね。
あれは「日葡辞書」というちゃんとしたテキストがあって、そこに書いてあるから学校で習うんです。
根拠があるんですよ。
※「カステラ」はスペインの「カスティリャ」地方風のお菓子から来ているのでスペイン語が語源ですかね。「日葡辞書」じゃなくって、ルイス・フロイスの著作からだったかもしれません。

ほんとにもう。
とんだ、迷惑本だわ。
即、ゴミ箱行きです。