日本の三大発明は一説に「二股ソケット(現パナソニックの松下幸之助)、地下足袋(じかたび:ブリジストンの石橋正二郎)、亀の子たわし(西尾商店)」だと言われる。
まあ、それぞれたいした発明品であり、日本の文化を下支えしたアイテムとして異論はない。
ところで、特許にかかわる日本の三大発明といえばどうだろう?
御木本幸吉のアコヤガイ養殖真珠、安藤百福のチキンラーメン、TOTOの「ウォシュレット」(日本機械学会機械遺産)が挙げられる(なおぼん選抜)。

ミキモトの真珠はもはや説明するまでもないだろう。

「ウォシュレット」は実は、その原型の発明はアメリカだったようで、TOTOがそれを輸入し代理店販売をしていた経緯があるので、純粋に日本人の発明とは言えないかもしれないが、「ウォシュレット」の内容はすでに原型をはるかにしのいで別物であるがゆえに「機械遺産」として登録された。

安藤百福(ももふく)のチキンラーメンは、来週から始まるNHKの朝ドラ「まんぷく」で描かれるはずだけれど、もはや大阪人にとっては、百福翁は秀吉、近松、阪田三吉にならぶ大阪の偉人だ。

チキンラーメンは非常食としても見直され、おやつや小腹のすいたときのスナックとしても、そのままでも食することができ、幾多の飢餓状態の人々を救ったことか。
カンパン(三立製菓)の上を行く非常食だ。

もちろんチキンラーメンの発展型「カップヌードル」は世界中に広まった。

いずれも日本人らしい感性の結晶のように思える。

真珠の気高さは宝石にはないものであり、それが生命によって育まれるという驚き。
美味しいものを食べたいという、死の淵をさまよった者だけが知る切実な思いがチキンラーメンに昇華する驚き。
日本人の清潔への希求が、無駄にも思える努力をして精巧な洗浄便座を完成させ、それなしには用を足せない日本人にしてしまった。

私は「瞬間接着剤」の発明にも賞賛を与えたいけれど、これは日本人の発明ではない。
東亜合成の「アロンアルファ」があまりにも有名なので日本人の発明なのかと錯覚するが、イーストマン・コダックの研究者だったハリー・クーバーが偶然発見したものだ。
それも日本とアメリカが戦争していた1942年にである。
ハリーの発見したアルファ・シアノアクリレートは外科手術に使われていた。
アルファ・シアノアクリレートは、縫合ができない場合に大いに役立っていたし、今もなお外科で使われている。
アクリル接着剤の研究をしていた彼は、照準器の射影板や航空機の風防(キャノピー)の接着を担当していた。
そこで、アルファ・シアノアクリレートを主成分とする接着剤を採用したが、べたべたしてとても扱いにくく、手に付くととんでもないことになる悪魔の接着剤として悪評だった。
ところがこの性質が、とてつもなく広い範囲の物体を瞬時に固着させ、強力で破壊しないと離れないほどの性能を見せた。
アルファ・シアノアクリレートは空気中や人体の水分(実は水酸化物イオン)を得て重合し強力な接着力を瞬時に発揮するのだった。
イーストマン・コダック社より「スーパーグルー」として世に出ることになる。
アルファ・シアノアクリレートを外科接着剤としても有用な瞬間接着剤として完成させ、ハリーは特許を得たのである。

今や食品用ラップで不動の地位を築く「サランラップ」は誰の発明なのだろう?
この密着性にすぐれた塩化ビニリデン樹脂フィルムはダウ・ケミカルのものを、旭化成が独占して日本で販売権を得ているから、旭化成のものだと我々は思っている。
ダウ・ケミカルのこのラップは戦時下において、弾薬を湿気から守るために開発された経緯がある。
第二次世界大戦が終わり、ダウの研究者だったラドウィックとアイアンズの二人がピクニックの食材をこの軍用ラップで包んで持ち運んだところ、たいそう具合がよいので、食品の保存用として販売するきっかけを作ったらしい。
やはり、アメリカには発明の母(父?)がたくさんおいでだ。

私たち機械工には「六角レンチ」なるものが必需品だ。
これもアメリカの発明品でAllen Manufacturing Companyが明治時代の1910年に販売している。
よって、一部では「アレンレンチ」と呼ばれることもある。
もちろん相手の六角穴付きボルト(キャップスクリュー)があっての工具であり、日本でもJIS規格が存在する。
それまでのプラス・マイナスねじよりも「なめ」にくく、ボルトの頭を円柱に仕上げられて引っかかりがない(それまでボルトは四角の頭だったらしく、よく服が引っかかったそうだ)などの特徴から急速に広まった。

私はトートバッグの機能性が気に入って、大小いろいろ持っているが、これは誰が発明したのだろう?
「トート(tote)」とは「運ぶ」程度の意味合いらしい。
これはなんと自衛隊でも使っているらしい。
もともとアウトドアで用いる、運ぶために特化したバッグであり、飾り気はなく、だいたいは帆布に防水加工して水などを運ぶのに使ったようだ。
誰が発明したとかは定かではない(アウトドアブランドのLLビーンが最初に販売したらしい)。
自衛隊や米海兵隊などでは大型のトートで弾薬、弾倉などを無造作に放り込んで、トラックに積み込んでいたりしていた。

三大発明から話が飛んだが、私たちはあらためて、さまざまな発明品に囲まれて生活しているのだなと感じた。