タヌキは、この宇治あたりでも、たまに目撃されるが、日本全国にタヌキはキツネよりも目につくらしい。
たぬき

昔ばなしや、置物にタヌキほど、よく取り上げられる野生の動物もいないだろう。
たしかに愛嬌があり、人を化かすと言われもするが、どこか人間臭いところもある。
極東にのみ分布する動物とされるが、ヨーロッパにも飛び火して分布しているのは、毛皮を取る目的でロシア人がヨーロッパに持ち込んだものが繁殖したようだ。

北米大陸にはタヌキがいないが、アメリカ人は、タヌキを「アライグマ(racoon)」と間違うそうだ。
現に、英語では「racoon dog(あらいぐまいぬ)」と、座りの悪い言い方をする。
もっとも、現在では「tanuki」で通じるのは、宮崎アニメの『平成狸合戦ぽんぽこ』のおかげかもしれない。

ところで、「狸寝入り」にあたる英語は「fox sleep(狐寝入り)」であるそうだ。
どうやらキツネも危機が迫ると、死んだふりをするらしい。
そもそも北米にはタヌキがいなかったのだし、アライグマは死んだふりをしないのだった。
むしろ北米特産のオポッサムが典型的な「死んだふり」つまり「仮死状態」を見せるので、「オポッサム寝入り」という言葉があるくらいだ。

タヌキの交尾は、オスがペニスをメスの膣に挿入後、さらに膨大して抜けなくなるらしい。
イヌの交尾もペニスの根元の瘤が膨隆してメスの膣から抜けなくなるので同じことなのだろう。
よって、タヌキもイヌも「尻合わせ」で交尾することができる。
普通は、メスにオスが乗っかる「doggy style」であるが、さらに彼らは「尻合わせ」という離れ業もできるのだ。ヒトには無理な体位である。長さに自信のある人はやってみればいい。
実は「交尾」の意味は「尻合わせ」のことなのである。
「doggy style」では「交尾」にならないであろう。


「同じ穴のむじな」の「むじな(貉)」がタヌキだと言われているが、穴に住むのでアナグマを指すという説もある。(もちろんタヌキだって穴に住むこともある)
タヌキは、古代より日本人が明確にその種を識別していなかったらしく、ネコと間違ったり、ハクビシンと混同したりしていたのである。

タヌキの住処が「穴」だというのでその住処を「狸穴(まみあな)」と呼んだりする。
「まみ」がタヌキのことらしい。
「たぬき」の語源が「狸寝入り」に由来するという説もある。
つまり「死んだふり」が「魂抜き(たまぬき)」であり、それが短縮されて「たぬき」となったのだというのだ。

「きつねうどん(そば)」と「たぬきうどん(そば)」が地域によって内容が異なるという話題は、テレビ番組などでよく取り上げられる。
だいたい「きつねうどん」は、どこも「油揚げ」の甘辛く似たものがうどんに乗っかっている温かい麺類メニューだ。ところによって、うどんがそばになる程度の変化を見せる程度である。
ところが「たぬき」は、かなり地域差がある。
「きつねうどん」も歴史が浅いらしく、大阪で明治時代に発案されたらしい。
キツネの好物が油揚げだから、シャレ好きな大阪人が「きつね」をうどんに冠したのだろうと言われている。もともと「お稲荷さん」という寿司が江戸時代から食べられていて、これも「御狐様=稲荷信仰」から来ているのだから、連想としては悪くない。
さらに、もともと用意していた、お稲荷さんの甘辛く煮た油揚げを、きつねうどんに転用した(もとは稲荷と、かけうどんを一緒に食っていた客が、誤って油揚げをうどんに落とした失敗から生まれたのが「きつねうどん」だったとNHK「チコちゃんに叱られる」でやっていた)から、わざわざ新しく作らなくてよいメニューだったのだ。
それはそれとして、たぬきうどん(そば)が地域によって全く異なる麺類メニューになってしまっているのはなぜだろう?
大阪では、「たぬき」は、単に「きつねうどん」のそばバージョンであり、隣の京都で「たぬき」といえば、油揚げの入った「あんかけうどん」である。さらに東の方では揚げ玉(衣だけのてんぷら)を入れた、汁そばが「たぬき」であり、遠くロンドンでもこの形で流布していた。

あくまでも「きつね」がメインの麺類であり、その対抗馬として各地で知恵を絞ってできたのが「たぬき」だとすれば、バラエティーに富んでいても不思議ではない。
※揚げ玉(関西では天かす)にはタネがないので「たねぬき」だから、短縮されて「たぬき」になったというが、一方で、一見、天ぷらだと思って、かじればタネがないので化かされたという意味で「たぬき」というのだとも。


タヌキは愛嬌のある、おもしろい動物である。
人にもよく慣れる。
まさに昔ばなしから出てきた、アイドルだ。