ルイテン星は、こいぬ座(Canis Minor)にある肉眼では見えない恒星だけれど、天文ファンやSF好きには、そこそこ有名な星である。
日本でも『リュイテン太陽』(福島正美)という少年向けSF作品があるくらいだ。

なにゆえ、このように人々の興味をそそるのか?
ルイテン星には、オランダ生まれでアメリカで活躍した天文学者ウィレム・ヤコブ・ルイテンが発見し、その恒星の固有運動を調査し、星までの距離を苦労して計算した歴史があり、その距離は12光年あまりと推定されている。
それだけなら、ケンタウルス座α星のほうが、我が太陽系に近いので話題にならないが、どうやら人が住めそうな惑星を持っていることが判明したからである。
ルイテン星は赤色矮星でヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)では主系列の右下の赤い星のグループになる。
※ウィレム・ルイテンはライデン大学のヘルツシュプルングの弟子だったようだ。

ルイテン星(GJ237)にはこれまで四つの惑星が観測されている。
近いとはいえ、見かけ9等の暗い星の惑星系など良く見つけられたものだ。

「ルイテンb」がもっとも注目すべき惑星で、ハビタブルゾーンに軌道を持つらしく、水があれば生物が存在しても不思議ではない。
※ハビタブルゾーンとはわが地球のように、太陽からの公転軌道が生命を育むことに適した範囲(ゾーン)にあることをいう。

ルイテン星が「太陽」としては暗く、直径も我々の太陽に比して30%程度しかないので、ルイテンbの地表温度はマイナス67~プラス20℃ぐらいの範囲ではないだろうかと予測されている。
地球なら極地方の世界に近く、生物を育むのに最適とは言えないが、不可能ともいえない。
ルイテン星から「こいぬ座α星(プロキオン)」までは1.1光年ぐらいしか離れておらず、ルイテンbから眺めると、プロキオンは見かけマイナス4.5等級の明るさで輝いているだろう。
※国際宇宙ステーション(ISS)が最も明るく見えるときがマイナス4.7等級だそうだ。あるいは明けの明星「金星」の明るさがだいたいそれぐらいである。なお地球から見えるプロキオンの見かけの等級はプラス0.37程度である。

2017年10月にルイテンbに向けてノルウェーから電波信号が送られたそうだ。
その電波がルイテンbに届くのは2030年3月11日になるだろう。楽しみだ。
もし知的生命体がいたら、きっと返信してくれるだろう。