うちの会社の採用試験は変っていた。
「後藤さん、これは何かわかるか?」
カリパス

「えーっと、たしか、外径とか内径を測るもんだと思います」
「どっちが?」
「この丸いのが外径用で、コンパスみたいなんが内径用ですよね」
「名前は知らんか?」
「ここまで出かかってるんですけどね、カリパスやったかなぁ」
「正解。こっちがあんたの言うように外パス、こっちが内パスと言います。覚えといてや」
「は、はぁ」
あたしは、中学の技術家庭科の授業を思い出していた。
「そしたら、このノギスでこの部品の外径、内径、深さを測ってみて」
そうきたか…大学の工学部出身者ならノギスは使えなくてはならない。
いくら化学専攻であっても例外はない。
ノギスでは外径を大きいくちばし(ジョウ)で挟む。内径は反対側の小さいくちばしで当たる、深さは「デプスゲージ」といってジョウに連動する角棒を差し込んで図る。そして副尺で100分の5㎜まで読むことをテストされているのだと理解した。
私はノギスを受け取り、筒状の金属部品の外径、内径、深さを100分の5㎜までの精度で答えてやった。

「あんた、採用や」
社長がにんまりを笑顔で答えてくれた。

筆記試験なしの、いきなり面接でこれだった。

零細企業の即戦力社員の採用など、こういうものである。
これ以上のことは現場で、どなられながら覚えるのである。