皓介には、外の蛙の合唱が一段と大きく聞こえる気がした。

「あの子、しっかり見てたわよ」
富士子が、射精後のぐったりとしている皓介の耳元でささやいた。
典子は、富士子にのぞき見していたことを見つかったので、そっと退いてしまっていた。

「そうか…見られてしまったか…」皓介は、なかばあきらめの気持ちで、そう思った。
見られてしまったのは仕方のないことだ。
軽蔑されて、家に帰ると言い出すかもしれない。
そうすれば、叔父にも知られてしまうかもしれない。
だんだん皓介は恐ろしくなってきた。
「どうしよう。富士子さん」
「だいじょうぶよ。あの子は誰にも言わないわ」
「そんなことわかるもんか。のりちゃんのお父さんは医者だよ」
「だったらなんなの?」
つれなく、富士子が訊き返す。
射精後の恥ずかしさもあって、皓介はさっさと立ち上がって風呂から出ようとした。
「待ってよ」
富士子が皓介の手を引く。
「まだ石鹸が残ってるわ」
そう言って、湯汲みで湯船の湯を取って少年の肩から湯をかける。
まるで母親のように。
皓介はされるがままに甘えて突っ立っている。
吐精した幼い器官はうなだれていた。

部屋に戻った皓介だが、典子にどう接しようか悩んでいた。
まともに顔を合わせられない…そう思ってつらかった。
男としてもっとも恥ずべき行為を、最愛の、美しい従妹に見られてしまったのである。
もっと真剣に、家政婦と深い関係になっていることが、大人たちに知られたらと考えると、皓介は煩悶した。

「のりちゃんは、もう寝ただろうか?」
ふすま一枚隔てた隣で、従妹は寝ているはずだった。
と、そのときふすまがゆっくり開いた。
隙間から愛らしい典子の瞳が二つ覗いた。
「のりちゃん…起きてたんだ」
「こうちゃん、あたし、見てしまったの」
「知ってる。富士子さんから聞いた」
「いつからなの?あんなことするようになったのは」
詰問風に典子が尋ねる。
「きょ、去年」
「ふぅん。不潔だわ」
皓介は当然、そのように罵られるだろうと予想していた。
「のりちゃん、あの、誰にも言わないで」
皓介は、もう懇願するほかなかった。
「どうしよっかなぁ」
いじわるそうな声で典子が言う。
皓介は、典子が望むなら、なんでもする気でいた。

一方で、典子は二人の行為を盗み見て、自らも興奮し寝られないでいたのだった。
ほのかな恋情を従兄に抱いていた少女が見たものは、気持ちが打ちのめされるのに十分だった。
そして自分も女として負けられないと、年上の家政婦に敵愾心がふつふつと湧いた。
半分、白人の血が混ざった典子の体は、同い年の日本人の少女に比べて早熟だった。
また、母親の教えと父親の医学書を垣間見て、性の知識は不十分ながらも心得ていたのである。
プロテスタントの母親、エマは看護婦でもあり、娘への性教育については開けた考えを持っていた。
自慰行為をするようになったのも、皓介より早かったようである。

「ね、こうちゃんは、あの人とどこまでやったの?」
興味津々という目で典子が四つ這いで近づきながら、小声で尋ねる。
「どこまでって…」
皓介は、典子にしゃべっていいものかどうか逡巡していた。
「だれにも言わないから」
「性交もしたよ…」「やっぱりね」
悟ったように典子が言い、その姿は皓介より年上に見えた。
「性交って、どうやるか知ってるの?」「ああ」「どうやるの?」「女のあそこに、男のものを入れるんだよ」「あの人が教えてくれたの」「まぁね」
ひとしきりあって、
「さっき、お風呂でしてたのは何?」
「あれは、男が気持ちよくなる「掃除」さ」
「お掃除なの?」
びっくりしたように、典子が声を上げる。
「男はね、性交をしないと、精液が溜まって病気になるから、ああやって出してもらうんだよ」
皓介は富士子に教わった通りに典子に伝えた。
富士子が行為を正当化するために、いい加減な理由を少年に吹き込んだのである。
「じゃあ、いやらしいことじゃないのね」
典子は安心したような態度で言った。
幼い二人は、自分の理解できる範囲で納得してしまったようだ。

「性交すると、赤ちゃんができるのよ」「知ってるさ、それくらい」「富士子さんに、こうちゃんの赤ちゃんができたらどうすんのよ」
やや、怒気を含んで典子が皓介に迫る。
「そ、外に出すんだ」
「ふぅん。じゃ、あたしにもして…いいでしょ」
二人で話すうちに、典子はたまらなくなっていたらしい。
皓介だって望むところだった。
この愛らしい、西洋人形のような少女を抱けるのである。
いや、抱いてくれと願われているのである。
「じゃあ、してやるよ」
皓介は、優越に浸った態度で、典子を自分の布団の上に押し倒した。
典子は、大好きな従兄に抱かれる好奇心でいっぱいだった。
「月のものはあるのかい?」
「メンスのこと?あるわ」
「じゃあ、赤ちゃんができるね」
「だめよ。それはぜったいだめ」
「わかってるよ。中には出さないから」
「きっとよ」
そう言って、皓介は典子のさくらんぼのような唇に自分の唇を重ねた。

風呂の湯を引き、浴槽の掃除をしながら、富士子は想像した。
「たぶん、あの二人、今頃…」
のぞき見してみたい気持ちを抑えて、家事に励んだ。
「どうせ、もっとすごいことになるんだから。そのときは私も…」
ほくそ笑む熟女だった。

「入らないな…」
「なんか怖い」
蚊帳の中、常夜灯の下で幼い二人が体を重ねている。
「舐めていい?」「はずかしい」「お風呂で洗ったんだろ」「でも」
どうやら潤いが足りないようだった。
しっかり谷間を作っている十三歳の典子の胸は、打ち震えている。
着衣の上からよりも、裸の胸の方が大きく見えた。
大きいとからかわれるので、バンドで抑えていたらしい。
皓介の勃起は完全に反り返り、へそに当たりそうだった。
典子の実(さね)は飛び出し、硬くしこっている。
富士子のものよりも大きい感じがし、皓介は丁寧に舐めながら人種の差を思った。
「ああん、こうちゃ…ん」
気持ちがいいのか、典子が声を上げる。
膣口は狭く、膜のようなもので縁取られていた。
「処女膜?かな」
独り言を言いながら皓介は、解剖学の博士のように少女を丹念に調べた。
甘酸っぱいような香りが立ち上り、舐めればほのかに甘かった。
「ああ、のりちゃん」
「こうちゃん」
「かわいいなぁ。きれいだ」
「やだ、もう」
「そろそろ、いいかな」
そう言って、皓介は典子の股を割り、おのれの腰を入れる。
勃起に手を添え、暗がりで狙いを定めた。
ぷつり…
亀頭が膜をくぐる。典子の眉間にしわが刻まれる。
「痛い」
「がまんしな」
皓介がなおも、押し込むと、きついが半ばまで茎が隠れた。
「ああ、せまいな」
「痛いよ」
十分に濡れているはずだが、破瓜(はか)は女にとって痛いものだ。
富士子に「最初は動くな」と教えられていた。
じっくりと自分の形に、女の方がなじんでくるまで待つのだと。
キスをしたり、お乳をいじったりして待つのだと。
皓介は、典子の唇を奪い、フレンチ・キスを堪能した。
甘い、いとこ同士の味。
「はふう」
大きく息を吐く典子。
腋から芳ばしい匂いを立ち上らせ、ハーフの少女はあえいだ。
皓介は鼻を腋の下にくっつけ、その汗の匂いを嗅いだ。
「鉛筆の匂いだ」
皓介は嫌いではなかった。むしろ、興奮を掻き立てられた。
そしてゆっくりと腰を抜き差ししていった。
甘やかな声に変化する典子。
「ああん、あん、あん」
潤ってきたのか、滑らかな出し入れが可能になった。
典子の両足が上がり、空を掻くように揺れ、影も揺れた。
「はっ、くっ」
互いの汗が滝のように体中を流れる。
若い二人の体臭で狭い部屋は蒸し風呂のようになった。
皓介は富士子に教わった体位を一通り、この処女におこなった。
処女は、恥じらいから転じて、男を徐々に貪り出した。
騎乗位で腰を振り、豊かな胸を揺らせて典子は娼婦のような笑みを浮かべている。
「どう?あたしの体」
そう目が言っているように、皓介には見えた。
実際、富士子の緩んだ体とはちがって、若鹿のような弾む体は皓介を虜にさせた。
「ガイジン」の女を抱く…そんな劣情が皓介をたけり狂わせる。
華奢な日本人の男の子が、豊満な白人の女の子を快感で泣かせている…
「オウ、コウチャン」
「のりちゃん、やばい、のいて」「え?」
騎乗位では膣外射精が難しいのだった。
皓介が典子を押しのけたが、遅かった。
子宮めがけて、精液がほとばしってしまった。

「あぁぁ」

我に返った二人は、動顛していた。
「洗おう、のりちゃん」「うん」
そっと二人で暗い廊下を歩き、風呂場に向かった。
残念ながらお湯は引いてあった。
皓介は桶に井戸水を汲んできて、典子に差し出した。

しゃがみながら、典子が胎内を掻きだすようにして洗う。
「うわぁ、いっぱい出てくる。どうしよう」
「跳べ」
とんとんと跳ぶように皓介が指示した。
内腿を伝って、青白い液体が床に落ちた。

「あらあら、お二人さん、何をしているの?」
後ろから富士子の声がした。
ドキリとして二人が振り返る。
「やったのね?」
「うん」
「典子さんも、お体を大切にしないと」
なじる富士子だが、声は笑っていた。
「典子さん、生理はあるの?」
「はい」
「いつだった。最近は?」
「六月の末頃…」
「毎月ちゃんと来る?」
「ううん。二か月に一遍とか」
「たぶん、だいじょうぶよ」
「そうかなぁ」
不安そうな典子に、富士子は寄り添った。

こうして三人は秘密を共有することになってしまった。
長い夏休みが始まろうとしていた。