観客が発するイソプレンの濃度で映画のレーティング(年齢制限)を判断する試みをマックス・プランク化学研究所(Jonathan Williams博士ら)がドイツで実施したという。
イソプレンという炭化水素は自然界に多く分布していて、ヒトの呼気に一定量含まれるが、成人になるほど多くなり、幼少の頃は少ないという傾向にあるらしい。
(呼気中のイソプレン濃度につき、Gelmont, D; R.A. Stein, and J.F. Mead (1981年). “Isoprene- the main hydrocarbon in human breath”. Biochem. Biophys. Res. Commun. 99 (4): 1456–1460.)
手法はガスサンプルのマススペクトル(プロトン移動反応質量分析計)を比較検討するものだそうだ。

子供向け映画の上映館では、館内空気中VOC(揮発性有機化合物)のイソプレン濃度は低めであったが、大人向けのホラー、バイオレンス映画(R16)の上映時の管内空気中のイソプレン濃度は高めに推移していたという。
ただ、ノイズも多く、上映館で使用している掃除用具の洗剤成分も検出されたようで、十分な結論に至っていない。
しかしながら、こういう手法で客観的なレーティング判断をおこなうための足掛かりとはなるだろう。

私の感想では、細かいレーティングの判断にはこの方法は向かないと思った。
明らかに幼児向けと成人向け映画というような観客の年齢差が極端な場合であれば、呼気の成分も大きくかわるだろうが、R15とR20のようにほぼ大人しか観ないが、年齢差が小さいものではイソプレン濃度で判断するのは危険だと思う。
この報告の中では映画の内容でも差が出たという。親が同伴で見せる内容のものと、レーティングが低くても内容が低学年向けではないものというような、映画の嗜好に関する観客年齢層の差というものも加味しないと正しいデータは得られなかったようだ。
(ケムステ[Chem-Station]ニュース,2018.11.11より)