夏休みの塾は、子供らでいっぱいだ。

宿題をここでやろうという子ばかりで、エアコンも利かせているし、「綾鷹」も冷やしてある。
彼らにとっては、家にいるより、いいのだそうだ。

「おばちゃん!」
「なんやな」
六年生の小寺君が新聞の切り抜きを持ってくる。
「これわかる?」
見ると、どうやらパズルのようだ。
「ああ、これなぁ。てんびん問題っていうやつやな」
てんびん
(出題:毎日新聞 今井洋輔)
こういう天秤があって、全体としては釣り合っているというのがミソ。
で、問題文を読むと、分銅は2gが二つ、3gが二つ、あとは5gと6gと7gがおのおの一つずつ揃えてあり、図の四角(A~G)に入っているのでそれを当てろというものだ。
天秤自体の重さは考えないとし、水平の天秤棒は釣り合っていることを示し、FとGの天秤棒が釣り合っていない(こう書いておかないと、遠近法で「FとGは釣り合ってるやん」と屁理屈をこねる子がいるのだ)。


「これはな、この図からどれだけ情報を読み取るかが大事なんやで」
「ほんで?」
得意げに小寺が私の顔をうかがう。
「まず、分銅を全部足すと、28gや。これを2で割って分銅を二つのグループに分ける。なんでか言うたら、この天秤は釣り合っているからや。つまり14gずつで釣り合っていると考えるの」
「うん」
「向かって右のグループは分銅の数が3つ、左のグループは4つでしょ。与えられた分銅を3つ組み合わせて14gをつくるんやけど…2g、5g、7gでどう?」
「Eが7gで、Fが5g、Gが2gということ?おばちゃん」
「そうや。破綻してないやろ?」
「ハタン?」
「ちゃんと合うてるやろっていうこと。Fのほうが重うて、Gが軽い。そんでG+F=Eにもなってるし」
「ほなら、左側は?」
「こっちは全部釣り合っている図やから、残りの2g、3g、3g、6gの分銅をうまいこと配置するんよね」
「さすがやね、おばちゃん」
「こういうのはね、下のCとDがもう3gと3gで決まってしまうでしょ?ほんなら、Bは6gしかないし、Aは最後に残った2gや。どうや?」
「正解です」
「図と与えられた分銅の情報から、どういうふうに答えを導くかが、科学なのよ」
私は、骨の折れたうちわであおぎながら、どや顔で言うたった。
「しかし、暑いな」
「あつい~」
「あんたら、飲みもん、持ってきたか?無かったらそこのアイスボックスにはいってるお茶を飲んでや」
「は~い」
女の子がふたり、アイスボックスを開ける。
「うわ…綾鷹ばっかし」
がっかりしている様子が面白い。
ジュースでも入っていると思っていたのか?
そんな甘い話はないのだ。