その日の夜は、夕食にすきやきをごちそうになり、ビールもロング缶を二本飲んだ。

田舎の夜は静かだった。
美羽は「おばあちゃん」とお風呂に入って、ご機嫌で寝てしまった。
ここは、風もあって冷房を入れなくても寝られそうだった。
大阪の茨木の自宅ではとうてい暑くて寝られない。
「陽介さんはスマホとか詳しい?」
「え?使ってますけど、使いこなしているとはいえませんね」
「これなんだけど」
どうやら、義母はスマホデビューしたらしい。
i-phone8を手に、座敷机の前に座った。
風呂上りの義母は、パジャマの下にブラも付けておらず、谷間がきっちり見える。
そんなことはお構いなしに前かがみになって、スマホを差し出す。
「ユーチューブってどうやって見るの?」
「ああ、あれは、検索で…ほら、ここにローマ字でyoutubeって」
「この字の入れ方が気に食わないのよねぇ」
「馴れますって。ほら、出た」
「うちの学校のブラスバンドが動画になってんだけど」
「じゃあ、ここに学校の名前を入れて虫眼鏡のマークをタップするんです」
「わぁ、出た。この子たちよ」
「へえ、本格的ですね」
「今年、彦根城で演奏会をやったの。ひこにゃんも来てくれてね」
その間も、やわらかそうな義母の胸肉に目が釘付けになっていた。
おれは勃起していた。
幸子と同じくらいの豊かな胸だった。
少しは垂れているのかもしれないが、ブラなしでこの盛り上がりである。
親子ゆえ、幸子の面影が色濃く出ている。
「いや幸子だ…」おれは目を疑った。
風呂上りの女の香りも手伝って、痛いくらいに勃起させていた。
幸子が離れゆくおれの気持ちを取り戻そうと、母親の姿を借りて目の前に現れたのか?
「どうしたの?陽介さん」
「あ、いや、その、おかあさんはさっちゃんに似てるなって」
「そりゃそうよ。親子だもん。思い出させちゃった?」
「い、いえ」
おれは赤くなってうつむいた。
「もう、寝ましょうかね」
取り繕うように、義母は立ち上がった。

その夜は、美羽と義母がいっしょに隣の部屋で寝て、仏間のエアコンのある部屋で、おれが寝させてもらった。
暗闇の中で、義母の体を想像し、顔は幸子にして分身を握り、こすった。
溜まっていたのか、すぐにおれは果ててしまった。
ティッシュで始末し、手に残った体液を台所で流した。

「寝られないんでしょ?」
ふと後ろから義母に声をかけられ、ぎくりとした。
まったく気配を感じなかったからだ。
「おかあさんも?」
キッチンの入り口の柱に体を持たせかけて、義母が玄関の明かりを背に逆光で立っていた。
薄いパジャマは透けて、体の線が浮かび上がっている。
やはり幸子に見えた。
「ちょっと飲む?」
「ビール、まだあるんですか?」
「あるわよ。そこの冷蔵庫を開けてごらん」
おれは言われるままに、冷蔵庫のドアを開けた。
暗いキッチンに明かりがさした。
中断にプレミアムモルツのロング缶が三本、転がしてあった。
キッチンの電灯がつけられ、義母がグラスを戸棚からふたつ出した。
おれは、缶ビールを開けて、二つのグラスに注いだ。
キッチンのテーブルに対面で腰かけると、義母の方から「乾杯」とグラスを差し出した。
おれもそれに合わせた。
のども乾いていたので、とてもおいしかった。
「幸子が亡くなって、さびしいでしょう?」
「美羽がいるから…」
「男としてよ…陽介さん、若いから」
色っぽく、流し目で義母がおれを見る。
とても中学校の教員とは思えない話題だった。
おれは、グラスのビールを飲みほして、つぎ足した。
それをにっこりしながら義母は見ている。
「あたしが、お相手してあげようか?」
おれは、凍り付いた。
そして義母を見据えた。
「幸子だ…幸子が言っているのだ」
義母がそんな、はしたないことを言うはずがないのだ。
ここにいるのは義母ではなく、幸子がお盆で降臨してきているのだ。
「さっちゃんだよね…おかあさんの姿をしているけど、さっちゃんだよね」
おれは、堂々と尋ねた。
「陽介さんは、なにもかもお見通しね」
一瞬、さびしそうに義母の姿の幸子が言った。
「え?ほんとは、おかあさんなの?冗談で誘ったんですか?」
「どっちだと思う?」
もう、おれはさっぱりわからなくなっていた。
幸子が憑依しているのか、そんなふりをしている義母なのか?
科学的には後者だろう。しかし…
おれのグラスは空になっていた。
義母がそこにビールを継いでくれた。コケティッシュな笑みを浮かべて。
おれは力なく、グラスを口に持っていき、一口飲んだ。
「ね、しようよ」
幸子が言った。
「うん」
おれは、同意した。
もう義母は、幸子だった。
そうであってほしい。
おれたちは、仏間の寝床に向かった。
久しぶりに会った恋人同士のように、立ったまま唇を重ねた。
熱い口づけ…
幸子の味だった。あのころが脳裏によみがえる。
常夜灯の下で、幸子はもはや義母ではなかった。
二人はもつれるように蒲団に倒れこみ、互いの体を激しくまさぐった。
「さっちゃん」
「陽介さん」
「戻って来てくれたんだ」
「そうよ。あなたがわたしのこと、忘れかけてるみたいだから」
「忘れるもんか」
「ああ、抱いて」
「抱いてやるとも」
引き裂くようにパジャマを脱がせる。
ボタンが飛んだ。
おれは、もどかしげに自分のTシャツとトランクスをはぎ取った。
汗ばむ、しっとりした幸子の裸体。
その茂みにおれは帰るように顔をうずめた。
動物的な香りにむせるようだった。
あむ…ぺちゃ、ぺちょ…
「ああん、そんなとこ…」
「思い出すよ。あのころを」
「やん、もう入れて…」
「ああ」
おれは、はち切れそうになっている分身を幸子の秘穴にあてがった。
十分に潤っていた。
二、三度こすりつけて、一気に挿入した。
「あああん」
「聞こえるよ、おかあさんに」
おれは、目の前の女が幸子であることを疑わず、隣の部屋で寝ている義母を気遣った。
「だいじょうぶよ」
「なんで?」
もう、どうでもよかった。
あまりの締まりの良さにおれは、昇りつめようとしていた。
「ああ、さっちゃん!」
「あなたっ!」
奥深くで、おれは果てた。

「幽霊相手に、中出ししちゃったけど、妊娠しないよな」
「大丈夫よ。かあさんの体を借りてるから」
「なんだって?」
おれは、半身を起こして、隣に寝ている幸子を見た。
「この体はかあさんのものよ。だから、声出しても大丈夫って言ったじゃない」
「はあ…とても五十を超えた体じゃないよね」
「それは、かあさんが鍛えてるからよ。この歳じゃ妊娠しないわ」
「ほんとかよ」
「ほんと。だから、こんどはバックでして」
と、ねだってきた。
声は幸子だった。いや、義母さんもこんな声だったな…
いいや、存分に楽しもう。
おれは、回復した分身をおったてて、幸子を裏返し、尻を引き寄せて、後ろから貫いた。
「あうん、すごぉい」
「奥まで入ってるだろう」
「きてる。お腹いっぱい」
「そうら」
ずぼずぼと腰を出し入れし、大きなピストン運動を加えた。
狂喜して、幸子が頭を振りながら、もだえる。
幸子はこんなに淫乱だったろうか?
たしかに、バックは好んでいたが、正常位のほうがいいとも言っていた。
それがどうだ?
アダルトビデオの女優のように声を上げている。
近所は離れているので、聞こえはしないだろうが、美羽が起きてしまうかもしれない。
半時間ほど、つながったままで幸子の狂乱ぶりを楽しんだ。

「ああ、もうだめ」
「腰が抜けたか」
「あなたってすごいのね」
「もう会えないのだろう?」
「ううん。ここに来てくれたら、おかあさんの体で会える」
「そうなのか…」
夜半にもう一度交わって、疲れ果ててさすがにおれは眠ってしまった。


朝日が射し込んで、おれは目覚めた。
上半身裸で寝ていた。
おれ一人だった。
起きて、美羽の部屋に向かった。

「おはようございます」
そう言って、ふすまを開けると、ボタンのとれたパジャマを脱ごうとしている義母が「あっ」と言って胸を隠した。
「ごめんなさい」
おれは、そそくさとふすまを締めて、自分の部屋にもどった。
あれはまさしく義母だった。幸子なんかではなかった…
ぼうっとした頭で、おれは考えた。

昨夜の出来事は夢だったのだろうか?
いや、あのパジャマの壊れ様はあのときに引きちぎったからだ。
義母さんも、何も覚えていないのだろうか?
キッチンに行くと、昨夜飲んだグラスがそのままだった。
「あら、陽介さん、早いのね」
「グラス、そのままですね」
「え?また飲んだの?」
覚えていないらしい。
「あの、これ」
「なんで二つもグラスがあるの?だれか来た?」
まったく知らないという風だった。

「あ、いや、間違って二つ出しちゃった」
「そう…」
怪訝そうに義母は首を傾げ、流しにグラスを置いた。
「ごはんにするから、美羽ちゃん起こしてきて」
「はい…」
おれがどうかしているのかもしれなかった。

(おしまい)