一年の計に目標を定めた人は多いだろうと思います。
目標は達成するために立てるのですが、どうもその目標に向かうことが無理そうに感じられることもあります。
はやばやと諦めるのも、体面が悪い。
自分にもウソをついているようで、お尻の座りも悪い。

ちょっと視点を変えてみましょう。
目標に向かって「→」で示すことが多いでしょう?イメージとしてもだいたいそうでしょう。

こういうのを数学では「有向線分」と言います。つまりベクトルですね。
「目標に向かう「ベクトル」だ」と、気の利いたコメンテーターが口にすることも多い。わかってもいないくせに…

まあいい。ベクトルだとしましょう。
ベクトルって、都合よく使えるんですよ。
ベクトルAとベクトルBがあって、目標Cに向かうには、ベクトルAとベクトルBを足せば行ける。
ベクトルAとベクトルBが平行四辺形を張る(平行四辺形を作る)ときその対角線の一端がCだったらの話。

目標に一直線で進むのが常道なら、一つ手前の点に迂回してCに達しても良いではないか?
これをベクトルAとベクトルBの「和」と言うのでした。
実はベクトルはどんどん迂回して結果Cに到達する「和」で表せるのでどんなに遠回りして、道草食ってもCに達すれば結果オーライなんだよと教えてくれる。

ここで少し注意点があります。
熱力学では「行程」という考えがあり、その行程が様々な方向に進んでCに達した場合、要したエネルギーは和で表され(エンタルピー)、エントロピーは行程が元の位置に戻っても増大していることになります。ランナーがスタートからゴールに向かい、ゴールからまたスタートに戻っても距離は二倍を要したのですからエネルギー(エンタルピー)を二倍要したはずです。あたりまえです。
蛇足ですが、時間は戻らない量ですからね。
時間をさかのぼることは熱力学が否定しています。
乱雑さの指標をエントロピーとするなら、崩した積み木を、人がエネルギーを使ってもう一度積み直したらいいのですが、時間はさらにかかるのです。
見た目が元に戻るだけ。

人は目標に向かって、ひた走るけれど、向きを変えても後戻りにはならない。
この逆説的考え方は、「後戻り」というのは見かけの問題であり、熱力学は「前進」と捉えるのです。
私が熱力学を持ち出したのはこのことを言いたかったから。

はたまたベクトルAとベクトルBの外積を考えれば、目標が変わってしまうことも表せる。
そう、目標Cに向かう準備で始めたことでも、外積に向かう目標に鞍替えしてもいい。
外積はベクトルAとベクトルBの張る平行四辺形が属する面に垂直な方向に向かうベクトルですから、どういう意趣返しでしょうか?周囲は度肝を抜かれるはずです。
とはいえ、同じ人物(起点)から出発する目標には違いないのです。
何も恥じることはない。

このように目標を立てても、達成できないと嘆く前にいろいろ視点を変えて見ればいいのです。

ベクトルAとベクトルBの和で示された目標Cが、外積C'になってもいいじゃないですか。


私はそうしてきました。