この日が近づくと、私は戦争について考えてしまうのです。
塾でも、戦争をテーマに中高生にスピーチをしたこともありました。
太平洋戦争に突入した日本と、現代の日本は似てきたとか、まったく背景が違うとかいろいろ議論されます。
私も、安倍政権のこれまでの動向を見るにつけ、大政翼賛会時代に似ているなと思わないでもない。
しかしながら、世界に目を向け、その中の日本という見方で眺めると、第二次世界大戦、なかんずく日中戦争から太平洋戦争に向かうまでの日本を取り巻いていた状況とは天と地ほども違うのです。

戦争は相手がなくては始まりません。
日本は、日清・日露戦争で得た多額の賠償金をもとに軍備を増強し、侵略戦争に食指を伸ばしたのです。
列強に対する自国のコンプレックスが、大陸進出による主権の強大化、よく言われる「一等国」を目指そうとした野心が戦争に走らせたと言えないでしょうか?
八八艦隊計画なんていう、莫大なカネの注入は、自国の税収だけではとてもできなかった。
ゆえにワシントン軍縮会議でも日本の軍備増強が問題視されたのです。

日本は島国ですから、主権の及ぶ範囲は知れていると日本の政治家は考えていました。
だから、とうぜん朝鮮半島から中国大陸、シベリアに活路を求めたくなった。
同時に島伝いに、南部仏印からフィリピンやインドネシア(蘭印)へも天然ゴムや石油を求めて大東亜共栄圏構想を打ち立てて、支配下に置きたがったのです。
この勢いを欧米が看過するはずもなく、また黄色人種への偏見もあって、私たち日本人が極東で支配力を高めることに嫉妬心や猜疑心が沸き起こったのです。
ことに太平洋を挟んで我が国と隣人ともいえるアメリカの政治家は日本の軍事力について脅威を感じていたのです。
一方で日本の海軍は、明治時代から仮想敵国にアメリカを想定して訓練していました。

日本では、世界恐慌のあおりで、国民に仕事がなくなり、仕事を求めて海外に移民に出ることを政府も奨励してきました。
ブラジルやハワイを始め、満州国建国にむけての朝鮮半島から中国東北部への民間人の移動には目を見張るものがありました。
日本国内では国民を食べさせて行けなかった事情があったのです。
しかしだからといって他国に侵略していいという理由にはなりません。
当時の強い日本という幻想は、大東亜を同盟に置いて、西欧列強の植民地支配から解放しようと言う構想でしたが、その本心は、日本がアジア諸国を支配し、搾取することだったのです。

こういう日本の野心が英米において懸念され、国際連盟でも問題にされました。
日本の侵略を受けていた中華民国がアメリカに泣きついたことも、アメリカが渡りに船とばかりに間接的に中華民国をして日本に戦争をふっかけたのです。
こうやって国際連盟にのなかで日本は孤立を深めていき、ついには連盟を脱退するのでした。
アメリカは、日本への石油の輸出を止めるという、日本にとって(日本の軍隊にとって)動脈を結紮するような手段に出ます。
自暴自棄になった日本政府は、あえてアメリカに宣戦布告をせずに真珠湾を奇襲し、同時に、マレー沖海戦でイギリスの主力戦艦を航空機で沈めました。
これは明らかに国際法違反であり、今でいえば「同時多発テロ行為」です。

さて、現代に時代を戻して、日本がこの轍を踏むだろうか?
日本はかつてないほどにアメリカにおんぶにだっこ状態です。
まさにアメリカの犬のような懐(なつ)きぶりです。
周辺国との関係は、日中戦争や満州国建国の時代とは全く異なります。
ロシアに対してさえそうです。
あの頃は日ソ不可侵条約で両国間の和平が保たれ、日本の敗色が決定的になった昭和二十年八月に当時のソ連は条約の延長をその年の四月に認めないまま、参戦してきたのですから。

そういった「日本憎し」という状況は太平洋戦争の時期ほど強くないと私は楽観しています。
韓国が日本に対して「反日」を露にしているようですが、戦争に発展することは考えられない。
外交カードとして「反日」を使うだけのことでしょう。
北朝鮮もそうです。
中国に至っては、まったく日本を軍事的に敵だとは思ってもいない。
日本の自衛隊では、中国に対して何ら脅威にならないからでしょう。
※また奇襲でもすれば、一矢報いることはできるかもしれませんが、近代戦ではボタン一つで勝敗が決まることを考えると、前哨戦で日本が不利になる。もはや兵と兵が戦うような戦争にはなりません。

すると、現在の日本の立ち位置で戦争になると言うことはないという結論になります。
敵国がないからです。
一人では戦争はできません。
また憲法上、日本が他国を侵略するということもありえません。
戦いがあるとすれば、他国から侵略を受けることだと、右翼思想家が必ず言いますが、そんなリスクを冒しそうなのは北朝鮮ぐらいでしょう。
そのために防衛省が自衛隊の軍備増強をしているといっても言い過ぎではありません。
それしか防衛省幹部の言説の理由がないからです。

だから、私たちは、戦争を自ら起こすことはけっしてしないし、日本を力で抑え込もうとする外国勢力もないと信じていい。

ここからは、私の想像ですが、日本が「軍事的には侵略されない」と言えても、黴の菌糸のように根を張ってはびこるように、日本人の中に外国人が入り込むことは進むだろうと思います。
混血です。
アメリカ合衆国のように日本も人種のるつぼになるかもしれません。
ただ…
私たちには、一つの垣根があります。
それは「日本語」です。
たしかに、日本語を習得する外国人は増えてきています。
流ちょうに日本語をしゃべる外国人を見ることも増えました。
なぜ彼らが日本語をしゃべるために努力するかというと、日本人が外国語を理解しないからです。
精神的な鎖国が、昔から日本にはあります。
そして、この日本語という特殊な言語は外国人をたくさん挫折させました。
いま私たちが見ている日本語の上手な外国人は、外国人のうちのごく少数なんですよ。
それほど日本語を習得するのは外国人には難しい。
日本人が外国語を「言葉の壁」だと言っているのは、外国人にとっても日本語が「壁」になっている。
ただ、外国人には日本人にはないフロンティア精神があるから、日本語をものにする人も増えているのだと思います。

それでも日本語を話せても、日本人の心を理解する外国人はもっと少ないのです。

そういうわけで、日本文化が外国人にもてはやされて、観光客でごったがえしていた時期はそれでもよかったのでしょうが、新型コロナで世界は様変わりし、日本に来る外国人は極端に減りました。
もう元には戻らないだろうと言う人もいます。
私もそう思います。
そして、日本はガラパゴス化し、いつしか世界から忘れ去られるのでしょう。
日本はふたたび孤立化するのです。
太平洋戦争までは、日本は、その侵略性によって孤立化をまねいたのですが、今度は、世界から閑却されるという孤立化なのです。

日本人が誇りを持とうにも、世界が認めてくれないのだからしようがありません。

今から私たちができることは、ガラパゴス化を防ぐ活動です。
SNSや動画投稿サイトにおいて、コメントを書く人はたくさんいると思いますが、外国人の投稿に対してコメントをしたことがありますか?
おそらく日本人は、ほとんどの人が、日本人の投稿に対してコメントをするばかりでしょう?
もっと世界の投稿者、Youtuberに日本人として英語でコメントをしてみませんか?
簡単な英語でいいのです。
つたなくても、通じますよ。案外。
日本のネット社会が、日本の中で完結してしまっていることが、グローバル化に置いて行かれている原因だと思うんですね。
中高生なら、習いたての英語で十分、世界と渡り合えるはずなんです。
日本人の英語が「言葉の骸骨」にならないように、SNSでもっと使いこなすんです。
ヒアリングよりもライティングとリーディングのほうが、SNSの場合、役に立つから、あまり発音に自信がないなと思っている人ほどやってみる価値はある。
作文に自信がないなら、たとえば、正しい日本語でまず文章を作り、Weblioで英訳させてみてください。
Youtubeでは英語のコメントには和訳が選択できます(かなりひどい和訳が返ってきますが)。
翻訳ソフトを駆使して、いろいろ続けていると、かなり英語力がアップしている自分に気づくはずです。

日本人が、平和的に、今後世界と付き合っていくには、英語で発信していくほかありません。
内向きに、ひたすら耐えている生活では、墓穴を掘るだけの人生になるでしょう。
敗戦から七十五年がたち、私たちは進むべき道を失いかけています。
もはや「強い日本」なんていう幻想にすがる愚行はしたくないし、世界から閑却される日本も情けない。
忘れられないように、自ら、日本人は、世界に語り出さねばならないのです。