短波帯(HF帯)のアマチュアバンド(周波数割り当て)は国際条約で決められていて、私たち、昭和に免許を受けた局は、3.5MHz、7MHz、14MHz(1,2級のみ免許される)、21MHz、28MHzの5バンドでした。
その後、1.9MHz(当時は1,2,3級の電信のみ免許された)と3.8MHzが新たに割り当てられ、私が長らくQRT(閉局)していた間に、さらに10MHz、18MHz、24MHzの3バンドが追加で許可されたようですね。

最初の3.5MHzから始まる短波帯のアマチュアバンドは、高調波の影響を考えて割り当てられたらしいということをこれから説明していきましょう。
高調波とは「倍音」のことです。
無線機(送信機)が電波を作り出す装置ですが、楽器の音波のように、電波も倍音現象をあらわします。
弦楽器を例に説明すると、一張りの弦の「一弦琴」を考えます。
弦は、両端で固定され、基本の音は弦の中央が山(または谷)となる響きです。これを「ユニゾン」と言いますね。
両端は必ず波の「節」になりますので、こういう波を定常波といいます。

基本の音(弦の振動)には2以上の整数倍の「高い」音の成分があるわけですが、一弦琴のようなアナログな楽器では、ユニゾン以外に無数の倍音を含むので、複雑な音色になります。
電子的に一定の波長しか生成しないようにしたデジタルシンセサイザー楽器では平板な正弦波のみの音色となります。
もっとも、現在では波を合成して自然な楽器の音に近づけているはずです。

このことが電波にも当てはまります。
3.5MHzの送信機で「Hello CQ…」などと電波を発放しますと、その倍の7MHzや、4倍の14MHz、6倍の21MHz、8倍の28MHzでも「Hello CQ…」と聞こえてしまうことがあります。
これらを「3.5MHzの高調波」といいます。すると、7MHzで受信している局が3.5MHzの局と知らずに交信しようと応答しても、互いに通じないわけです。
※逆に7MHzの発放を3.5MHzで聞こえるようなことを「低調波」といいます。「高調波」と「寄生振動」も含めて「送信機のスプリアス発射」と呼ばれ、電波障害として電波法上の取り締まり事案となります。

高調波を抑える回路(フィルター回路)で工夫したりできるのですが、昔は自作の送信機で実験的に交信している(それこそアマチュア精神なんですけれど)ので、まずは実際に電波を出してみないとわからないわけです。
そこで、簡単にこういう工夫をしたんですよ。
「Hello CQ CQ CQ 80meter This is JF3*** JF3*** Osaka Japan calling CQ and standing by over」
このように、実際に自分が発放している電波の波長を言うわけです。
そうすれば、受信者が、今、「7MHzに合わせた受信機」からのその音声を聞いたとすると、7MHzは波長が「40meter」ですから、「ああ高調波の変調なんだな」と気づくことができます。
送信機と受信機が別れていた「セパレート」時代の通信では、両局の発放周波数が異なっても受信機で合わせる「たすき掛け」運用で交信することができました。
これがトランシーバ(送受信が一台でできる通信機)になると、一周波数につき一通信ですから「たすき掛け」などできません。
トランシーブ操作で積極的に「たすき掛け」をしたい局は、VFO(バリアブル・フレケンシー・オッシレータ)という外付けの装置をトランシーバに備えておこなっていました。

高調波で通信するということは、じつはあってはならないのです。
これは電波の品位からもお勧めできません。
上に述べた「たすき掛け」は、高調波を利用しているのではなく、ちゃんと異なる周波数同士で通信していることを確認したうえでの通信なのです。
しかしながら、自作時代のアマチュアは、自身の送信機が高調波を漏れさせていることの確認が簡単には出来なかったのですね。
そういうことを測定する装置も高価だったでしょうし、実際にほかの局に聴いてもらってレポートしてもらうほうが容易(たやす)かった。
そのために発放側の局が自身の電波の波長を明らかにすることで、相手に「正しいですよ」とか「高調波が出ていますよ」とか教えてもらいやすかったのです。

今でも、CQのあとに「何メーター」と使用している周波数の波長を言う局長が一定数いるのはその名残だと言われています。
現在では高調波が出るような市販の無線機は「技適」にならない「違法無線機」となるために使用してはならないことになっているから改めて波長をアナウンスする必要はありません。

波長(λ)は「300÷周波数(MHz)」で大体出ますが、21MHzなら「300÷21=14.29m」なんですが慣習的に「15メーター」と呼んでいます。
3.5MHzは80メーター
7MHzは40メーター
14MHzは20メーター
21MHzは15メーター
28MHzは10メーター
と言うようにアマチュア無線家の間では決めています。

ここで、アマチュアバンドの決め方が「倍音」なのは高調波対策にあったと気づくはずです。
高調波が出ていても、アマチュアバンド内であれば、ほかの商業無線や放送、軍事・行政通信の邪魔にならないからです。

これらの「スプリアス発射」は、今後も取り締まりが厳しくなるようで、古い無線機をご使用の局長は、たとえJAIAや技適マークがあったとしても独自にスプリアスのないことを証明してからでないと運用できなくなるようです。しかるべき機関で証明をしてもらうと無線機一台当たり数千円もかかるらしいです。
それが嫌な人は、新しい無線機を購入して無線設備変更の申請をしてください。