あの娘(こ)はどこの娘 こんな夕暮れ
しっかり握りしめた赤い風船を
なぜだかこの手をするりと抜けた
小さな夢がしぼむ どこか遠い空
こんな時 だれかがほら もうじきあの
あの人が 来てくれる
今日もまた 小さな夢持って


(『赤い風船』歌:浅田美代子 歌詞:安井かずみ 曲:筒美京平)


私が小学五年生のときに流行った歌で、遠足、林間学校のバスの中でみんなで歌ったものだ。
ドラマ『時間ですよ』で「みよちゃん」こと浅田美代子がギターを弾きながら歌っていたものだ。
このドラマはかなりロングランで、私が三、四年生のころからやっていて、私たち子供にも人気だった天地真理も出ていた。
そのころの大人たちは、みよちゃんの歌を聞きながら「ヘタやなぁ」と失礼なことを言っていたが、私はそんなことを思いもしなかった。
そりゃあ百恵ちゃんとか、森昌子のほうが「上手い」とは思ったけれど、みよちゃんはみよちゃんで上手だと思ったよ。

この歌詞が小学生の私にしっくり届いたのは、かぎっ子で一人、両親の帰りを待つ夕暮れの情景が私に重なったからだろう。
子ども心に夕暮れはさびしいものだった。
お友達は、みんな帰ってしまい、私だけが取り残される。
正確にはもう一人、同じ境遇の女の子がいたんだけど。いつもその子と、夕飯前の空腹感と戦っていた。
よそのおうちではカレーライスの匂いがしていたし、つらかったなぁ。

それにそろそろ私にも、お友達にも「女の体」になってくる頃でもあった。
私は六年生の終わりの頃まで来なかったが、周りでは「もう来ちゃった」なんていう子もいて、いろいろ焦燥感もあった。
五年生の林間学校を前に、女の子ばかり集めて初潮教育がおこなわれたことも一因だ。

『赤い風船』はそんな遠い思い出に連れて行ってくれる歌だ。

それにしても『時間ですよ』のようなロングランのホームコメディが今ではなくなってしまった。
橋田壽賀子、向田邦子がテレビ界で活躍していたころだ。

若い人向けの恋愛ドラマや医療モノ、サスペンスばかりで、子供からお祖母ちゃんまで一家で楽しめるドラマはなくなった。
三世代家族も都会ではめずらしくなり、家族そろって一つの番組を愉しむ世の中ではなくなったからだろう。
いや、テレビドラマ自体が絶滅危惧種になりかねない状態なのだ。
安く韓流ドラマを輸入して流しておけばそこそこ観てもらえる世の中であり、日本のドラマ市場は様変わりしているのである。
個人で楽しめる「コンテンツ」が増えて選択肢は無限だから、仕方のないことだ。