諜報活動で重要なこれら三つの言葉がある。
アマチュア無線やBCL(海外短波放送聴取)にも通じる言葉で、私が北朝鮮問題に傾倒していたころに詳しい友人から教わった。
まず「シギント(SIGINT)」とは通信傍受のことである。
有線・無線を問わず、密かに通信を傍受して諜報活動に寄与することだと思っていただいていい。
「SIGnals INTelligence」から由来する専門用語だ。
この「傍受」とは、放送などを聴取することは含まれず、あくまで「盗聴する」ことを指している。
スクランブルのかかった、デジタル秘話装置の通信などは公に傍受しても内容がわからないが、これをある種の装置で復元して聴取できるようにするなどすれば、立派にシギント活動となる。
デジタル時代以前には、警察無線などをアマチュア無線機を改造して傍受すること自体がシギントだと考えられていた。
電波法上は通信傍受行為自体は罰せられないけれど、その内容を他人に漏らしたり、利用した場合には罰せられることになっている。
シギントとは個人的な活動ではなく、国家間で諜報員によって隠密裏に行われるものを指すのである。
シギントの内容には暗号解析を含むコミント(COMINT)やレーダー解析(ELINT)、外国信号計測(FISINT)、ソナーによる水中探査(ACINT)が分類される。
太平洋戦争中に、日本軍において、絶対音感保持者や盲人によるACINT活動があったことが記録にある。
アメリカ合衆国の国家安全保障局(NSA)が有する「エシュロン」機構は世界中の通信を傍受しているらしいとEUから指摘されている。

次に「オシント(OSINT)」であるが、これは「Open Source INTelligence」からの造語で、テレビジョンやラジオ放送、インターネット上の公開情報、さらには書籍や学術論文などを収集し解析することを含み、シギントが違法性を帯びることに対して、オシントは合法的な諜報活動と言える。
情報リテラシーにも通じるものがオシントである。
日本の公安調査庁や内閣官房にある内閣情報調査室がオシント機関として有名だが、なんといっても「ラヂオプレス」だろう。
今はフジテレビジョンにその拠点を移しているが、戦前は政府の一機関だった。
日本の北朝鮮情報はラヂオプレスを通じて報道されたり、政府で利用されているようである。
戦前の外務省に情報部調査第三課の事務官、樺山資英(かばやますけひで)がラヂオプレスの前身を作ったと言われる。
樺山氏は当時、数少ないアマチュア無線家だったようだ。
昭和十六年十二月一日、つまり日米開戦直前に外務省に「ラヂオ室」を開設し、樺山氏が室長を務めたことが発端である。
戦後、外務省から独立して法人化され、「ラヂオプレス通信社」となって現在に至っている。
現在の業務は共産圏の短波放送聴取、録音・翻訳であり、主に朝鮮中央テレビや平壌放送が対象となっているようである。

最後に「ヒューミント(HUMINT)」であるが、これはずばり「スパイ活動」のことだ。
人を使って諜報活動や工作を行うことである。
外交官を通じて合法的に、外国人を尋問したり、取り調べたりすることは「リーガル」活動、そうでない非合法なものを「イリーガル」活動と区別する。
スパイ活動は、おおむね「イリーガル」であるが…
なおマタ・ハリに代表される「ハニートラップ」(色仕掛け)もヒューミントの常套手段だ。


私の創作にもこれらが出てくることがあるので、ここで触れておきます。