あたしと、トモユキはオギノ鉄工所に忍び込んだ。
トモユキが言うには、『ろう石』はここにあると言うの。
『アセチレン』とか『酸素』とか書いた札が壁に貼ってある。
溶接の「お面」がころがっている。まるで『鉄仮面』だ。

「なおぼん、この箱とちゃうかな」
回る円盤で激しく火花を飛ばしながら鉄を切る機械のそばの、みかん箱ほどのサビだらけの金属の箱に、くず鉄みたいなものがいっぱい入っていた。
「あ、あった」
あたしは、小指ほどの白い破片を見つけた。
間違いなく『ろう石』だった。
「そんなちびこいのんより、もっとおっきなの探そ」
トモユキは、まるで気にしていない様子で箱を漁(あさ)っている。
父に聞いたところ、『ろう石』は、鉄工の職人が「けがき」作業に使う白墨のような筆記具として使われる鉱石ということだった。
あたしたちは、もっぱら落書き用に集めていた。

「こらぁ!」
あたしは、飛び上がった。
鉄工所のおっちゃんの声が頭の上からした。
二階の窓が開いて、あたしたちをねめつけている。
「やばっ。なおぼん逃げるで」
「うん」
どこをどう走って逃げたかわからんくらい、走った。
天理教の教会の建物の敷地に駆け込んだ。
「ふう。ここまで来たら安心や」
トモユキがあごから汗をしたたらせて言う。
蝉の声がうるさいくらいにワンワン響いている、鬱蒼とした林だった。
天理教の建物はシーンとしていて、ゆがんだ瓦が馬の背のようになっている。
「ほら、あたし取ってきたよ」
「おれはこんだけ」
二人は戦利品を見せ合った。
なおぼん、小学四年生の夏だった。

クラスメイトのトモユキとは、懲りずに何度か鉄工所に忍び込んで『ろう石』を失敬しに行った。
ある日、あたしは一人でそこに入ったの。
シャッターが開いていて、その奥のボンベがならんでいる場所に棚があって、そこを物色してたわ。
「おまえ、どこの子や?」
あたしは「しまった」と思った。
オギノ鉄工の息子に見つかってしまった。たしか、高校を出てから父親の見習いをしてるとか聞いていた。
「ご、ごめんなさい・・・」
「ろう石がほしいんか」
息子は、あたしが女だというので、声を荒らげずに話しかけてきた。
「うん」
「しゃあないなぁ。でも勝手に入ったら泥棒やで」
少し、怖い顔であたしに言った。
「こっちこい」
「え?」
あたしは、オギノの息子に手を引かれ、便所の隣の机があるところに連れて行かれた。
「さあ、どうしようかな。親に言うたろか」ニヤリと笑ってオギノの息子が言う。
「いや、やめて」
「ほなら、許したるから、ちょっと手を貸してえな」
「何したらええのん」
それには答えずに、息子はズボンを下ろして、おちんちんを出した。
あたしはびっくりして、声も出なかった。
この前ヤノさんに同じようなことをさせられたことを思い出した。
ヤノさんのより、細いけど、長いおちんちんだった。
「これ、さわってや」
あたしは、おずおずと手を伸ばして、熱い肉の棒を握った。
「そうや。そうやってこすってくれるか」
息子さんは椅子に腰掛けると、あたしに硬くなったおちんちんをしごかせた。
にちゅ、にちゃ、にちょ・・・
おちんちんの先から液体がしみでて、あたしの手もぬるぬると汚れていく。
「ああ、もっと早く」
あたしは、許してもらえるならと、懸命にしごいた。
あのとき、ヤノさんは最後に、白い液体を出したのだった。
そうすれば、男の人はおとなしくなるのだと知った。

あたしは、やや力を込めて握り、上下させた。
「おっ、ええね」
そう言って、あたしの頭をなでられ、まだ膨らんでいない胸を服の上から撫でられた。
息子さんはあたしの頭に顔を近づけ、髪の匂いをクンクンと嗅いでいる。
「いく、いくでっ」
そう言うや、びくびくびくっ・・・と震えて、白いアレが錆の積もった床にボタボタと落ちた。
あたしの手の甲にも温かく糊のように粘いものが流れた。
汚い手ぬぐいが机の上にあったので、それで息子さんは後始末をし、あたしに便所で手を洗ってこいと命じた。
息子さんは別れ際に、まっさらのろう石を五本くれて、
「また来いや」
と言って、あたしを解放してくれた。

家に帰って、あたしは手に残った匂いを嗅いでいた。
抽斗には貰ったろう石があった。