科学趣味のインテリアに、ステキな演出をしてくれるのが「ストームグラス(天気管)」です。
これを買うとなると、四、五千円はすると思うので(ニトリとかでもっと安いのがあるらしい)、そんなら自分で作ってしまおうというのが、当實驗室の考えです。
原理がわかれば、やってやれぬことはない。

ストームグラスとういうのはガラスの密閉容器に透明な液体が満たされていて、外のお天気(気温)が作用して、その透明な液体が曇り始めるのです。
単に曇るのなら、あまり美しくないけれど、ストームグラスは細かい結晶が容器内に発生して雪が積もるように美しいのですよ。
密閉系で作ると結晶化は気温の影響だけを受けるのでしょうが、開放(通気管付き)系で作ると、大気圧や湿度にも影響されて、より一層、天気の状態がわかるのでしょう。

物質の溶解度は温度依存性であることから、溶けた溶質は、飽和濃度に達すると過飽和分が結晶となって析出するのでした。
ストームグラスの「溶液」として報告されている例が、次のようなものです。
・硝酸カリウム…3g
・塩化アンモニウム…3g
・樟脳(カンファー)…14g
・水…30g+10g
・エチルアルコール(無水)…40g
計 100g

水は先に30gを配合に使い、残り10gは室温に溶液をさました時に足す。
硝酸カリウムと塩化アンモニウムをアルコールランプで加熱しながら水に溶かす。
樟脳はエチルアルコールに溶かす(常温)。
できた水溶液とエチルアルコール溶液を混合する。
調整用の10gの水を添加する。
よく混ぜて、適当な密閉できるガラス容器に入れて封じる。
この状態で、数日間放置すると結晶がもやもやと現れ、嵐が近づくと葉脈のような結晶が大きく育つそうだ。晴れるときには上澄みが澄むらしい。

さて、作るとなると、そう簡単にはそろわない原料があります(無水エタノールやカンファーはAmazonで入手可能です)。
問題は、硝酸カリウムです。
試薬としては普通で学校の理科室には必ずある薬品ですが、個人でネットで買うことはできないみたいです。硝酸カリウムは肥料としても使われているのですが、火薬にも使われるのでむやみに売らないのでしょうか?
※硝酸カリウム自体は燃えませんが、酸化剤として硫黄と木炭にこれを混ぜると黒色火薬になります。天然には硝石(しょうせき)として産します。

いっぽうで、塩化アンモニウムは食品添加物として入手可能です。Amazonでも売っています。
ストームグラスにおいて硝酸カリウムと塩化アンモニウムは結晶の作りやすさとして選ばれたようです。
つまりストームグラスの中では硝酸カリウム、塩化アンモニウム、カンファーの混晶ができ、それぞれの違いが、気象によって現れるのを観察するのです。

そうすると「溶解度曲線」で溶質類の性質を比較し、硝酸カリウムの代替品を探してみましょう。
KNO3ーNaCl溶解度
ミョウバン類溶解度
こういう溶解度曲線が実験書や中学理科の教科書などから拾えます。
都合よく硝酸カリウムの溶解度曲線がありました。このように、温度が上がると急激に溶解度が上昇する物質が結晶を作りやすいのです。
塩化ナトリウムなどは、温度を上げてもあまり溶解度が増えませんので、冷やしても大きな結晶が出にくいですし、温度の低い条件でも溶解度の高いものも吸湿性が高いばかりで、結晶化させるにはたくさん溶かさないと結晶ができませんから不向きです。
すると、候補としては硫酸アルミニウム・カリウム(カリみょうばん)が上のグラフから最適なように思います。
カリみょうばん(焼きみょうばん、無水物)なら、Amazonでも普通に手に入ります。

手に入りやすい無機塩に炭酸ナトリウム、重曹、セスキ炭酸ナトリウムがありますが、溶解度が低いので良くないと思います。
また炭酸カリウムや硝酸アンモニウムも入手可能ですけれど、今度は低温での溶解度が良すぎて、結晶化させるにはかなり溶かさないといけないので、不向きです。

というわけで、硝酸カリウムの代わりに「カリみょうばん」を使ってみましょう。

明日、やりますので乞うご期待!