ケータイが鳴った。
千代子からだった。電話にでると、ひと通り世間話も尽きた頃、彼女は「本題」を切り出した。
「セックスがつらいんです・・・」
町内の碁会所で知り合った千代子は、あたしにそう訴えてきた。
五十になったばかりの岸千代子は、ご主人が一回りも若い。
だから、毎夜、夫の求めに応じるのがつらいというのだ。
「どうつらいの?濡れないから痛いのかしら」
「濡れるんです。一応」
「じゃあ、いいじゃない」
「でも主人は、あたしのお尻を使いたがったり、変なオモチャを使ったりするんです」
「はあ・・」
よくある、性の不一致だな・・・
しかし、なんでまたこんな旦那といっしょになったんだろう?
「千代子さん、あなたとご主人のなれそめは、一体、どんな具合だったのかしら」
「じつは、再婚なんです」
「あら、そうなの」
「あたし、最初は今の主人の兄と結婚してました。ところが、転落事故で亡くなって・・・あ、最初の夫は大工だったのよ。弟があたしのことをひそかに好きだったとかで、あたしも、悪い気はしなかったし、よく知ってる人だから、あちらのご両親も乗り気でね、トントン拍子に再婚という形になりました」
「お話はだいたいわかりました。でもあなたが拒否し続けると、ご主人も浮気したりするかもね」
「べつに構いませんわ。もう、一緒にいるのも嫌なんです」
「ありゃま・・・冷えきってるのね。お子さんは?」
「いません」
「じゃあ、お別れなさいな。そのほうがいいわ」
「ですかね。でも理由が見当たりませんわ」
「そうね、ご主人、まだ浮気もしてないもんね。そうだ、こうしましょう。あたしが千代子さんの旦那を誘惑しますから、それをネタに別れ話を持ちかけるってのはどう?」
「いいんですか?後藤さん」
「いいのよ。そういうのあたし好きだから」

千代子の現在の夫も大工だったが、兄より怠け者で、仕事はあまりできないようだった。
近々、大工を辞めて産業廃棄物の仕事に鞍替えするようなことを千代子に話しているようだった。
あたしは、彼が出入りするスナックやパチンコ店を千代子から聞き出し、網を張った。
いとも簡単に、「1円」スロットの場所で彼を見つけた。
あたしは彼の隣に席をとって、おもむろにスロットをやりだした。
「ああん、うまくいかないわね」
聞こえるように独り言をいう。
衣装や化粧はわりとケバい感じで、たばこをくわえながら苛ついた感じで髪を掻きあげてみた。
男はちらちらとあたしを見ていたわ。
男の方はコインがけっこう貯まっていて景気が良さそうだった。
「姐さん、はじめて?この店」
「え?そ、そうだけど」
「俺が出るマシンをおしえてやるよ」
「あら、ありがと。お兄さん、ここよく知ってるの」
「ま、ね。店長とも仲がいいんだ」
彼は岸明夫(きしあきお)と言った。
もちろん、千代子からもあらかじめ名を聞いていた。
スロットでそこそこ儲けさせてもらったんで、喫茶店にお誘いしてお茶をごちそうさせてもらった。
「姐さん、スロット好きなのかい?」
「暇つぶしよ。ひまつぶし」
「俺も同じだけどね。結婚してるの?」
「してるわよ。といっても家庭内離婚状態だけど」
あたしはタバコに火を点けて、煙たそうに目を細めながら言った。
「俺もさ、ヨメが年上で、なにかと小うるさいんだよなぁ」
千代子のことだ。
「姉(あね)さんニョウボってやつ?あんたマザコン?」
「そ、そんなことないよ」
あたしは笑って、ふーっと煙を吹きかけてやった。
「遊ばない?ちょっとくらいいいじゃない。あんたいい男だし」
「えへっ?俺と?まいったなぁ」
まんざらでもない顔である。

もともと女好きだと言うから、すぐにホテルにタクシーを横づけて、彼としけこんだのよ。
軽いもんだわ。
部屋に入ったらいきなり抱きつかれた。
「うわっ。ちょっと」
「姐さん、おれのヨメとどっこいだよな」
「歳のことを聞いてるの?あんたの奥さんって、いくつなのよ」
首筋を舐められながら、あたしが訊く。
「五十だけど」
「あら、奇遇ね、同い年・・ああん、そこは・・」
もうはや、彼の手がパンティの中に侵入してきた。
その指を抜いて匂いを嗅ぐのよ。ホント好きモノみたい。
「熟女の香りだ。ああ」
とか何とか言っている。ばかじゃないの?
硬いものが腰のあたりをつつく。
もう、ぱんぱんになって、ズボンが盛り上がっていた。
これって、かなり、大きいんじゃない?
これじゃあ、千代子さんも大変だわ。
いくら濡れても、大きすぎて痛いことは、よくあること。
あたしも、コイツを放り込まれたら、痛かろうなと思う。
女が大きいのが好きだと思っている輩が多いけど、そんなことはない。
できれば小さいほうがいいに決まってる。
バスルームでそれははっきりした。
太さがあたしの腕くらいあった。
長さはさほどでもないんだけど、とにかく太い。
「それ、すごいね」
「あ、俺の?でかいだろ。ヨメも嫌がってさ」
「そんなの入らないよ。壊れちゃうよ」
あたしが言った。
「だめかな」
「ダメだと・・思う」
「じゃあ手でやってくれよ」
「しかたないわね。もっと大柄な外人さん相手にするほかないわね」
あたしは手を伸ばして、しごいてみた。
明らかに人間のものとは思えなかった。
馬かなにかのモノをさすっているような錯覚がした。
「姐さんの、触っていいかい」
「どうぞ」
あたしは股を開いて立った。
前から、彼は指を這わせてきた。
ボディシャンプーを塗っていたので、すごく滑る。
「あはあ・・・いや」
「ここ、クリトリスかい?」
「わかるでしょ。そんな・・・あっ」
一発で、敏感な部分をしとめてきた。
「すっげぇ、濡れてるぜ」
「言わないで」
「入れてみようぜ。入るよきっと」
「こわい・・・」
「壁に手をつきな。後ろからやさしく入れてやっから」
有無を言わせぬ口調で、明夫はあたしに命じた。
ぐっと、押し拡がる圧力を感じた。
それ以上は、無理な感じだった。
「狭いな。姐ちゃんのここ」
「だめよ。やっぱり」
「いや、いけるかも」
ぐにゅり・・・
「ほおら、入った」
それでもまだ、奥を裂こうと、侵入してくる。
「きっつ」
「ずっぽりだぜ」
「ああ、痛いっ。もうだめ」
「痛いか?ごめんよ」
あたしは、出産経験がないし、旦那のペニスも普通だからこんな苦痛を味わったことがなかった。
千代子もさぞかし苦しんだことだろう。
だがしかし、遠慮無く明夫はピストンを加えてきた。
いくぶん、あたしも緩んできたのか最初ほど苦痛ではなくなってきた。
却って、気持ちいい充実感があった。
「姐さん、いい具合になってきたぜ。気持ちいいだろ」
「え、ええ」
あたしは、経験したことのない圧力を感じていた。
内臓が引き出されるような、抜き差し・・・
「ああ、きつくって、いい感じだ。姐さん」
「いい、すごく。すごく奥まで来てるっ」
激しい突きに、足が支えを失って倒れそうになった。
「おっと危ねえ。ここじゃなんだから、ベッドへ行こうか」
抜かれた後から、処女のように一筋の血があたしの腿を伝った。

濡れた体をタオルで拭いて、二人はまっさらのベッドに倒れ込んだ。
激しく口を吸い会う濃厚なキッス・・・
明夫の長い舌があたしの口をこね回す。
みるみるうちに唾で顔中が濡らされてしまった。
あたしは、あまりこういうサービスは好まないのだけれど、男がするもんだから、あきらめて身を任せていた。
「ゴムなしでいいよな」
「いいよ。もう上がっちゃってるから」
「だろうな。五十だもんな」
「言わないでよ。五十、五十って」
「ははは。すまない」
さっき広げられた洞窟は、かるがると、明夫を呑み込めるようになっていた。
軽い痛みが走ったものの、飛び上がるほどのものではなかった。
正常位でつながりながら、明夫の表情を窺う。
三十代後半の若々しさがあふれていた。
短めの髪は軍人のようで、胸板も厚く、小柄なくせにたくましかった。
目は、幼さを残していて、好奇心が満ち溢れている感じだった。
あたらしい「あたし」という玩具に夢中になる子供のようだった。
ズッコ、ズッコと太く硬い陰茎が出入りしているのだろう、あたしの胎内が突き破られそうに押されている。
お乳がまさぐられ、寄せられて吸われた。
はむ・・・ぺろぺろ・・・
乳首が甘噛みされ、下の上で転がされた。
「ああん、上手よ。あなた、そうとう遊んでるわね」
「そんなことねぇよ。男ならふつうだよ、こんなこと」
「そうなの。あたし、はじめてよ。こんな気持よくされたの」
「旦那はしてくれねぇのかよ」
「できないの・・・もう」
「不能なのか?」
口を離して、明夫があたしを見る。
「障害者になっちゃったのよ」
「へえ、そりゃ、お気の毒だ。おれが代わりにかわいがってやるよ」
どうぞ、おかまいなく・・・あたしは心のなかで言った。
この男に、ことさら愛情が湧いているわけでもない。
行きずりみたいなものだ。
千代子に対する人助けにすぎないのだ。
上にならされ、騎乗位で下から突き上げられた。
下から、舐めるように見据えられ、あたしが恥ずかしくなった。
ぱっくり割られた陰裂は、もう形が崩れてしまったのではないかと危惧されるほど、明夫の男根によって変形させられていた。
松葉くずしで、割り込まれ、男が呻き、射精が近いことを訴えた。
「いいよ。中に。中にちょうだい」
あたしは思わずねだっていた。
「ああ、ああああ」
ぎゅうっと、足が引っ張られ、彼の腰が打ち込まれ、奥で弾けた。
意識が飛ぶ・・・真っ白な場所に放り出されたあたし。
ばしゅっ・・・
おびただしい射出があたしの中を満たした。
「あはあ、逝ったぜ。たっぷり出してやったで」
「うん、もう」
あたしも満足で、体を横たえた。
もうどうにでもしてくれ状態だった。
抜かれる瞬間に、また逝きそうだった。
バスルームで始末したが、拭っても、拭っても、明夫の精液が止めどなく流れ出てきた。
生理が上がっていても妊娠させられるんじゃないかと思うほどだった。

バスから出て、冷たい飲み物などを飲みながら、
「よかった?」
「ああ、姐さん、これからも会ってくれるかい」
「いいのかな?奥さんいるのに」
「いいって。バレやしないよ。おれウマイんだそういうの」
バカなやつだった。はめられているのも知らずに・・・
明夫がトイレに立ったときに、あたしはすばやく自分のケータイを取って、予め用意しておいた文面を千代子にワンキーで送信した。
「四時半くらいに、ホテル『ランバダ』の前に二人で出てくるから、そこをデジカメで撮ってね」

離婚調停で、明夫に不利な証拠が突き出されて、裁判官の心証をいたく損なった明夫は、千代子と別れることを余儀なくされた。
千代子は後腐れないようにと、慰謝料も請求しなかったそうだ。
明夫からあたしにメールが度々届いたが、もみ消した。
あんなバカチン、もう御免だったから。