あたしがバスルームから出ると、雅人はビデオカメラを三脚に取り付けて待っていた。
「あら、なぁにそれ」
「おれたちのやってるところを撮ろうと思ってさ」
「顔、写っちゃうの?」
「なるべく写さないようにするからさ」
「しょうのない人」
あたしは、べつに構やしないけど。
濃厚なキスシーンから、クンニリングス、シックスナイン・・・
およそ、考えられる痴態はすべてカメラに収められた。
「ハメ撮り」と言って、自分がカメラを持ちながら、自身の挿入を写すことも、雅人は怠りなかった。
フェラと正常位、騎乗位ではあたしの顔が丸写りになってしまっていたが、個人で楽しむから安心してくれと言われて、あたしもそれ以上「やめて」とは言えなかった。
そして中出し後の、精液があたしから流れ出してくる場面をアップで撮りたがった。
まるでアダルトビデオではないか。
あたしも撮られていると、とても興奮したのは事実だった。
AV女優になった気分とでもいうことだろうか?
どこかにそんな願望があったのかもしれない。
「えっちゃん」
「え?」
「あんたの息子って、エイジって言わない?」
あたしは凍りついた…
「う、ううん。知らないそんな人」
「そっかぁ、人違いか。いや、こないだね、ライブで一緒になった十九くらいのやつがオオノエイジってやつでさ、いろいろ話たんだけど、そんときに、えっちゃんのことを思い出してね、もしやと思って」
「そんな子、たくさんいるんでしょ。うちの子はエ、英介って言うのよ」
とっさに夫の名前を口にした。
「なんだ、エイまで合ってんじゃん。おしいね」
そういいながら、カメラのモニターをニヤニヤ覗いている。
これまで、あたしは苗字を雅人に名乗っていなかったことに安堵していた。
「あの、あたしそろそろ…」
「あ、次の予定があるんだよね。これ、お金」
そう言って、銀行の封筒を差し出した。
中を確かめ、礼を言って、あたしは雅人の部屋を出た。
柏木の車の中でもあたしは不安だった。
雅人は、まったく感づいていないのだろうか?
いや、あの顔はあたしを疑っている。
いろんな考えが頭の中を渦巻いていた。
あんなビデオを撮られて、ゆすられたらどうしよう…
柏木に相談しようか?
暴力団がバックにいることは知っているので、なんとかしてもらえないだろうか?
いやいや、藪へびになるんじゃないか?
「家庭崩壊」という言葉が脳裏に焼き印のようにこびりついた。
「大野さん、ついたよ。次のお客んとこ。このアパートの一階の端の部屋。中村さんだそうだ」
「はい…」
あたしは気のない返事をして、車を降りた。
「あら、なぁにそれ」
「おれたちのやってるところを撮ろうと思ってさ」
「顔、写っちゃうの?」
「なるべく写さないようにするからさ」
「しょうのない人」
あたしは、べつに構やしないけど。
濃厚なキスシーンから、クンニリングス、シックスナイン・・・
およそ、考えられる痴態はすべてカメラに収められた。
「ハメ撮り」と言って、自分がカメラを持ちながら、自身の挿入を写すことも、雅人は怠りなかった。
フェラと正常位、騎乗位ではあたしの顔が丸写りになってしまっていたが、個人で楽しむから安心してくれと言われて、あたしもそれ以上「やめて」とは言えなかった。
そして中出し後の、精液があたしから流れ出してくる場面をアップで撮りたがった。
まるでアダルトビデオではないか。
あたしも撮られていると、とても興奮したのは事実だった。
AV女優になった気分とでもいうことだろうか?
どこかにそんな願望があったのかもしれない。
「えっちゃん」
「え?」
「あんたの息子って、エイジって言わない?」
あたしは凍りついた…
「う、ううん。知らないそんな人」
「そっかぁ、人違いか。いや、こないだね、ライブで一緒になった十九くらいのやつがオオノエイジってやつでさ、いろいろ話たんだけど、そんときに、えっちゃんのことを思い出してね、もしやと思って」
「そんな子、たくさんいるんでしょ。うちの子はエ、英介って言うのよ」
とっさに夫の名前を口にした。
「なんだ、エイまで合ってんじゃん。おしいね」
そういいながら、カメラのモニターをニヤニヤ覗いている。
これまで、あたしは苗字を雅人に名乗っていなかったことに安堵していた。
「あの、あたしそろそろ…」
「あ、次の予定があるんだよね。これ、お金」
そう言って、銀行の封筒を差し出した。
中を確かめ、礼を言って、あたしは雅人の部屋を出た。
柏木の車の中でもあたしは不安だった。
雅人は、まったく感づいていないのだろうか?
いや、あの顔はあたしを疑っている。
いろんな考えが頭の中を渦巻いていた。
あんなビデオを撮られて、ゆすられたらどうしよう…
柏木に相談しようか?
暴力団がバックにいることは知っているので、なんとかしてもらえないだろうか?
いやいや、藪へびになるんじゃないか?
「家庭崩壊」という言葉が脳裏に焼き印のようにこびりついた。
「大野さん、ついたよ。次のお客んとこ。このアパートの一階の端の部屋。中村さんだそうだ」
「はい…」
あたしは気のない返事をして、車を降りた。