中国は武漢(ぶかん、ウーハン)発の新型コロナウィルスによる肺炎が蔓延している。
武漢市は交通のハブ都市だから、すぐに中国全土に病気が広まってしまった。
SARS(重症急性呼吸器症候群:サーズ)での経験があったにせよ、やはり中国共産党本部の対応が後手になってしまった感が拭(ぬぐ)えない。

日本でもここ数日で罹患(りかん)者を出している。
最初の感染は武漢出身者とか武漢に渡航歴のある中国人だけだったが、武漢からの旅行者をバスで運んだ運転手(日本人)とツアーガイド(外国籍)に二次感染、つまり人から人への感染が起こってしまった。

昨年暮れからこっち、世界各国に罹患した中国人が散らばってしまったため、世界中で発症例が見られている。
SARSに比べて致死率が低いので、WHOの対応も厳しくなかったが、はたしてそれでよかったのか?
中国政府は火消しに躍起だけれど、なにより中国内部での荒唐無稽なデマゴーグへの対処と、マスクの不足、強権的な隔離政策に追われて、なに一つ効果を出せていない。
各地の自警団による武漢出身者への不当な差別や、暴力行為まで巻き起こってしまい、パニックになってしまった。
昨年まで、香港でのデモに対し「マスクを着用するな」と中国共産党と香港政府が取り締まっていたことが、むなしく映る。

ところで、オーストラリアではインド洋の孤島、クリスマス島に罹患者をひとまず隔離するという荒業(あらわざ)を提案するし、アメリカでも武漢からの帰国者には強制的に三日間の入院とその後の二週間は軟禁というありさまである。
一方で、日本はというと、チャーター機を出して、武漢からの邦人帰国を促したが、二人の帰国者が検査拒否したところ、彼らを自宅に戻してしまうという甘さを露呈した。
このウィルスはSARSと異なり、潜伏期間でも感染力があるというのにである。
我が国の法整備が整わず、強制力を検疫官が持たなかったからだと厚労省が言い訳していた。
こんなことだから、カルロス・ゴーンに出し抜かれるのである。

日本は、なんにせよ、人権重視で甘いのである。
以前から、私が「人権で国が亡ぶ」と言っているのがわかるだろう?
人権が大事なのは、香港でのデモのありさまを見るにつけ理解できるが、国家が人権擁護に傾斜しすぎるとバランスを欠く。
個人情報を守るためと称して他人の人権を振りかざして、政府は不都合な証拠を隠滅するし、家庭に土足で官憲が入ることを恐れて虐待の現場に踏み込めずに、幼い命を救えずにいるではないか?
そういう人権擁護は、私は「濫用」であると思う。
個人情報をみだりに垂れ流すのは取り締まるべきなのは
※戦中の特高警察は土足で家庭に乗り込んだものだが、私はそれの再来を期しているのではない。

国がある程度、強制力を持たねば、無自覚な国民に舐められ、その末に国は傾くのである。
確かに、かつて国が権力を持ちすぎて戦争に走ってしまった。
その轍を踏まないためにも、法律による正しい国家運営をして、強制するところは強制してほしい。
国民も、自由と勝手をはき違えないことだ。

ルソーの『社会契約論』を読めば、国民たる自分の、命と財産を守るために法律があり、国家が権利行使を代行してくれる「国民との信託」があってしかるべきだということが分かるはずだ。

ただ、今の安倍政権の横暴、私欲の政治には望むべくもないが…
ポスト安倍がまったく見えない今、東京五輪以後の日本の姿も霧の向こうにかすんでいる。