ヒヤシンス(Hyacinthus orientalis)の水栽培は、小学校の教室に必ずあった。
担任の先生が「育ててみましょう」と、クラスに係を決めてその世話を仰せつかったものだ。
老境にある私が、あの頃を思い出して、取り組んでみた。
どんな花が咲くか、咲かないのか、どうせ家にいるんだから張り合いもできるだろう。

ヒヤシンス シティオブハーレムヒヤシンス球根

京都の種物屋「タキイ」の通販で球根を買ってみた。
幸せを呼ぶ「黄色」にしてみた。
とにかく球根を手に入れないと話にならない。

それから、やっぱり「ヒヤシンスポット」だろう。
ヒヤシンスポット
教室の窓辺にあったのは、たしかこんな形のガラス容器だったはずだ。
嬉しいことにAmazonでちゃんと売っていた。
思い出に浸りたいので、なるべく当時の雰囲気をかもしだすものであってほしい。
もちろんペットボトルで簡易なものを作ることもできるけれど、今回の私の目的ではない。

ネットで調べてみると、思ったほど簡単ではないようだ。
担任の先生は、そういうことを知っていたのだろう。私が聞き逃していたのかもしれない。

まず球根は「休眠打破(きゅうみんだは)」を経験させねばならないらしい。
これは多くの春に花を咲かせる植物に共通の「儀式」であり、サクラなどもこれを経ないと花をつけないらしい。
つまり、新芽や球根を一定期間寒さに当てることである。
外で育つ植物は、晩秋から初冬の低い気温にさらされることで休眠打破を自然に経験するものである。
しかしながら、室内で水栽培するときには、積極的に寒さに球根を当てなければ花をつけないかもしれないのである。
簡単には、球根をアルミホイルに包むなどして遮光し、雨の当たらない日陰の表に一か月くらい出しておくのだそうだ。
ものの本には、12週間などと書かれているから、ヒヤシンスの球根が出回るころに買って三か月ほどそとに遮光して放っておくとよいのだろう。
冷蔵庫に保管する方法もあるが、ヒヤシンスの球根には毒性の物質(シュウ酸カルシウム)が含まれているので食品との接触は避けたい。また球根を素手で触るのはかぶれを起こすことがあるそうだから気をつけよう。
ネコなどがヒヤシンスを誤食すると死亡することもあるので注意である。

保存するなら冷蔵庫の野菜室あたりが暗くて好適だと思われる。
それからもう一つ冷蔵庫保管で気をつけないといけないのは、果物から出るエチレンガスだ。
エチレンは植物ホルモンの一種であり、果実が熟するのはこのガスのせいである。
エチレンガスは成長を阻害して、成熟を促すという性質があり、もやし製造では、「太もやし」を栽培する際にはエチレンを使うそうだ。
そうするともやしは縦に伸びずに横に太るらしい。
エチレンガスにさらされたヒヤシンスの球根は発根を阻害させられ、場合によっては腐敗してしまうかもしれないのである。
※この太もやし栽培は偶然に北海道の生産者が発見した。あの地方では冬季にはもやし栽培のために石油暖房を使うそうで、その排ガスにエチレンが含まれ、暖房を使わない季節のもやしより太くなってしまう現象を見つけたのである。

休眠打破だけでも手のかかることで、球根を買ってすぐに始められるものではないらしいことがわかった。

とりあえず球根は、外に放り出しておこう。年末には水栽培を始めてみたい。
また経過をご報告したいと思う。