メイフラワーとは「五月の花」のことだけれど、私は、それは「バラ」だと聞いたことがあった。
確かに、五月の日本の「バラ園」は盛況である。
今年は入梅が早かったけれど、例年なら、五月は新緑の季節であり、その中で咲き誇るのは、何といってもバラに勝るものはない。

ところが、欧米で「メイフラワー」といえば「サンザシ」だと物の本には書いてある。
サンザシ(山査子)もバラ科の植物で、花は一重でリンゴやナシの花に似る。
そして赤い実をつけ、その実は食べられ、たいていはドライフルーツにして菓子に利用されるそうだ。

イギリスでは「五月祭」を祝う時、「メイポール」というサンザシの花で飾ったタワーをたててその周りで踊るらしい(メーデーの起源、メイポールダンス)。
一説に、サンザシの花の強い香りが、邪気を払うからだという。

だからメイフラワーがバラであっても何ら不思議ではないのである。


rose1
rose2
rose3
私が活けたバラを撮ってみた。
可憐でもあり、豪奢でもある。
花の女王と言っても言い過ぎではないと思う。
古来、バラに魅せられた人は数知れず、今でも品種改良にいそしむ栽培家は多い。
そして、公園や植物園で「バラ園(Rose garden)」のないところはないだろう。

もう一つ、この頃にけなげに咲く「ベニバナ(紅花)」がある。

ベニバナ1
ベニバナ2
アザミに似た黄色から朱色の花を咲かせる、キク科の栽培植物である。
このように切り花としての利用もされるが、染料の紅や油を採取するために栽培される。
つぼみや葉の縁(ふち)に小さなとげを持ち、触れると痛い。
染料を得るには花を摘む必要があるが、かつては東北の農家の少女たちの仕事だった。
ベニバナの紅色は、その少女たちがとげで流した血の色だと言い伝えられてきた。
『源氏物語』に出てくる、器量の悪い女「末摘花(すえつむはな)」とは「ベニバナ」を指す。

ベニバナも私の好きな花であるから、花屋で見かけると買って活けるのだった。

まゆはきを俤(おもかげ)にして紅粉(べに)の花 (芭蕉)
『おくのほそ道』の尾花沢で詠まれた句。「まゆはき」とは「眉刷毛」のことで女性の化粧に用いる道具のこと。

竹里館での、引きこもり暮らしも、なかなか良いものだ。
世間ではどうなっているのだろう?私の耳にはもう届かない。